「キンスパ2024」での単独パフォーマンスを振り返る
──お三方のコラボ曲の話題に移る前に、「キンスパ2024」でのそれぞれの単独のパフォーマンスについても触れさせてください。まず宮野さんですが、DAY2のトップバッターとしてステージに登場した早々に約45秒もの間、微動だにしないという驚きの演出を見せました。
蒼井 痺れましたよね。
宮野 本当は10分ぐらい止まってやろうと思ったんですけど(笑)。
内田 フェスでやるには、さすがに攻め攻めですよね(笑)。
宮野 (笑)。アーティストとして10数年活動してきて、ステージングやマインドの面で培ってきたいろんな経験があるので、それを今回のフェスで“プラスアルファ”として表現できたらいいなと思って提案したんです。せっかくトップバッターを務めるのに、普通に登場するだけだったらもったいないじゃないですか。自分がこだわり続けているエンタテインメントを、僕のステージを観たことがないという人にも見せられるチャンスなわけで、MJ(マイケル・ジャクソン)リスペクトであの演出を入れさせてもらいました。結果的にいいインパクトを与えられたのかなと思います。
──また、内田さんは2018年にアーティストとして初めてステージに立ってから、6年分の成長を伝える絶好の機会になりました。
内田 はい。なので、今回はDAY1にデビュー曲「NEW WORLD」を披露しました。6年前、その場にいる人全員を内田雄馬にしてしまったことを、ここで改めて……。
宮野 お詫びの気持ちも込めて、もう一度内田雄馬にしてしまったと。
内田 6年ぶりに……(笑)。一方、DAY2では「NEW WORLD」を披露せず、MCでも6年前の発言について触れなかったんですね。そうしたら、あとでお客さんから「内田雄馬になれなかった」という声をいただきました(笑)。
宮野 これは、今後も内田雄馬にしていかないと。
内田 ということを、この2日間で学びました(笑)。
宮野 6年前はズッコケたけどね、「今なんつった?」って(笑)。
内田 当時、僕を受け入れてくださったお客さんがいたからこそ、あのMCがある種の旗印みたいなものに育っていけたのかなと。
蒼井 そうやってなんでも楽しもうとするお客様の姿勢って、本当にありがたいですよね。
宮野 「俺、内田雄馬になっちゃったよ!」とか言いながら帰るわけでしょ?
内田 その空気が「キンスパ」の魅力なのかなと思います。
──6年を経ていい形で伏線回収となりましたよね(笑)。蒼井さんに関しては、DAY1で七海ひろきさんとコラボした「Preserved Roses」が強く印象に残りました。原曲はT.M.Revolutionと水樹奈々さんによるものですが、今回蒼井さんは水樹さんの女性パートを歌っていました。
蒼井 「Preserved Roses」を歌うことが決まったとき、水樹奈々さんがキングレコードの三嶋(章夫)さんに「もちろん翔太くんは私のパートですよね?」と言ったらしいんです。でも、三嶋さんは逆のつもりだったらしくて、「その手があったか!」ということで、僕が奈々さんのパートを歌うことになりました。あと、2018年の「キンスパ」で台湾や上海を回ったときに宮野さんや雄馬くん、angelaさんと一緒に、奈々さんとT.M.Revolutionさんの「革命デュアリズム」を歌ったんですけど、実はそのときも僕は奈々さんのパートを歌ったんですよね。その流れもありつつ、今回は七海さんとのコラボでこのパートの分け方で歌ったのは面白かったです。「七海さんの歌声とすごくマッチするな」とステージ上で感じていましたし、リハーサルのときからすごく気持ちよく歌えました。
本当に一生に一度あるかないかぐらいの奇跡
──ここからは「キンスパ2024」で披露されたお三方のコラボパフォーマンスについて伺います。DAY2のステージで宮野さんが「カノン」「シャイン」をそれぞれ蒼井さん、内田さんと歌い、「オルフェ」では3人そろって歌唱。「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE」シリーズ主題歌の宮野さんの楽曲で感動的なコラボが実現しました。
宮野 「オルフェ」を3人で歌うということしか事前には予告していなかったんだよね。
蒼井 そうでしたね。
宮野 なので、「カノン」が始まったときにお客さん、「あれ、『オルフェ』って言ってなかったっけ?」ってパニックになったらしいです(笑)。でも、僕はありがたかったですよ。「うた☆プリ」という作品をたくさんの人に愛してもらったおかげで、主題歌がアニソンとして広く周知された。そしてその楽曲を後輩たちに一緒に歌ってもらえるなんて。「オルフェ」の仮歌を担当していた翔太とステージ上で一緒に歌えたことも含め、「そんなことあるんだ!」って自分でも驚きました。
蒼井 普通だったら実現しないことなんですよね、仮歌を歌っている人がアーティストご本人様とその楽曲を歌うということは。本当に一生に一度あるかないかぐらいの奇跡だと思うんですよ。仮歌を歌ったのは、蒼井翔太としてしっかり活動させていただく前のことで。緊張しながら仮歌を歌っていた自分が、今回のコラボを考えてくださったスタッフさんや宮野さんご本人のおかげで報われた感覚があるというか。「未来にはこんなことが待ってるんだぞ!」と、過去の自分に言ってやりたいぐらい奇跡的な瞬間でした。しかも、宮野さんご本人が「コラボするのであれば、このパートは翔太が歌ったほうがいい。絶対にみんな驚くし、喜んでくれるはずだから」と提案してくださって。僕たち後輩の輝かせ方をすごく考えてくださったんです。
宮野 やっぱり、コラボするんだったらサプライズがないとね。
蒼井 歌い出しはとても緊張しましたが、せっかくの宮野兄さんとのコラボですし、皆さんの中にあるハードルを大きく越えるためにしっかり歌わなきゃって、自分に言い聞かせながら挑戦しました。
──蒼井さんとの「カノン」から間髪をいれずに、内田さんは宮野さんと「シャイン」を歌唱しました。
内田 マモさんにとって「シャイン」がどれぐらい大事な楽曲かは理解しているつもりですし、そういう曲を歌わせてもらうことに対するプレッシャーも感じていたと思うんですけど、それ以上に一緒にステージに立てることへの喜びが大きかったです。あと「シャイン」は、「うた☆プリ」3期のラストでHE★VENSのメンバーが登場したときの始まりの1曲で。「オルフェ」に関しては、僕が養成所にいた時代に「うた☆プリ」がすごく流行っていて、養成所仲間とカラオケに行くとよく歌っていた思い出があります。そんな曲を、マモさんやしょーたんと一緒に歌わせてもらえることがすごくうれしかったし、「カノン」も……めっちゃ好きです。
宮野 歌いたかった?
内田 実は、この3曲の中で「カノン」が一番好きなんですよ。
宮野 残念だったね(笑)。
内田 いやいや(笑)。なので、個人的にもこの3曲は激アツなゾーンでした。
宮野 ありがとう。うれしいですね、そう言ってもらえるのは。
──「オルフェ」は皆さんの息のそろい方も含めすごくカッコよかったです。
内田 でも、ちゃんと3人そろって合わせられたのって、確か当日だけでしたよね
宮野 当日に少しだけだよね。そこで最後に僕がかき回しのコントを入れて、2人に付き合ってもらって。リハーサルのときにバンドの皆さんとも合わせたんですけど、楽しんでもらえましたね、宮野のコントに(笑)。
蒼井 曲を締めくくれないという(笑)。
内田 僕の合図でも、しょーたんの合図でも曲が終わらない(笑)。
宮野 で、僕がまたそこから引っ張る。その演出は事前に伝えていたんですけど、コントの間に(次に歌唱する水樹)奈々さんと岡咲(美保)さんが出てきちゃって。あれは申し訳なかったです(笑)。
内田 「あれっ……もう立っているなあ……」と。
蒼井 「なんだかごめんなさい」っていう(笑)。
宮野 いろんな人たちを巻き込んで、宮野エンタメに協力してもらいました。
──実は、皆さんがコントの打ち合わせをしている様子がメイキング映像に入っているんですよ。
一同 (笑)。
宮野 恥ずかしい……(笑)。
内田 バレてますね(笑)。
宮野 宮野エンタメは一見アドリブのようで、実は準備万端ですから。それが取り柄なので(笑)。
蒼井 僕と雄馬にとっては、宮野さんのライブで何度も目にしてきたものなので、「これ僕たちも一緒にやっていいんですか!?」という感覚でした。宮野さんからしっかりレクチャーを受けて3人でコントをやれて、本当に楽しかったです。
内田 「マモさん、さすがだな」って思いました。
蒼井 このコラボを経て、いつか宮野さんのライブ中のコントに、雄馬と一緒にちょっとだけ出させてもらいたいなと(笑)。張りぼての木とか岩とか、そういうのでいいので。
──(笑)。そのメイキング映像には、お三方がステージをはけたあとの様子も収められていますが、蒼井さんが感動して涙している場面が特に印象に残りました。
蒼井 何度も言いますけど、もう奇跡でしかないわけですよ。絶対に起こるわけがないと思い込んでいたくらいの奇跡なわけですから、感情がたかぶりますよね。それに加えて、自分の楽曲なのに後輩である僕たちの輝き方も考えてくださる宮野さんの心遣いにも感激しましたし、「僕はなんて幸せなんだろう」という思いを純粋に全身で感じました。大げさに思われるかもしれませんが、僕にとっては「このまま墓に入れるぐらい幸せだ」という、人生でとてつもない大きな瞬間だったんです。
いろんな人の原体験にアニソンが存在している
──「キンスパ」はそれぞれが歩んできた人生が交差する場所であり、だからこそ奇跡が起こる。すごく重みを感じさせる、特別な2日間でしたね。
内田 そういう特別な2日間になったのは、やっぱり先輩方が積み上げてきたものがあるからですよね。そこに僕らが集まってきて、どんどん次の世代たちへとつないでいった結果、今に至るという。各々にとっての原点のようなものに触れさせてもらえる機会でもあるし、そういう場所って当たり前にあるものじゃないと思うんです。
蒼井 ありがたいよね。
内田 これだけのアーティスト数がいるわけで、それをまとめてひとつのライブにするだけでも大変ですよ。運営してくれているチームへの感謝はもちろんですけど、何よりも忘れてはいけないのは、ライブを楽しみにして観に来てくれるお客さんがいてこそ成立するということ。そういう意味では僕らは人に恵まれていますし、すごく幸せな時間をもらっているんだろうなと思います。
蒼井 みんな「キンスパ」で披露された先輩方の楽曲を、絶対に聴いて育っているはずなんですよ。今や自分たちはステージに立ってみんなの大好きなアニソンを歌ってパフォーマンスして、夢や生きる活力、勇気、元気を与える側ですが、「キンスパ」は“あの頃”の自分に戻れる場所でもある。今後もキングレコードには新しい後輩がたくさん集まってくるでしょうし、今自分が感じていることを次の世代につないでいきたいですね。「キンスパ」はそういうことも実感できるイベントです。
宮野 僕、昨年の「キンスパ」の直前までミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」に出ていたんですね。そこでキャストの方に「『キンスパ』にマリ姉(國府田マリ子)出るんでしょ? 絶対に観に行くから!」と言われて、「やっぱアニソンってすげえな!」と感じました。いろんな世代のいろんな業種の人たちが、いろんなところでこんなにも楽しみにしているんだと思うと、そりゃあ気合いが入りますよ。
内田 いろんな人の原体験にアニソンが存在しているんですよね。「なんかこの曲好きだな」と音楽に対して思う最初のきっかけがアニメのオープニングやエンディングだったり、アニソンが音楽の入口になることも多いと思います。
宮野 「残酷な天使のテーゼ」なんて、一生ワクワクできるもん。もうさ、イントロの「ざー」の声だけでテンションが上がる体になっちゃってるからね。
蒼井 日本人のDNAに刻まれているレベルですよね。
宮野 間違いないね。
──最後の質問になりますが、この3人で再びコラボする機会があるとしたら、どんなことをやってみたいですか?
宮野 それぞれ全然違ったソロ活動をしているじゃないですか。僕は自分のライブをフルプロデュースしているし、翔太も雄馬も自分の個性を出して今やりたいことをやっているから、3人の色を集結させたコラボライブとか面白そうだよね。
内田 各々の個性を持ち寄って、ひとつのエンタメを作るという。確かに面白そうですね。
宮野 今回は僕の曲のコラボということで、宮野の色にみんなが寄せてくれたと思います。「キンスパ」の中での短い枠だったし、この3人ならもっとやりたいこと、もっとできることもあると思って。パフォーマンスの方法論をみんなで持ち寄って、それぞれのソロとは異なるステージを作り上げることに興味があります。
内田 なるほど。僕だったら体力系のライブとか……。
宮野 それは嫌だな……却下です(笑)。
蒼井 (笑)。
宮野 翔太にビジュアルを担当してもらうとかね。
蒼井 いいですね! ヘアスタイルとかメイクとか任せてもらえたらうれしいです。あと、3人ともステージでがっつり踊るタイプなので、ダンスパートとかを取り入れるのも面白そう。
内田 自分が普段やっていないことって相当いい刺激になると思いますし、それぞれが自分の新しい部分を見つけられると思うので、せっかくまたコラボするならがっつりやってみたいですね。
蒼井 楽器を弾くのもいいかも。僕はキーボードを弾けるので、雄馬にはギターを弾いてもらって宮野さんボーカルでバンドを組んで。
宮野 それも面白そう。腕立て伏せとか体力系じゃなければ、僕は大丈夫です!(笑)
プロフィール
宮野真守(ミヤノマモル)
2001年に海外ドラマ「私はケイトリン」の吹き替えで声優デビュー。以降、「DEATH NOTE」や「機動戦士ガンダム00」などで注目を浴び、数々の話題作で主演を務める。近年はアニメのみならず、映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズや「トップガン マーヴェリック」など多くの実写作品で吹き替えも行っている。俳優としては劇団☆新感線の「髑髏城の七人」Season月《下弦の月》」や、ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」にてディオ・ブランドー役を務め、テレビドラマへの出演も増えてきている。歌手としては2008年にシングル「Discovery」でキングレコードよりデビューを果たす。2009年から精力的に行っているライブではダンスを取り入れるなど、エンタテインメント性の高いパフォーマンスを展開。東京・日本武道館や埼玉・さいたまスーパーアリーナでの単独公演を次々に成功させてきた。
宮野真守 公式 (@miyanomamoru_pr) | TikTok
宮野真守公式 Mamoru Miyano Official (@miyano_mamoru_pr) | Instagram
蒼井翔太(アオイショウタ)
2011年に声優デビューし、「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズの美風藍役で注目を浴びる。2013年6月にミニアルバム「ブルーバード」でアーティストデビュー。声優として活躍しながら、アーティストとしても高い歌唱力と表現力が評価され、2016年3月には東京・日本武道館でワンマンライブを行った。その後もさまざまなアニメの主題歌を担当し、音楽作品をリリースしている。さらにブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」に出演したり、SHOW MUSICAL「ドリームハイ」で主演を務めたりと舞台でも活躍。2019年にテレビドラマ「REAL⇔FAKE」に出演するなど活躍の幅を広げている。
内田雄馬(ウチダユウマ)
「呪術廻戦」「WIND BREAKER」「シャングリラ・フロンティア」「MFゴースト」など数々の人気アニメに出演。2019年に「第十三回 声優アワード」で主演男優賞を受賞した。2018年5月に1stシングル「NEW WORLD」でアーティストデビュー。2018年9月に東京・東京ドームで行われたライブイベント「KING SUPER LIVE 2018」で初めてライブを行った。2019年7月に1stフルアルバム「HORIZON」をリリースし、同年10月より初のライブツアーを開催。2022年11月には東京・日本武道館で2DAYSライブを行い、2日間で約1万6000人を動員した。さらに2024年4月に2度目の日本武道館公演を成功に収めた。
内田雄馬 公式サイト -YUMA UCHIDA OFFICIAL WEB SITE-