鳥羽一郎×山川豊×木村竜蔵×木村徹二の木村ファミリー大座談会「この一家が演歌界を牛耳っていく」 (2/3)

兄と僕の性格を半分ずつ受け継いでるんですよ

鳥羽 テツの歌には、そんなに背伸びをしない自然体の感じがあるよな。仕事の取り方もそうで、あまり派手にではなく地道にやっている。まあ、それが演歌のパターンではあるんだろうけど、今は足元を固めている段階でもあるし、このまま進んでいけばいいのかなと思います。それと、なんていうかな……人様にかわいがられるタイプなのかな、という。

山川 そうだね。

鳥羽 例えば地方のキャンペーンは、普通は一度行ったら1年くらい間隔が空くものなんだけど、「来週またおいでよ」みたいに言われてたりね。本人もやる気満々で、「お客さんと触れ合うのが楽しい」って言うんですよ。これはちょっと、俺たちの感覚にはないものだよな。

鳥羽一郎

鳥羽一郎

山川 僕らが若い頃は、キャンペーンが嫌で嫌でね。

鳥羽 嫌でしょうがなかったよな。

徹二 わははは。

鳥羽 「また夜キャンかよ!」とかさ。

山川 「休ませてくれよ!」ってね。

鳥羽 テツはそうじゃないからね。これはもう性格なんだろうなあ。

徹二 性格でしょうね。人と触れ合うことがもともと好きなんです。

山川 たぶん、テツは兄と僕の性格を半分ずつ受け継いでいるんですよ。どっちかというと僕はコツコツやるほうで、兄はいきなりステージにドーンと出ていって観客を魅了してしまう。テツはその両方の性質を兼ね備えている感じがします。

山川豊

山川豊

竜蔵 僕から見ていてもそう思います。歌っているときはすごく本能的というか、理屈ではなく魂でぶつかっていく感じは親父譲りだと思うんですけど、ひとたびステージを下りたときの、共演者の方々とフレンドリーに接している感じは豊さんそのものだなって。

山川 ああ、なるほどね。

竜蔵 しかも意識的にそうしているわけじゃなくて、ナチュラルなんですよね。まさに2人を見てきたから培われたもの、血の中に入っているものなのかなと。鳥羽一郎と山川豊がフュージョンしたのが彼、みたいな感じです(笑)。

徹二 その感覚は自分でもありますね。歌っていて2人の血筋を感じることは多いというか、むしろそれしか感じてないです。声質は豊さんのまろやかで優しい成分をすごくいただいていますし、発声に関しては父の遺伝子を受け継いでるなって。あと、こないだ三山ひろしさんから指摘されて初めて気付いたんですけど、僕、歌ってるときに足をバタバタさせるクセがあるみたいなんですよ。それが親父とまったく一緒らしくて。

鳥羽 はははは。

徹二 「なんだその似方? 気持ちわる!」と思って(笑)。父のそのクセ自体も知らなかったですし、自分でも無意識だったので、これはもう遺伝という以外に説明できないですよね。そういう土台にプラスして、兄貴に歌手としての見せ方みたいなところを鍛えられてきたことで今の僕がある、という感覚です。

竜蔵 偉大な2人から受け継いだ素質が彼にはあって、その“使い方”を僕なりに助言してきたようなイメージです。言うなればピッコロ的な立ち位置ですね。

徹二 僕が孫悟飯で(笑)。

左から時計回りに、山川豊、木村竜蔵、鳥羽一郎、木村徹二。

左から時計回りに、山川豊、木村竜蔵、鳥羽一郎、木村徹二。

演歌界がもっと活性化してほしい

鳥羽 よく「息子の徹二さんに何かアドバイスは?」みたいなことを聞かれるんだけど、歌のことに関してはあんまりとやかく言わないんだよね。ああしろこうしろ言うのがあんまり俺は好きじゃないし、なんのアドバイスもないわけよ。テツの売り出し方に関しては竜蔵くんの作戦もいろいろあるだろうからさ、自分たちのやりたいようにやればいいのかなって思うし。

山川 デビュー曲の「二代目」、2曲目の「みだれ咲き」と王道演歌が2曲続いて、3曲目に演歌とは違う路線の「雪唄」を出したわけじゃない? 僕のごくごく個人的な意見としては「もう1曲演歌を聴きたかったな」というのはあったんだけど、これが今兄貴の言った“竜蔵くんの作戦”なわけでしょ。

竜蔵 そうですね。僕はやっぱり2人の演歌を聴いて育ってるんで、演歌界がもっと活性化してほしいんですよ。じゃないと、この素晴らしい文化がなくなっちゃいそうな気がしたんで。ただ、いきなり新しいものを提示するだけだと拒否反応が起こりやすいから、段階を踏んで少しずつ演歌とは違うエッセンスを加えていこう、というのはデビュー前から考えてはいました。この「雪唄」みたいなものが普通に「演歌だ」と受け入れられる世界観ができていったら、もう少し演歌という文化が縦にも横にも広がっていくんじゃないかなと。

徹二 兄貴は「木村徹二を売ろう」とか「自分が作曲家として名を上げよう」とか、まるで思っていない人なんですよ。俯瞰でものを見て、「演歌を絶やさないように」というところを根底に持ってやっている。

竜蔵 そういうことを普段から話し合ったりは全然していないんですけど、彼はおのずと汲んでくれているんですよね。

徹二 僕はその大義を果たすための駒の1個でいいのかなと思っていて……って言うと否定的に捉えられちゃうことも多いんですけど、兄貴の作る曲には本当に世の中を変えるパワーがあると思うんです。「僕以外の人が歌ったらもっと売れる可能性もあるのかな?」と思ったりもするんで、曲の持つ力を最大限引き出せる歌手にならないといけないなっていう。その結果として演歌界をいい方向に変えられる可能性があるなら、僕はそのためのパーツの1つとして機能できればいい、という考え方ですね。

竜蔵 僕の考えていることを彼が肉体的に実現してくれるという、合体ロボのようなシステムで(笑)。親父と豊さんを見ていても、全然キャラクターも芸風も違うのに、すごく通じ合っているものがあるのをよく感じるんですよ。それに近いことが僕ら兄弟の間でも起きているので、なんか不思議な感覚はありますね。