きのホ。インタビュー|主催フェス「ホ。フェス'26」開催前に考える、グループの独自性と現在地 (3/4)

妹分グループ結成に反発

──以前、京都でトーク対バン(2022年11月にModern Timesで開催された「京都定期公演【京月観】vol.11」)をやらせていただいたときに印象的だったのが、ポテトさんに対して「私たちが成功してもいないのに妹分グループを作りたいってどういうことですか!」って皆さんが詰め寄ってたことなんですよ。

御堂莉 あははは!

小花衣 え、そのときまだ作ってない?

──はい。今はAQという妹分グループがいますが、当時はそのプランを口に出していたくらいでした。

桜寝 新井さん、かなり前から「作る」とは言ってたから。

──あれをお客さんの前で直接言える関係もいいと思ったんですよね。

小花衣 確かにすごいですよね。実際に妹分グループができることが決まったときも、みんなXで言ったよね。びっくりして。

御堂莉 「黒髪ボブの子は入れないでください」って。あとは「くるちゃんより年下を入れないで」とも。どっちも入ったけど。

小清水 妹分なんだから、くるちゃんより年下が入るのは普通じゃない?(笑)

御堂莉 そうそう。でも、ファンのみんなは若い子が好きだから入れないでほしかった。

御守 ポテトさんが妹分を作ったことによってメンバーがちょっと荒れて、お客さんが「自分にはきのホ。だけだよ」って言ってくれたんですよ。その反応も込みでポテトさんの戦略だと思ってたんですね。そしたらポテトさんはその状況に対してホントに落ち込んでた。

桜寝 あははは!

御守 自分が悪者になるつもりなのかなと思ってたら、単純にメンバーが傷付いて、ポテトさんも傷付いた。

桜寝 私はきのホ。に注ぐその時間とか愛とか……まあお金もですけど、そういうものが1mmでも削がれて、こっちがないがしろにされるなら許さないって話をしました。

小清水 めっちゃ言ってた(笑)。

桜寝 私たちをないがしろにして新しいグループを作るんだったら許さないって。会社ごと燃やしてやるぐらいの勢い。

小花衣 こわっ(笑)。

桜寝 ……と思ってたけど、新井さんは基本、熱意と愛でできてる人だから、実際はちゃんと安心できてる。それに、AQのライブを観たり、一緒にイベントしたりするたびに、ちゃんと古都レコードのグループだなって思う。

桜寝あした

桜寝あした

御守 妹分ができてから一番ウキウキしてたの、らねちゃん(桜寝)じゃない? 急にお姉さんみたいになっちゃって。

小花衣 急にぶりっ子しだしたんですよ。

桜寝 ごはんとか誘われるのうれしい(笑)。

小清水 お洋服あげたりしてね。

小花衣 あんなに言ってたのに。

桜寝 できちゃったらかわいくて仕方ない(笑)。新井さんの対応が誠実だったし、メンバーもみんないい子だった。結果論ですよね、全部。

御堂莉 めっちゃ古都レコードっぽい人。4人とも。

──反発してたけど、今はもう……。

御堂莉 仲良し!

古都レコードの社員から個人事業主に

──独自性で言うと、ボクがポテトさんに話を聞いて驚いたのが、皆さんが古都レコードの社員だったことなんですよ。でも、そこにも動きがあったんですよね?

桜寝 ああ、そうですね。あのー、辞めたというか……解雇されました。リストラかな? (笑)

御堂莉 みんなびっくりした。

桜寝 契約社員ですらない。個人事業主になりました。

──それはどういう流れだったんですか?

桜寝 もともと古都レコードって自転車操業の会社ではあるし、「あなたたちの税金とかに払っているお金をもっとほかに使えたら、古都レコードはもっとうまく回るよね」みたいな感じで。

──そんな込み入った話だったんだ!

小清水 ホワイトボードを使って、「今この分だけ払ってて、これをあなたたちが払ったらこうなるから、その分はこっちに回す」とか教えてもらって。「あなたたちはこうなっていくんだけど、領収書とかそういうのもこっちが何とかするし、投資とかそういう道があるよ」みたいなところまで全部。

小清水美里

小清水美里

桜寝 それで「個人事業主になってください」って言い渡されるみたいな感じでした。

御守 市役所からめっちゃ電話かかってくる。あらゆる手続きが全然できてないから。

桜寝 怖いよー。

御堂莉 くるちゃんは全部お母さん任せ。秋田からお母さんが定期的に来て、領収書を仕分けしてくれてる。

小清水 えー!?

御堂莉 親を雇ってる(笑)。

──個人事業主になってみていかがですか?

小清水 社会保険の打撃がすごい。

桜寝 痛いよね、わかる。

小清水 あと2月が怖い。初めての確定申告。ちょっとヤバそうですね。

桜寝 ……うん。そこは大人に責任を持ってやってもらうのでたぶん大丈夫だとは思うんですけど。

小清水 事務所が雇ってる税理士さんに、私たちでお金を払って、領収書とかを渡して確定申告を手伝ってもらう感じです。

桜寝 やだー、生々しいね(笑)。Xで「確定申告ヤバい」って言ってるアイドルを見て「あー、自分は正社員だから」と思ってたけど、今は同じ気持ちです。怖いっす。

──ぶっちゃけ実入りはどうなんですか? 会社員時代と比べて。

桜寝 減ったんじゃないですか? だって、税金とか払ってるんで今。

御守 単純に家賃もあるし……。

──ああ、一人暮らしの分が上乗せされて。じゃあ大変じゃないですか。

桜寝 トータル合わせたら、もう数万円以上は違うはずで、社員時代よりも給料は少ないと思います。目を背けてるよね今、ウチらは。まあ別に生きていけてるんですけど。なんとかなってる。

小清水 大丈夫だから手放されたというか。

小花衣 実際、生きられてはいるもんね。

小清水 もしも無理だったら、この決断はしていないと思う。古都レコードはそういう会社です。

──自分たちも個人の仕事をやらなきゃ、みたいなモードになったりするんですか? 個人の仕事もやりやすくなって、そのギャラがそのまま自分に入るわけですし。

小花衣 いや、そこに関しては何も気持ちは変わってないです。

桜寝 仕事を取ってくるのは運営だし、ウチらが取った仕事でもあっちを通すので。

──じゃあ、意識的な変化もまだって感じですか。

小花衣 全然ないです。領収書を整理しなきゃ、としか思ってない。

桜寝 気持ちに変化が起きるのは、確定申告が終わってからじゃないかな。前ほど自分の好きなものだけで生きられないって感覚はあるかも。

小花衣 前は生活費を全部出してもらってたから。

桜寝 そのありがたみを知ると同時に、人間らしい生活しようって思います。服だけ買って生きられないし、大人にならなきゃなって思いはありますね。

──きのホ。は、アイドルシーン内の近い界隈の中では、かなりいい位置につけてるイメージだったんですよ。それでもまだまだ大変なんだなってことがよくわかりました。

小清水 がんばんなきゃなとは毎回思ってる。

桜寝 会社に黒字を生み出したいなって常に思います。動員を増やして。

──もっとちゃんと売れなきゃと。売れるって、実際どのぐらいのレベルを思い描いてます?

御堂莉 「紅白」(「NHK紅白歌合戦」)。くるちゃんはずっとそう思ってます。

小清水 名前を聞いて「ああ、そのグループね」って、一般の人にもわかるようなグループ。

きのホ。が考える今のアイドル界

──メンバーの関係性って、この5年でどう変わりました?

小花衣 最初はもっと遠慮してたかな。

小清水 言いたいことを言い合える関係にはなってる気がする。

小花衣 最初は言えてなかったかもね。気を遣ってた。

御堂莉 たまーに、結成1年目とか2年目のLINEを見返すんですけど、みんなそれまでに出会ってこなかったタイプの人たちで。みんな人との境界線みたいなのがわからなくて、自分の感情と状況が軸になってるから、話し合いとかで衝突が起こることが多かったんですけど、けっこう成長しました。全員が自分の軸を持ってるけど、そのうえでちゃんと人を気遣えるようになってるなって。昔のLINE、ヤバい。

──まったく気遣えてない(笑)。

御堂莉 (笑)。たぶん、最初はみんなめっちゃ我慢してたけど、それぞれ自分の蓋が壊れるときがあって、爆発してブワーッてなった。怖かったけど、みんなでちゃんと本音で話し合って「あ、こういう人間もいるんだ」って少しずつわかり合えた。

御堂莉くるみ

御堂莉くるみ

桜寝 お互いのことがわからないし、みんな直球で伝える方法しか知らない時期だったからね。今は、これを言ったら嫌だろうなとかだいたいわかるし、配慮ができるようになってきたのかもしれない。

小花衣 昔の私はすぐにいろいろ言ってた記憶があります。「これやってほしい」「え、これやってないよね」「これこうしてよ」みたいにマジ口うるさく言ってて、それがしんどかったメンバーもいたと思う。でも、こっちもこっちで言わないことに耐えられなくて。共同生活を通して仲よくなったけど、共同生活が終わったことで必要ない争いがなくなった。

小清水 ストレスがなくなって、別に使えるエネルギーができた感じ。

御堂莉 くるちゃんは、いろいろ言われたことが逆にありがたかった。もともと自分の気持ちとか全然伝えないし、不満があっても離れればいいくらいに思ってた中、メンバーと一緒に活動していかなきゃいけなくて。「もうどうしよう」って感じだったけど、ほかのメンバーが不満があればポンポン言ってるから、「あ、不満って言っていいんだ!」「じゃあたまに言ってみようかな」と思った。年が離れてるから最初は気にしてたけど、もう何も気にしてない。

小花衣 よかったそれ。最年長の私を敬うとか絶対ないもんね。

御堂莉 はははは!

小花衣 でも、それでよかったと思う、ホントに。気を遣わず、みんなが思ってること同じ立場で言える。

御堂莉 みんなを年上って思ったことない。

桜寝 全員同期だからね。

御堂莉 リーダーもいない。それもめっちゃデカいよね。たぶんリーダーができたら、その人がいろいろと背負い込んだり、責任を負うことになったりすると思うから。それぞれに責任があるのがちょうどいいと思う。

──リーダーがいないのは、単にポテトさんがそういうアイドルの世界の常識をわかってなかっただけ?

御堂莉 「作る?」って話したけど「いらないよね」って結論になった気がする。

桜寝 それが正解だったと思う。

小花衣 リーダー、いらないね。すぐ「リーダーに任せよう」とか言っちゃいそう。

桜寝 確かに、主体性が損なわれそうだよね。

──ちなみに今のアイドル界を皆さんはどういうふうに見てますか? けっこう中堅どころというか、音楽的に良質なグループが次々と解散したりしてますけど。

御堂莉 寂しい……。

桜寝 かわいいを正義とする時代ってことだけじゃないけど……変化は感じますね。「ライブアイドルめっちゃかっけえ!」みたいな時代もあれば、そうじゃない時代もある。

──そこでどう戦っていくか、みたいなことは考えます?

桜寝 きのホ。は“かわいくてカッコいい”ができるから戦えてるのかなと思ってて。派手にバズるみたいな流れに乗っかることはたぶんないんですよ。

──そういうのが得意そうな人もいないし。

御堂莉 そっち側になりたいけど……。

桜寝 バズりたいとは思ってます。

小花衣 でも、一般受けしないから。

御堂莉 いや、ホントはするんだよ、きのホ。は。

御守 でも今って、バズったから売れるってことでもない気がする。前は写真が1枚バズったらそれだけでドン!って勢いが出てたけど。

御堂莉 今は分母が多い。

小花衣 だからバズるより、刺さる人に刺していきたい。

桜寝 うんうん。だからきのホ。らしく進めている気はします。ちゃんと力を付けてがんばって。

御堂莉 だからこそバズりたい。バズったときに何が大事かって、それまでやってきたことがちゃんとしてるかどうかじゃないですか。1回バズれたら、今までやってきたことを見つけてもらえるから、バズりたい。

桜寝 面白いことをいっぱいしてきたからね。

──食い付いた人が、MVを観るなりライブに来るなりしたときに「すげえ」って思ってくれるようなものをちゃんと作っておくことが重要で。

御堂莉 そうですね。それをやってます。

小花衣 すごいもんね、うちらのMV。

桜寝 バズってはいないけどさ、つかんだお客さんは離してないと思う。入ってきてくれた人を逃さないだけのコンテンツはいっぱいあるから。

御堂莉 なんか信頼できますよね、MVがいいと。気になってYouTubeにMVを観に来た人に、「あ、このグループは大丈夫だ」と思われてる気がする、ウチらは。

──この規模感のグループで、このクオリティでちゃんと作り続けてるところはそういないと思いますよ。

御堂莉 ありがたいです。