ナタリー PowerPush - knotlamp
苦難の先に広がる地上絵「Geoglyph」は新たな原点
新体制による変化
──そういうレコーディングを経て、今作はのびのびとした作品になっていると思います。去年リリースされたミニアルバム「Bridges We've Dreamed」は架け橋のような作品って言ってましたよね。そういう言い方をすると、今作はどういう作品ですか?
次へ向かうって意味ではやっぱり架け橋なんですけど。レーベルが変わって環境も変化して、何よりサポートメンバーだったMAHIROが正式メンバーとなって初めてのアルバムで。新しい4人で新しい場所へ向かって行こうっていう作品です。knotlampが新しくなって新しい場所へ向かう、その原点になるアルバムだと思います。今後のknotlampにとってこのアルバムが基準になると思うんです。多分今後このアルバムを振り返って、そして成長していけると思う。
──私は今作を聴いて足元がしっかりした印象を受けました。架け橋を渡って次の場所に着地したような。
そういう感じもあるかもしれない。やっぱりメンバーが固まったっていうのが大きいんでしょうね。気持ち的にも落ち着いたし。あとやっぱり今までになかったギターが出ていると思うんです。「Bridges We've Dreamed」のときは、MAHIROはツアーには参加していたけどまだサポートメンバーだったからレコーディングには参加していなくて。だから3人で作ったしギターは僕が全部弾いたんですね。それと比べると僕のギターの量は、ザックリ言うと半分になった。半分になった分、僕は余裕ができて曲作りに集中できた。そしてギターには新たしい側面が加えられて。
──MAHIROさんはハードロックも好きということですが、6曲目の「Evil Whisper」のギターは……。
まさにMAHIROのギターです。僕には浮かばないアイデアだけど、アイツは曲を理解して印象に残るフレーズを導き出すんですよ。曲が一番いい方向を向くようなフレーズを考えてくる。そういうセンスに長けてるんですよね。
許容量が増して、視野が広くなった
──KEITさんが印象に残っているのはどの曲でしょう? 例えば「これは今までと違う」と感じた曲は?
5曲目の「Depression's Dance」ですね。
──あ、私もそう思いました。
これこそまさにボツだった曲なんで。
──え? 意外。新しい側面を堂々と出してる感じなのに。
この曲はこう、流れるように進んでいく感じの曲なので、僕はサビはもう少しクラシカルなほうがいいと思ったんですよね。
──でもこの曲は、メロコアのような性急感とはちょっと違って、タフなビートを持ったロマンチックな曲ですよね。
ええ。だからこういうテイストがknotlampにとってどういう意味があるのか?って考えて。可能性を試すために入れた曲なんです。
──作り始めたときは、違う面を出そうって意識があったんですか?
いや、もともと浮かんだときにこのイメージだったんで。違う面を出そうとか意識して出てきたものではなく、思いついたままに作ったんです。
──思いついたままに出てきたものが今までと違っていたっていうのは面白いですね。
いや、これまでもいろんなタイプの曲が浮かぶことはあって。ただ、それがバンドに合わないものもたくさんあって。曲を作るときは、もちろんknotlampのメンバーとして作るんですけど、それ以前に僕は作曲が大好きなんですね。だからknotlampのことを意識する前にメロディが浮かぶことがあって、そうやって出てきた中でknotlampに合うものを探していくという感じ。だからこの曲のメロディ自体は僕の中では珍しいものではないんです。
──じゃあ今まではknotlampに合わないと思っていたものが、今作でknotlampとしてもやれるようになった。つまりknotlampの許容量が増したという。
そうです。この曲はまだ試しの段階ですけど、knotlampの許容量は増したと思うし、あと僕らの視野が広くなったんだと思います。この曲を入れるのに、この1曲だけでいい曲かどうか判断するんじゃなく、このアルバムの中でこの曲はどういう位置になるか? 今まで作ってきた作品の流れを見て、この曲を入れたときにknotlampは説得力のある変化をしているか?って、いろんな角度から見て判断できるようになりました。
──なるほど。自分たちを俯瞰して。
そうです。いろんな角度から見た上で、入れてもOKだろうって。
──アルバムの真ん中にふさわしいですよね。
フックになってますよね。こういう、今までにない曲を発表することによって、これから自分たちがどう変化していくのか、自分たちでも楽しみで。ここからまた新しいアイデアが出てくるかもしれませんし。
──ですね。この曲が新たな基準になって広がっていくかもしれない。
だから作品の中に新しいことは必ず入れているつもりです。新しいことっていうのは次に向かうスタート地点でもあるわけですから。
新しい要素も突飛なものではなく、自分たちらしく
──今作はそうやって新しいことを取り入れているのに、いい意味でそれを聴き手に意識させない作品だと思うんです。「Bridges We've Dreamed」はチャレンジ精神旺盛で、それを聴き手も感じてワクワクする作品だったと思うんですが、今作は曲そのもので楽しめるというか。曲自体の楽しさが増してると思うんですよ。
曲がわかりやすいですよね。さっき「今後の基準となるアルバム」って言いましたが、「knotlampといえばコレだ」ってものにしたいって気持ちがあったんです。新しい要素も突飛なものではなく、自分たちらしく出したかった。それがそういう印象につながっているのかもしれないです。あとやっぱりバンドが安定したのが大きいです。メンタル的なとこも含めてすごく健やかで。集中できる環境だった。
──アルバムに収録された10曲は、今作のために書き下ろしたものばかりですか?
アルバムのために集中して曲作りをしたんですけど、僕は作曲が大好きだから今までに作ったストックもたくさんあって、そこから断片を拾い上げて作った曲もありますね。
──アルバム全体の流れとしては、前半にストレートで勢いのある曲が続いて、後半はバンドの新たな方向性も感じられるバラエティに富んだ楽曲が並んでいる、という印象を受けました。この曲順はどのようにして決まったんですか?
曲と曲の流れや組み合わせですね。最初にイメージがあってそれに沿った曲順にしたわけではなく、パズルを組み合わせるみたいに、ここの次はこれって、曲を選びながらイメージを固めていった感じです。
──でもやっぱり「Across my world」が1曲目というのは最初に決まったんじゃ?
それが最後に決めたんですよ。「Across my world」は入れるとこがなくなっちゃって、最後に1曲目にしようって。結果、成功したと思います。やっぱりタイアップにもなったし一番とっつきやすい曲だと思うし。そこから扉を開けてスタートする感じで。
ニューアルバム「Geoglyph」2012年9月19日発売 IMPERIAL RECORDS
収録曲
- Across my world
- Westerlies
- 理想飛行船
- Back to ZERO
- Depression’s Dance
- Evil Whisper
- Eternity
- Prometheus
- Live my life
- On Your Way Home
- Last moment
初回限定盤DVD収録内容
- Across my world(Music Video)
- Live my life(Music Video)
- Across my world(メイキング)
- Live my life(メイキング)
- 『Geoglyph』メンバースペシャルインタビュー
- 「Across my world TOUR 2012」代官山UNITドキュメント
knotlamp / Live my life
knotlamp/Across my world
knotlamp(のっとらんぷ)
2007年にLD&K Recordsより1stミニアルバム「Blind Side」をリリース。数多くのロックフェスやライブイベントに出演し、メロディアスな楽曲と強力なライブパフォーマンスで注目を集める。メロディックパンクシーンを牽引する存在としての期待が高まる中、2010年9月7日に2ndフルアルバム「Dot of the Galaxy」を発表。2011年8月の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2011」ではWING TENT最終日のトリを務めた。2012年1月にはMAHIRO(G)が正式メンバーとして加入し、6月6日にImperial Records移籍第1弾となるニューシングル「Across my world」(NHKアニメ「銀河へキックオフ!!」テーマソング)を発表した。9月19日には新体制となって初のフルアルバム「Geoglyph」をリリース。