新井の提案で実現した椎名林檎との「W●RK」
──ドーム公演で特に印象的だったのが、椎名林檎さんが登場した「W●RK」でものすごく盛り上がったあと、「):阿修羅:(」が始まっても客席のテンションがまったく下がらなかったことで。
常田 でも、椎名さんが出てくださった東京ドームだけ「):阿修羅:(」のボルテージがちょっと違った感覚はありました。東京ドームの「):阿修羅:(」はけっこうしんどかった。
勢喜 うん。しんどかった。
──観ている側としてはまったくそう感じなかったです。
常田 それはめちゃめちゃいいことだね。
勢喜 やってる側としては、椎名さんが登場したあとのギアの入れ方がね……。
常田 「):阿修羅:(」は今回ツアーのセットリストの中では一番盛り上がるところだったんだけど、東京はその前に「W●RK」がドカンと来たから立ち位置がちょっと変わっちゃって。その後のアジアツアーの韓国公演の「):阿修羅:(」は最高でしたよ。みんな歌ってて。
──そうだったんですね。椎名林檎さんのご出演はかなりのサプライズでしたが、どういう経緯があったんでしょう?
常田 誰が言い出したんだっけ?
井口 和輝じゃない?
新井 言いましたね。
常田 ファンだから?
新井 ファンだから(笑)。
勢喜 会いたかったんだね。
井口 会うにしては会場の規模がデカいな。
新井 ただ、その前に大希がちらっとそういうことを言っていて、俺が「そういえば前に、林檎さんをゲストに呼びたいって言ってなかったっけ?」と再提案したようなニュアンスだった気がします。まだ5大ドームツアーにするか、4大にするか、それとも3大にするかみたいな話し合いをしてる時期に大希から「林檎ちゃん呼ぶ?」みたいなひと言があったのを思い出して。東京ドームだったらお呼びできるんじゃないかというのもあったし、「W●RK」を披露する場が結局ないままだったのもあるし、ファンだからというのもあり。
勢喜 和輝、ちゃんとニマニマしてたしね(笑)。
新井 そう、ニマニマしてた(笑)。
──椎名林檎さんに出てもらう以上、「W●RK」だけが突出するステージにはならないという自信があるのかなと思いました。
常田 そういうことより、単純に椎名さんに出てもらってスベらせるわけにはいかないというプレッシャーがありましたね。こっちの畑に出てきてもらって嫌な思いをさせるわけにはいかない。でもそんなふうに気にする必要がなかったほどの盛り上がりだったのでホッとしました。
勢喜 で、椎名さんを迎えるためのリハは……。
常田 無駄に緊張感あったね。こっちのスタッフのピリピリ度が異常だった(笑)。
井口 舞監(舞台監督)がいつもの倍働いてた。
常田 林檎ちゃんが「ニンジン好き」と知ったスタッフが楽屋にあらゆる産地のニンジンを置いたらしい(笑)。林檎ちゃんから「ニンジンありがとうございました。おいしかったです」っていう連絡が来て「いったい何のこと?」って思った。
スタッフ 生のニンジンじゃなくてニンジンジュースです(笑)。
常田 ジュースか(笑)。俺、土が付いたニンジンだと思ってた。だから「どんな迎え方してんだろう?」と思ってたんだけどジュースなら安心した。
いい状態でクリエイティブな活動ができる環境を勝ち取れた
──常田さんの「覚醒したKing Gnuをお見せする」というポストには「来年中には拠点も動き方も今までとは大きく変わるから」というひと言も書かれていました。皆さんが拠点を海外に移すんじゃないかと推測する声も上がってましたが。
常田 そういう認識はなかったですね。
新井 でも「常田さんは日本からいなくなるんじゃないか」と思ってた人はいたかも。
常田 ああ、それでKing Gnuも止まるみたいな?
新井 そう。
──でも、そのポストをされたあとのインタビューで「ここ5年は休まなさすぎた。でも海外ではビヨンセが1年間リハ期間を設けてコーチェラに出るようなことをやっているわけで、今の自分たちのフローは見直す必要がある」というようなことを言っていて、もうちょっと余裕を持って丁寧に活動していくということだと受け止めたんですが。
常田 うん。そういうことですね。「ねっこ」以外にもKing Gnuのリリース予定はいくつかありますし、何かが止まるわけではないです。動き方って何か変わるかな?
新井 基本的には変わらないと思う。
常田 ナタリーに出るのも5年ぶりらしいですし、テレビにもほとんど出なくなっていて。年々そういう面での表立った活動は減らしてはきているんですけど。どうなの? メディアに出たい?
井口 全然出たくない。
常田 (笑)。基本的にはね。
井口 そう。必要とあらばって感じだけど。
勢喜 普通には出たくない。
新井 そういうことだよね。
常田 いわゆるメジャーのアーティストのリリースに伴う流れにはまったく乗っからなくなってきているんです。でも自分たちが面白いと感じたらテレビに出ることもあるでしょうし。今のKing Gnuはいい状態でクリエイティブな活動ができる環境を勝ち取れたと思っていて。そこで何を打ち出していくかということに対する責任感はより強くなってきましたね。表立った活動が減ったからこその期待感をお客さんから感じるので、それに応えていきたいっていう気持ちもあります。
──今後のビジョンについては4人で共有しているんですか?
常田 何も話してない。そもそもビジョンの話をしっかりしたことがない(笑)。
──常田さんが今後についてどう思ってるか気にならないんですか?
勢喜 (笑)。確かにそういう話はしたことないですね。
新井 ないね。
常田 でも、(和輝の)子供が生まれたりしてるから、こっちも無関係とは言えないし。
井口 背負ってはいるよね。和輝の子供を(笑)。
新井 すみません(笑)。
──King Gnuは結成当初から国内の市場を意識して活動してきたところがありますよね。ただアジアツアーでの「):阿修羅:(」のいい反応についてもそうですが、アニメ主題歌の影響もありKing Gnuの楽曲は海外でも多く聴かれるようになっています。
常田 アジアツアーでの各国の反応はうれしいサプライズでしたね。でも、日本である程度売れていたら、アジアでもそれなりに知名度があるから。それはKing Gnuに限らず。
──非アジア圏となるとまた全然違いますよね。
勢喜 想像はつかないね。やってみたさはあるけど。
新井 ライブをやってどんなものなのかを見てみる価値はあるかもしれないよね。
常田 確かに。俺らも試す意味はあるかもね。
公演情報
KING GNU LIVEHOUSE TOUR 2025 CLUB GNU EDITION
- 2025年2月12日(水)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年2月13日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年2月19日(水)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年2月20日(木)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年2月25日(火)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年2月26日(水)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年3月3日(月)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年3月4日(火)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年3月12日(水)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年3月13日(木)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年3月26日(水)東京都 東京ガーデンシアター
- 2025年3月27日(木)東京都 東京ガーデンシアター
プロフィール
King Gnu(キングヌー)
東京藝術大学出身のクリエイター・常田大希(Vo, G)が率いるミクスチャーバンド。常田、勢喜遊(Dr, Sampler)、新井和輝(B)、井口理(Vo, Key)の4人体制になったのち、2017年4月にバンド名をSrv.VinciからKing Gnuに改名した。2019年1月にアリオラジャパンよりメジャーデビューアルバム「Sympa」を発表。2月には日本テレビ系土曜ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」主題歌「白日」を配信リリースし、自身最大のヒット曲になった。10月より11月にかけて全国ツアー「King Gnu Live Tour 2019 AW」を開催した。2020年1月にアルバム「CEREMONY」を発表。2022年11月には初のドーム公演を東京ドームにて2日間にわたって行い、2023年5月から6月にかけては「CEREMONY」の集大成となるスタジアム公演「CLOSING CEREMONY」を大阪・ヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場)と神奈川・日産スタジアムで開催した。2023年11月に4枚目となるアルバム「THE GREATEST UNKNOWN」を発表。本作を携えて5大ドームツアーとアジアツアーを行い成功を収めた。2024年10月に新曲「ねっこ」を配信リリース。2025年2月からファンクラブツアー「KING GNU LIVEHOUSE TOUR 2025 CLUB GNU EDITION」を開催する。