お互い「SLAM DUNK」「ファイナルファンタジー」が好き

──ここからは今回の作品でコラボしている作詞家のzoppさんにも参加していただこうと思います。koma'nさんから依頼があったときはどう思いました？

zopp　僕は邦楽の歌詞を書くことが多いけど、普段は洋楽ばっかり聴いている人間なんですよ。だから基本的にお仕事のお話をいただくと、マネージャーに「その人、誰？」って聞くところから始まるんです。koma'nくんの場合も同じような感じだったけど、すごく面白そうな人だなって思った。やったことがない分野の人とお仕事をすることは新鮮なんで、「じゃあやりましょう！」っていう感じでしたね。

koma'n　最初にお会いしたのが2年くらい前ですよね。そこでそれぞれが好きなものを話して共通点を見つけていって。合コンみたいに（笑）。

zopp　お互い「SLAM DUNK」とか「ファイナルファンタジー」が好きだったんだよね。

koma'n　あと伊坂幸太郎さんとか。そんな話の中で、「SLAM DUNK」の中の誰かのキャラクターソングみたいなイメージで曲を作ったら面白いかもっていう案が出てきたんですよ。で、「『SLAM DUNK』と言えばビーイング系の歌手が主題歌を歌ってたよね？」みたいな話をして。

zopp　「ビーイングと言えば織田哲郎さん、織田哲郎さんと言えばポカリスエットだね」みたいな。

──90年代連想ゲームのような（笑）。

koma'n　で、最終的には「僕が今、ポカリスエットのCMソングをやるなら」っていうイメージで「潮騒エレジー」が生まれたんです。だからビーイングっぽい雰囲気がプンプンする曲になったんですけど（笑）。

zopp　僕が書いた詞もね、実は出だしの一節が「ポッカリと」になっているんです。要はポカリスエットのイメージなんですよ（笑）。

初めて詞先で書いた「サクラノ下」

──なるほど。で、「潮騒エレジー」が生まれた手応えから、ほかの曲も作ってみようという流れになったんですか？ 本作にはzoppさん作詞の曲がほかにも2曲ありますよね。

koma'n　そうですね。当初は4曲にして春夏秋冬をテーマにしようかっていう話もあったんですけど、結果的には春、夏、冬の3曲になりました。

zopp　「潮騒エレジー」は2人で相談しながら作っていったんで、1番が詞先、2番が曲先みたいな感じでできあがったんです。

koma'n　それでほかの2曲、春の曲である「サクラノ下」は詞先、冬の曲である「ヒトクリ」は曲先で作りました。

zopp　僕は今まで200曲くらい詞を書いてきてますけど、詞先で作ることってまったくなかったんですよ。だからkoma'nくんとやり取りしながら書き進めたり、詞を先に書いたりできたことはすごく新鮮で楽しかったですね。「どんな曲が上がってくるのかなあ」って待つ楽しさを味わったのも初めてです。

──「サクラノ下」は切ない別れが描かれている曲ですね。

zopp　テーマは別れですけど、対象が誰かっていうことは聴いた人が十人十色に想像できるような書き方を意識しました。

koma'n　僕は自分で作詞するときに、けっこう明確に答えを出しちゃうタイプなんで、こういう書き方もあるんだなってすごく勉強になりましたね。歌詞に出てくる「サクラ」というワードが聴いていると名前のようにも感じられてくるし、読めば読むほど深い歌詞だなって。切ない世界観だけど少し前向きな部分もある詞だと思ったので、メロディは憂いの中にちょっとだけ明るさがある感じにしました。サウンド的にちょっとファンクっぽい部分があったりとか、ピアニカで懐かしい感じを出したりもできたので、味わい深い1曲になったと思います。