音楽ナタリー Power Push - 清木場俊介

今だからこそ歌える軌跡

“生き方=音楽”が清木場俊介

──このあとの活動についても聞かせてください。今回のシングル「軌跡」は清木場さんにとって1つのトライだと思うのですが、今後も新たな挑戦が続きそうですか?

まだ漠然としてますが、やりたいことはありますね。そういうことって、スタッフさんが持ってきてくれることも多いんですよ。大事なのは、そのときに自分がどういうテンションでいられるかということなんですよね。清木場俊介というアーティストをしっかり育てていければ、いつ、どんな話が来ても「やろう」と言えるんじゃないかなって。今回の亀田さんとの話もそうじゃないですか。ソロデビュー当時だったら、「まだ早い」ってことになったかもしれないし……。そういう考え方になれたのは、去年やったフリーライブやハイタッチ会も大きいんですよね。

──初めてのフリーライブでしたよね。

「ショッピングモールでフリーライブ? ふざけんじゃねえ」って思ってましたから。そんなところで歌っても一銭にもならないって……さっきからお金の話ばっかりしてますけど、そういう人間じゃないですからね(笑)。対価というか、歌ったら、それに見合ったものをもらいたいということであって。

──そうですよね。

清木場俊介

でも、スタッフに半年がかりで説得されまして。そのうちに自分も「なるほど、やらなくちゃいけないな」と思うようになったんですよね。で、「フリーライブやります」って言ったら、「じゃあ、ハイタッチ会も」って(笑)。でもやってみたらね、これがすごく楽しかったんです。これまであんなに近い距離でファンの人と会うこともなかったし、いろんな話ができますからね。「今は子供が小さいからライブに行けないけど、大きくなったら必ず行きます。それまでライブを続けていてください」とか。そういうことを話せるのはすごくいいですよね。ほら、最近のアイドルはみんな握手会をやるじゃないですか。ずっと斜に構えて「何やってんだよ」って思ってたんだけど、アレはいいね。尊敬する。俺もトータルで2万人くらいとハイタッチしたんだけど、彼女たちは規模が違うじゃない?

──アイドルにとっては欠かせないイベントですからね。清木場さんはファンとの精神的なつながりも強いし、ハイタッチ会はすごく意味がありますよね。

ちょっと熱すぎるくらいですけどね(笑)。10年応援してくれてる女性ファンは「私が育てた」くらいに思ってますから。あれは母性なんですかね? 「10年前はガキだったけど、大人になったわね」みたいな。こっちも「やかましいわ」って言ってますけど(笑)。あと、男のファンが増えたのもうれしかったし。

──音楽性についてはどうですか? もちろん芯になる部分は変わらないと思いますが。

音楽的なことよりも、「生き方がブレない」ことのほうが大事なんですよね。ロックでもR&Bでも演歌でも、“清木場俊介”の中身は変わらないので。人間性が変われば聴いてくれる人に嘘をつくことになりますけど、そうじゃない限り、音楽性はなんでもいいというか。やっぱりロックをやりたいですけどね。あとね、「今は歌えないな」という曲もあるんですよ。例えば「クサレ...俺」とか「なにもできない」とか。今はクサレてないし、けっこうなんでもできますからね。ライブでも「『クサレ...俺』を歌ってください」と言われたりするんだけど、「今はクサレてないから歌えない」って答えてるんですよ。この前のライブハウスツアーではルーツという意味で昔の曲も歌ったんだけど、どんどん変化していかないと観ている人も飽きるだろうし。やっぱり俺は、生き方が音楽になってるんですよね。

──最近の音楽シーンには、“生き方=音楽”というタイプが少なくなってますよね。むしろ先に音楽のスタイルやコンセプトをしっかり決めているアーティストも多いですし。

だって、今はデビューするのも厳しいじゃないですか。デビューしても、結果が出なければ1~2年で契約を切られるし。そう考えると、俺みたいなタイプはリスキーでしょうね。まあ、俺もソロになったときは「1~2年で潰れる」って言われてましたから。特にレコード会社も事務所も辞めて独立してからは、仕事がない時期が1年半くらい続いて。本当に厳しい世界だなって痛感しましたね、あのときは。だって俺、地元(山口県)の川でサワガニをボーッと眺めてましたから(笑)。飲みに行っても「最近見ないですけど、辞めちゃったんですか」とか言われるし。独立を選択したことを後悔することもあったけど、それより「今に見とけよ」という気持ちが上回ったから、なんとかやれたんじゃないかな。

──では最後に。“男の30代”についてどんなふうに感じてますか?

プライベートも仕事も楽しめてますね。俺の周りにもそういう人が多いですよ。第一線でやってる人が多いし、あまり愚痴とかも聞いたことないな。30代は選択肢も広がるし、いい意味で余裕もあるし。その中で、本当に守るべきものを選んでる時期なのかもしれないですね。40代になる頃には、守りたいものが決まって、そのためにがんばろうと思うんじゃないですか。

──当然、歌い続けることが前提なんですよね?

ええ。どうなるかわからないですけどね。自分が歌いたいと思っても、お客さんが100人くらいのライブハウスでしかやれなかったら、それだけではメシが食えないので考えなきゃいけないだろうし。もちろん、ずっと歌っていたいですけど。自分の作った曲をリスナーに投げかけて、いいとか悪いとか言ってもらえるのは本当に幸せなことだから。もう2年くらい休んでないですけど、やっぱり歌は続けたいから、どんなに忙しくてもがんばりますよ。

清木場俊介
ニューシングル「軌跡」2015年6月24日発売 / 1080円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-37058
「軌跡」
収録曲
  1. 軌跡(るるぶトラベル夏キャンペーンTVCMソング)
  2. Sunrise
  3. 軌跡 -instrumental-
清木場俊介(キヨキバシュンスケ)
清木場俊介

1980年生まれ、山口出身の男性シンガー。地元テレビ局のボーカルオーディションに優勝し上京し、2001年9月にEXILEのボーカル・SHUNとしてデビューする。2005年1月にシングル「いつか…」でソロデビューし、翌2006年3月にソロアーティストとしての道を追求するためにEXILEを脱退する。また2008年に所属レーベルおよび事務所を離れ、新チーム・JETを設立。2009年1月にSPEEDSTAR RECORDSへの移籍を発表し、同年7月にアルバム「Rockin' the Door」をリリースした。音楽活動の傍ら、詩や書などを作品集や個展という形で発表し、4回に渡り全国各地で個展を開催。のべ5万8000人を動員するなど音楽だけにとどまらないマルチアーティストとしての才能を開花させている。2014年にはソロデビュー10年目の節目を迎え、初のベストアルバム「唄い屋・BEST Vol.1」、オリジナルアルバム「MY SOUNDS」、シングル「幸せな日々を君と」「ROCK★STAR」など作品を多数リリース。2015年6月に亀田誠治プロデュースによるシングル「軌跡」を発表した。