ナタリー PowerPush - 小林太郎
「イメージ通りの音」から「伝わる言葉」へ 初シングルで挑んだ自己肯定と解放
小林太郎が自身初となるシングル「鼓動」をリリースした。昨年7月にミニアルバム「MILESTONE」、今年1月に1stフルアルバム「tremolo」と、メジャー移籍後は作品を立て続けに発表している小林太郎。新たに届けられたシングルにはパワフルなロックチューン「鼓動」と、エモーショナルな歌声が印象的な「蕾」の新曲2曲が収録されており、力作「tremolo」でつかんだ自信が色濃く反映された作品に仕上がっている。
今回のインタビューでは自身が「もっともイメージに近付けた作品」と語る「tremolo」を改めて振り返ってもらいつつ、初めてシングルを制作することになった経緯や、楽曲に込めた思いなどを明かしてもらった。
取材・文 / 西廣智一
芸術的なお造りじゃなくてシンプルなお刺身でいいんじゃないか
──前作「tremolo」のインタビュー(参照:小林太郎「tremolo」インタビュー)のときに太郎くんは「『tremolo』は自分の頭の中にあったイメージにもっとも近付けた作品」と言っていました。リリースから半年経った今、あの作品を振り返ってみてどう映りますか?
作り終えてリリースをする頃って、まだ作り終えた達成感があるんですけど、あのときは実際にそれがいいのか悪いのかっていうのがわからない状態だったんですよね。でもその後「tremolo」のツアーを東名阪でやったりいろんな人から話を聞いてみたりして、聴く人との距離感が縮まった作品なんじゃないかと思って。前々作の「MILESTONE」でも縮まった感はあったんですけど、それよりもっと近くに感じられるようになったのかな。
──どういうところから距離が縮まったと感じたんですか?
「MILESTONE」から「tremolo」に流れるに連れて、ライブで表現しているものがそのまま作品に近付いている感じがして。アーティストさんによってはライブはライブ、作品は作品と切り分けている人もいますし、それはそれで全然おかしなことじゃないんですけど、俺は作品でもライブでも常に生々しさを出していきたいんです。実はインディーズの頃の作品(「Orkonpood」「DANCING SHIVA」)では一発録りだったんですけど、「MILESTONE」以降は音源のクオリティを上げるために別録りしていて。
──そうだったんですね。
音源のクオリティが上がった状態でインディーズ時代の一発録りの雰囲気に近付けようとした結果、演奏テクニックではなく曲の根本的な作り方が変わってきたのかな。だから「MILESTONE」を経て完成した「tremolo」っていうのは、その理想にもっとも近付いた作品だったと思うんです。
──特に「tremolo」の楽曲は、イントロでギターリフがガツンと一発鳴っただけで、聴き手を高揚させるものが多いと思うんです。特にライブで聴いたときにはより強く実感しました。
もともと俺の曲作りっていかにライブ映えするかに重点を置いてきたので(笑)。だからギターリフが大好きなんです。一時期ちょっと複雑な曲も作ってたんですけど、「tremolo」ではグッとくるギターリフをたくさん用いて、よりストレートで生々しくしようと。お魚でものすごく芸術的なお造りを出すんじゃなくて、シンプルなお刺身でいいんじゃないかなと思ったんです(笑)。それくらいのわかりやすさでいこうと。
──素材のよさを生かすことを大切にしようと。
そうです。かなり大胆なことだと思うんですけど、そういう大胆でがさつなところがいいというか。だけどただ荒々しいだけではなくて、作品としては完成されているものが前提としてあるんですけど。
音楽って本当は何かとぶつかり合うのが当たり前
──今の話を聞いて、ライブに男性ファンが多いのも頷けました。
ねえ。黄色い声で「太郎ー!」って来るのかと思ったら、野太い声で「太郎ー!」って(笑)。でもいいですよね、そういう感じ。ライブでも男性のお客さんと常にぶつかり合ってる感じがして……そうやっていい意味でぶつかれるっていうのは、たぶん音楽の面でもいろんなものとぶつかり合えてるからじゃないかなと思うんですよね。
──それはどういうことですか?
例えば最近、SKRILLEXさんの音楽がデジタル過ぎて、アナログっていう意味での人が作る音楽を殺してるって批評のされ方があるんですけど、俺はそれがすごくいいなと思っていて。なんだろう、それまでの音楽を殺すことでSKRILLEXさんが生きてる気がしたんですよね。音楽って本当は何かとぶつかり合うのが当たり前なんだなと思っていて。例えば伝統的な音楽があって、それに反抗するためにロックが生まれて、ジャズやクラシックみたいな音楽的にレベルが高いと言われるジャンルの人たちはロックを低く見る。俺自身も何かとぶつかり合うぐらいじゃないとダメだと思ってるからこそ、ライブでは男性のファン……中には女性のファンもいるかもしれないけど、そうやってお客さんとぶつかることに意味があるんじゃないかと思ってるんです。
──そういう太郎くんの思いがストレートにお客さんに届いてるから、お客さんのほうも素直にぶつかっていけると思うんですよね。
あれですよ、猪木さんのビンタと一緒ですよね(笑)。ビンタされるために列を作る人もいるくらいだし。ただライブでは俺がお客さんをぶっ叩くだけじゃなくて、逆に俺がぶっ叩かれるときもある。そういう意味ではお互いにビンタしたりされるのが俺のライブなのかな(笑)。
- ニューシングル「鼓動」/ 2013年7月17日発売 / STANDING THERE, ROCKS
- 初回限定盤[CD+DVD] 1500円 / KICM-91458
- 通常盤[CD] 1000円 / KICM-1458
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初回限定盤 CD収録曲
- 鼓動
- 蕾
初回限定盤 DVD収録内容
- TOUR2013 "tremolo" 2013.03.09 SHIBUYA CLUB QUATTROより(リバース / 白い花 / freedom / 輪舞曲 / 答えを消していけ / 安田さん)
- 「鼓動」MUSIC CLIP
通常盤 CD収録曲
- 鼓動
- 蕾
- BONUS TRACK:TOUR2013 "tremolo" 2013.03.09 SHIBUYA CLUB QUATTROより「Baby's got my blue jean's on」
小林太郎 VS Short Tour Vol.2
- 2013年9月20日(金)
- 愛知県 名古屋ell.FITS ALL
<出演者>
小林太郎 / another sunnyday / 黒猫チェルシー - 2013年9月27日(金)
- 東京都 渋谷eggman
<出演者>
小林太郎 / LUNKHEAD - 2013年9月29日(日)
- 大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
<出演者>
小林太郎 / Droog / onelifecrew
Tour 2013 "SOL Y SOMBRA"
- 2013年11月15日(金)
- 福岡県 福岡Queblick
- 2013年11月23日(土・祝)
- 宮城県 仙台PARK SQUARE
- 2013年11月29日(金)
- 大阪府 OSAKA MUSE
- 2013年12月1日(日)
- 愛知県 名古屋ell.FITS ALL
- 2013年12月5日(木)
- 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
小林太郎(こばやしたろう)
静岡県浜松市生まれのロックシンガー。初音源として、2010年1月にインディーズ1stアルバム「Orkonpood」をタワーレコード限定でリリース。力強いボーカルと洋楽の影響を感じさせる重厚なサウンド、鋭い歌詞で、リスナーから支持を得る。iTunesによる2010年に最も活躍が期待できる新人アーティスト「iTunes JAPAN SOUND OF 2010」にも選出され、2010年4月にはインディーズ1stアルバムが全国発売された。同年夏には「ARABAKI ROCK FEST」「SUMMER SONIC」など、新人としては異例となる16本の大型フェスに出演。10月にインディーズ2ndアルバム「DANCING SHIVA」を発表。翌月から初の全国ワンマンツアー「TOUR 2010 "DANCING SHIVA"」を全国10都市で開催した。2011年夏、新バンド「小林太郎とYE$MAN」を結成し野外フェスに出演。2012年よりソロ活動を再開させ、同年7月に新レーベル「STANDING THERE, ROCKS」からメジャー1stミニアルバム「MILESTONE」をリリースした。翌2013年1月には早くもメジャー1stフルアルバム「tremolo」を発売。リリース日より関東近郊をまわる対バンショートツアー「小林太郎VS Short Tour」、3月から東名阪ワンマンツアー「TOUR2013 "tremolo"」を実施した。同年7月に自身初のシングル「鼓動」をリリース。