いろんな世界に飛び出してしまうクセ

──今作では個性的なアレンジャーたちを迎えて、クラシック音楽とはまた違う刺激をいっぱい受けたのでは？

Mona　そうなんです。皆さん、私たちのピアノ連弾を生かした楽器アレンジを考えてくださいました。なので新鮮なアレンジでありながら、私たちの世界ともマッチしたものになったんじゃないかなと思います。例えば「矛盾律」はピアノも自由自在に独特なアプローチをしているんですけども、そこにビートが合わさり、さらに弦楽器が入ったりもして、ポップスでもクラシックでもない新しい世界観がこうして作られるんだなあと感動しました。アレンジしてくださったのはドラマーの神谷洵平さんで、神谷さんはこの曲で初めて弦楽器のアレンジをされたそうです。そういった意味でもいろんなチャレンジが詰まった曲になっていて、皆さんと寄り添って1つのものを作っていく過程がすごく勉強になりました。

Hina　「羅針鳥」のアレンジも神谷さんにしていただいたんですけど、この曲はけっこう打ち込みが入っています。その場合、先に打ち込みのビートを作って、それに合わせてピアノを弾くことが多いと思うんです。でも、この曲はまず私たちのピアノを録って、そこに1つひとつビートを手作業で当てはめてくださいました。

──うわ、それってすごい手間ですよね。

Hina　はい、もうホントにすごく大変だっただろうなと思うんですけど、そこまで私たちの呼吸を大事にしてくださったことがうれしいし、ありがたいなと思います。

──それにしても「羅針鳥」も「矛盾律」も、Monaさんの描く世界はちょっとダークで、摩訶不思議ですよね。

Mona　ふふふ（笑）、そうですね。ピアノを1人で黙々と弾いている時間が長かったので、その分頭の中でいろんな世界に飛び出してしまうクセがいまだにあるのかなと思います。それが楽しいんですけど。

──それがKitriの色になっていると思うんですが、今回はMonaさんだけでなくHinaさんも歌詞を書くことによって、これまでとはまた違う色が加わっているなと感じました。

Hina　私は最近たくさん歌詞を書くようになったんですけど、Monaの曲はどれも聴いてすぐにテーマが浮かびます。たとえば「Lento」は合唱曲のような癒されるメロディだなと思って、そこから故郷を思うような情景が浮かんできました。私は読書が趣味なので、具体的な景色が浮かんだり、言葉の響きにすごくこだわったり、そういうところがMonaの書く歌詞とはちょっと違うかもしれないですね。

──どんな本がお好きなんですか？

Hina　恒川光太郎さんや乙一さんのように、ファンタジーのようで、ちょっとホラーやミステリーの混ざったジャンルが好きです。

Mona　Hinaの歌詞はときに自分の想像を超えるし、色彩感を与えてくれると思っていて。1人では作れなかった世界がたくさんあるので、2人の強みにしていけたらいいなと思います。

1人で歌っているかのように心地よくなる

──また、「バルカローレ」ではHinaさんがメインボーカルを取っていますね。

Mona　大橋さんが、2人の声は似ているけどやっぱりどこか違うから、Hinaがメインになる曲があるとさらに幅が広がるかもと提案をしてくださったんです。Hinaは裏声を私より美しく出せると思っていて、そのよさを引き出すためにも囁くように歌う曲がいいかなと思って、当初のアイデアを練り直しながら作った曲です。

Hina　受け取ったときはすごく個性的で美しい曲だなと、うれしい気持ちになりました。いつもと声が違うように聞こえると思うので、その違いも楽しんでいただけたらと思います。

──声の感じって、表現する世界に大きく影響しますよね。

Mona　確かにそうですね。私たちの声はよくウイスパーと言われるんですけど、熱いピアノにクールな歌というか、ウイスパーな歌声を乗せるのがKitriなのかなと。

──最初からそのスタイルでいこうと？

Mona　あの、実は「ウイスパーですね」って皆さんに言われる曲も、自分の中では思いっきり歌ってるつもりだったりするんです（笑）。なので狙ってやっているというより、作品を出していろんな方に聴いていただいたいたことによって、そう聞こえるんだということを自分たちも知り、それをよさと捉えたほうがいいのかなと思うようになったんです。

──そうだったんですね。それにしても姉妹だけあって、本当に声質が似ていますね。どっちが歌っているのかわからなくなる瞬間はないですか？

Mona・Hina　あります！（笑）

Mona　自分たちでも不思議なんですけど、「あれ、この歌声はMonaとHinaどっち？」と判別できなくなる瞬間があって。特にライブで絶妙にハモっているときは、まるで1人で歌っているかのように心地よくなるんです。

──それだけ波長が合うということなんでしょうね。

Mona　はい、そこは姉妹ならではかもしれません（笑）。

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作品が引き出した新たな一面