ナタリー PowerPush - 小林太郎
熟成し解き放たれたロック 自身の「MILESTONE」を語る
小林太郎の最新ミニアルバム「MILESTONE」がリリースされた。本作はキングレコードが新たに設立したロックレーベル「STANDING THERE, ROCKS」からの第1弾作品。小林にとってソロ名義では約2年ぶりの新作となり、彼のストレートな言葉が凝縮された聴き応えのあるミニアルバムに仕上がっている。
今回のインタビューで小林は、昨年夏に結成し同年末に活動を終了させたバンド「小林太郎とYE$MAN」についてや、ソロ活動とバンド活動の違い、新作制作について言及。さらに、これまで模索してきた音楽との向き合い方や表現方法の変化など、興味深い話をたっぷり語ってくれた。
取材・文 / 西廣智一
伝えたいメッセージがなんなのかわからなくなった
──最新ミニアルバム「MILESTONE」は、全国流通のCDとしては約2年ぶりの新作になりますね。
昨年2011年はバンドでライブを中心に活動していて。CDを2年近く出していなかったんで、間が空いたように思われますよね。
──そもそも、なぜソロ活動からバンド活動にシフトチェンジしたんですか?
高校の頃はずっとバンドをやっていて、逆にソロっていうものはCDを出すようになってからが初めてで、もう何がなんだかわからないぐらいの気持ちでがむしゃらにやってたんです。で、インディーズ2ndアルバムの「DANCING SHIVA」(2010年10月発売)を出してちょっと落ち着いたときに、「より良い音楽を作るためにはソロとバンド、どっちのスタイルがいいんだろう?」って考えたんです。プロとしてはソロでやってきたけど、バンドはアマチュアでしかやったことがなかったし、いろいろ模索していきたいって気持ちが強くて、バンドでやってみようかなと。
──あくまで「より良い音楽を作る」ことが目的だったんですね。
はい。それで曲もソロのときと同じように作って。できた曲はソロのときとは全然違う感じなんですけど、曲を作っているときの気持ちというか、いいものを作ろうっていう感覚はソロのときと全く一緒で。そういう意味では、すごく勉強になった1年間でしたね。
──じゃあ、感覚的にはソロと変わらないからバンド活動を終了させた?
それと、メンバーそれぞれが曲を作っていて、「今はバンドじゃなくて、それぞれの曲をそれぞれでちゃんと作り上げたほうがいいね」っていうことになって。でも、俺自身は音楽活動をする上での伝えたいメッセージがなんなのかがわからなくなってきちゃって。元々はそれを伝えるのにソロがいいのか、バンドがいいのかって話だったのに、バンドが終わる頃にはそれすらわからなくなってしまったんです。特に昨年は震災があって、自分と向き合う機会が非常に多くなって、結果として1年間ずっと自分と向き合ってたなと。
──バンドを終了させてもまだ?
そう。答えが見えなかったんですよね。でもあるときにふと、いろんな人が自分のことを評価してくれる、その言葉をいろいろ思い出して。「声が太い」とか「メロディが良い」とか「ライブの立ち姿が良い」とか。それって俺自身じゃなくて、俺の中にある音楽の才能について言ってもらってるような気がしたんですよ。それで、俺という存在はそういった音楽の才能を受け取る器であって、中身の才能やエネルギーっていうのは自分のものじゃないのではと思って。そういった才能やエネルギーを与えられたことで、ときには悩んだり、ときにはいい思いをしたりしたけど、自分がしなきゃいけないことっていうのは、その才能やエネルギーを自分以外の誰かに還元すること、あらゆるタイミングでそのときの中身を一滴残らずぶちまけなきゃいけないんじゃないかという気がしたんです。そう思えるようになってからはすごくすっきりして、そういった考えが今回の「MILESTONE」っていうミニアルバムにもつながったんじゃないかな。
自分が生きてるうちに全部出し切らないと申し訳ない気がする
──例えば、自分の中に入ってきたものがきっかけになって、自分自身が変わっていくことはないですか?
全くないですね。もし変わるんであれば、俺の中身が変わるだけ。俺はそれを一番近くで見てるから自分のことのように思えるかもしれないけど、器である俺自身は何も変わらない。中身が変わろうが変わるまいが、それは俺の考えるところではないのかなと。
──非常に面白い考え方というか。つまり、小林さんにとっては音楽は作り出すものではなくて、自分の中に入ってきたものを自分を媒介してどんどん広めていくものだと?
そうですね。受け取ったものを還元する作業をしないと、自分の中で止まっちゃうのが嫌なんで。だから自分が生きているうちに、どうにかしていろんな方法で全部出し切らないと申し訳ない気がするんです。
──申し訳ない?
自分の中にある才能なのに、自分でコントロールしたり好き放題にしたりしていいとは思えなかったんですよね。そういう思いが根本にあったので、今みたいな考え方になったのかもしれないですけど。
──外から見ていると、吐き出すことや届けることについて小林さんの能力が長けているから、より多くのリスナーに小林さんの歌を届けることができたのかなとも思うんですが。
要は中身の良さをストレートに伝えるコツさえつかめば、例え自分がその中身のことを理解してなくてもいいんじゃないかと。コツをつかんでいい曲が作れたんなら申し分ないだろうと、俺は思ってます。
- メジャー1stミニアルバム「MILESTONE」 / 2012年7月11日発売 / STANDING THERE, ROCKS / KICS-1785
- メジャー1stミニアルバム「MILESTONE」 / 2012年7月11日発売 / STANDING THERE, ROCKS / KICS-1785
収録曲
- 飽和
- 惰性の楽園
- 鴉
- 弁舌~interlude~
- 白い花
- 泳遠
- 廻って廻って
小林太郎 イベントライブ
- ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
- 2012年8月3日(金)・4日(土)・5日(日)茨城県 国営ひたち海浜公園
OPEN 8:00 / START 10:30 / END 20:30(予定)
※雨天決行(荒天の場合は中止)
※小林太郎の出演日は 8月3日(金) - TREASURE05X
- 2012年8月23日(木)愛知県 名古屋CLUB DIAMOND HALL
OPEN 16:30 / START 17:15 - RockDaze!2012 -challenge- with cross fm
- 2012年8月25日(土)福岡県 DRUM LOGOS / Be-1 / SON
OPEN 14:30 / START 15:00
※出演会場未定
小林太郎 インストアイベント
- 小林太郎 SHORT LIVE ACT "MILESTONE Carnival Vol.1"
- 2012年7月23日(月)大阪府 心斎橋Pangea
START 19:00 - 小林太郎 SHORT LIVE ACT "MILESTONE Carnival Vol.2"
- 2012年7月27日(金)東京都 タワーレコード渋谷店B1 STAGE ONE
START 19:00
小林太郎(こばやしたろう)
静岡県浜松市生まれのロックシンガー。初音源として、2010年1月にインディーズ1stアルバム「Orkonpood」をタワーレコード限定でリリース。力強いボーカルと洋楽の影響を感じさせる重厚なサウンド、鋭い歌詞で、リスナーから支持を得る。iTunesによる2010年に最も活躍が期待できる新人アーティスト「iTunes JAPAN SOUND OF 2010」にも選出され、2010年4月にはインディーズ1stアルバムが全国発売された。同年夏には「ARABAKI ROCK FEST.10」「SUMMER SONIC 2010」など、新人としては異例となる16本の大型フェスに出演。10月にインディーズ2ndアルバム「DANCING SHIVA」を発表。翌月から初の全国ワンマンツアー「TOUR 2010 "DANCING SHIVA"」を全国10都市で開催した。2011年夏、新バンド「小林太郎とYE$MAN」を結成し、「SUMMER SONIC 2011」「ARABAKI ROCK FEST.11」「JOIN ALIVE」などの野外フェスに出演。2012年よりソロ活動を再開させ、同年7月に新レーベル「STANDING THERE, ROCKS」からメジャー1stミニアルバム「MILESTONE」をリリースした。