曲を通じてテレパシー

──「25時の月」のPVはBLをモチーフにした物語で衝撃のラストも印象的ですが、ごとうさんはこのコラボを最初に聞いたときどう思いました？

ごとう　とにかく新鮮だなって。イチから自分で作るより縛りがあるぶん、ちょっとややこしいパズルを解くみたいで楽しいんですよ。縛りっていうのは、もちろん「25時の月」から着想を得たものっていうのと、なんとなくのストーリーの狙いみたいなものもリクエストを聞いていたので。あらかじめマスト事項が与えられてるってところで、普段とは違うアプローチの仕方が楽しかったですね。

──ストーリーの狙いというのは具体的にいうと？

ごとう　「わかりやすくなくて、最終的にフタを開けてみるとそういうことだったのか！ってなるような、ちょっと謎があるようなものがいいです」って言われました。でも自分の中ではかなりストレートな作品になったと思うんですよ。小説で書いてたら、あと2～3回はヒネってたかも。それは文章だからできることだったりするんですけど（笑）。

──先ほど「歌詞の主人公が繊細」とおっしゃいましたが、やはりそのへんも意識されましたか？

ごとう　たぶん普通は曲の山場に一番言いたいことを持ってくるじゃないですか？ 「25時の月」もサビの「誰より君を愛してる」が肝のセリフだと思うんですけど、私の脚本ではむしろ「主人公がいかに繊細か」ってところがメインだなと。背伸びもできないし、ありのままの自分は微妙なんだけど、たまたま出会った相手が「それでもいいんだよ」って言ってくれたっていう“有り難さ”というか、奇跡的な瞬間を切り取れたらなって思いました。

木村　僕、ごとう先生に脚本を書いていただけることになって、実は自分なりにどんなふうになるんだろう？って想像してた部分があったんです。それが実際の脚本のまんまだったというか、自分のイメージ通りすぎて。イントロが鳴った瞬間、夜道をサラリーマンの男が走るっていう漠然とした画なんですけど、それがドンピシャだったんですよね。

ごとう　本当ですか？ すごいですね。曲を通じてテレパシーが（笑）。

木村　おこがましいですけど、もしかしたら世界観も通ずるものがあるのかなって。

ごとう　ですね。すごい。私が歌詞のキーワードで引っかかったのは月なんですけど、「今夜の月のように痩せ細った心」という部分からいくと、映像に登場するのはこれからどんどん欠けていく細い月なんだろうなと。そんな夜空からの連想で、物語のフックとして獅子座流星群も盛り込みながらストーリーを展開していきました。

木村先生、大ヒット！

──PVにはなんと木村さんも先生役で出演されています。ごとうさん、これは最初から狙っていたんですか？

ごとう　一応の流れとしては、スタッフさんから「木村は演技未経験なのでちょこっとだけ出してもらえたら」という話だったんですけど、書いてみたら意外と木村先生が活躍しちゃって。木村先生、大ヒット！ 私の周りでも「一番カッコいい！」って評判よかったですよ？

木村　本当ですか？ でも僕はこうやってPVで演技するのが初めてだったし、出演が決まってからずっとモヤモヤした時間を過ごしていたというか……。

ごとう　モヤモヤの正体は？

木村　単純に、期待されるような動きができるのか？っていう不安ですね。

ごとう　でもキャラが立ってたというか、眼鏡と白衣もお似合いでしたよ。

木村　恐縮です。でもホント、ごとう先生や監督には木村竜蔵という素材をうまく調理していただいたなって。

──PVの予告編を観たファンや知り合いからは何か反応がありました？

木村　「先生」って言われます（笑）。

ごとう　あははは。そもそも木村さんを高校教師にしたのは、舞台を学校に設定したときに当てはまるのが先生しかなかったっていう単純な理由なんです。さすがに高校生はマズいかなって思ったので（笑）、ある意味、消去法というか。なのにフタを開けたら一番ハマってたっていう。私からしたら逆転満塁ホームラン的な気持ちでしたよ。

木村　ホントですか？ これから眼鏡を持ち歩かないと（笑）。