横山健(Ken Yokoyama)×難波章浩(NAMBA69)|Hi-STANDARDのその先へ

2000年にHi-STANDARDが活動休止をしたのち、横山健(G, Vo)はKen Yokoyama、難波章浩(Vo, B)はNAMBA69と、それぞれ異なるバンドを結成して互いに走り続けてきた。その2人が、Hi-STANDARDの再始動を経てスプリットCDを完成させた。

音楽ナタリーでは本作の発売に際し、横山と難波の対談を実施。今作のリリースに際し、初めて対談を行ったという2人に、それぞれのバンドの現在のモードやHi-STANDARD再始動の手応えなどをたっぷり語り合ってもらった。

取材・文 / 大野俊也 撮影 / 西槇太一

Ken Yokoyama / NAMBA69「Ken Yokoyama VS NAMBA69」
2018年6月6日発売 / PIZZA OF DEATH RECORDS
Ken Yokoyama / NAMBA69「Ken Yokoyama VS NAMBA69」通常盤

[CD]
1944円 / PZCA-83

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Support Your Local / Ken Yokoyama
  2. Malibu Beach Nightmare / Ken Yokoyama
  3. Come On, Let's Do The Pogo / Ken Yokoyama
  4. LIVE LIFE / NAMBA69
  5. PROMISES / NAMBA69
  6. SONG 2 / NAMBA69

Ken BandとNAMBA69をバッチリやってると伝えたい

──今回のスプリットのアイデアはいつ、どのような感じで浮かんだのですか?

横山健 Hi-STANDARDのアルバム「THE GIFT」(2017年10月リリース)を録り終わって、ツアーの準備をしている頃かな。それかツアーに突入した頃か、正確な時期は定かじゃないんですけど。ハイスタを動かしながらも僕は僕でKen Bandのことを一生懸命考えたんですよ。2017年いっぱいはHi-STANDARDの活動があって、その間Ken Bandはやらないわけだから「2018年にKen Bandの活動を再開するときに、どこから取りかかろうか」と考えたんですね。それはそれでけっこうプレッシャーだったんですよ。でも普通のことはしたくないな、何か刺激的なことはないかなと思ってて。それでハッとひらめいたんですよ。「難ちゃんとスプリットしよう!」って。

──それを難波さんにはすぐに言いました?

横山健

横山 たぶん何日か転がしてから、難ちゃんに電話して。

──それを受けた難波さんは?

難波章浩 健くんとはハイスタのリハーサルでけっこう会ってたのに、わざわざ電話が来たから「なんだろうな?」と思って出たんですよ。そしたら「スプリットやらない?」って。いきなりブッ飛んでるじゃないですか。これからハイスタのツアーが始まろうとしてるのに。ツアーのセトリとか、これからのハイスタのプランのことかな?と思ったらその先のことだったので、「エーッ!?」ってなったんですよ。でも健くんは冗談を言う人じゃないし、真剣な話だったんで。健くんは長期的な目線で物ごとを見れる能力を持ってる人だと、俺は前々からわかってたので、とても意味のあることなんだろうなと思いました。

──健さんはKen Bandをどうするのか考えていたとのことですが、Hi-STANDARDの「THE GIFT」とそのあとのツアーも含めた流れとして考えていたんですか?

横山 そうですね。軽い言葉になっちゃうんですけど、すごく辻褄が合っちゃったんです。ハイスタの「THE GIFT TOUR」をしっかりキメて、そのあとで俺らはそれぞれKen YokoyamaとNAMBA69っていうバンドをバッチリやってるぜって伝えたくて。もちろん、それぞれライブをやって作品を出してそれをアピールしていけばいいんだろうけど、まとまってやったらもっと強えじゃんって思ったんです。

難波章浩

難波 健くんが今までよく言ってたのは、ハイスタの活動とKen Bandの活動は一緒にできない、共存できないってことだったんです。だから、健くんがスプリットやらない?って言ってきたのは、俺からすると真逆な気がしちゃったんですよ。

横山 なるほどね。

難波 でも俺も話を聞いてパッと辻褄が合っちゃって。さすがだなと。そこでスプリットの相手に俺たちを選ぶって、とてつもないアイデアマンだなと思いましたね。

──確かにすごいアイデアですよね。

横山 たぶんね、お客さんの中には「結局ハイスタの流れかよ!」って思う人もいると思うんですよ。でも僕からしたらむしろ真逆で。ハイスタの活動のあとで、それぞれが全力で、ハイスタの活動休止中に始めたバンドをやる。この2バンドの音楽をぶつけ合ったら、きっとハイスタから入ってきた人も「あ、こういう活動してるんだな」ってことを、言葉で「僕たちこういうことをしてます」って言う以上に理解してくれると思ったんですよ。口で言うよりも作品を作ったほうが面白いじゃん、ってひらめいちゃったんですよね。もっと具体的に示せるじゃんって。

ひと皮むけつつあるKen Yokoyama

──スプリットをやろうと決まった段階で、曲を3曲ずつにするアイデアはすでにあったんですか?

横山 本当は何曲でもよかったんですけど、「THE GIFT TOUR」が終わってすぐにやりたかったから、3曲ぐらいがお互い限度だろうなと思って。

──今回の新曲は前から作っていた曲ですか? それともスプリット企画を受けて作ろうと思った曲?

横山 僕らは企画を狙って作ったわけじゃないですけど、「THE GIFT TOUR」が終わってから作った曲ですね。

難波 俺らも完全に「THE GIFT TOUR」のあとです。オリジナルのデモは前から何となくあったんですけど。カバーはあとからですね。「健くんのことだからこの曲かなあ」とか推測はしたけど(笑)。

横山 Ken Bandは前のアルバム(2015年9月リリースの「SENTIMENTAL TRASH」)からけっこう音楽性が変わってきているところなんですね。3年ぐらいかけて、今ひと皮剥けようとしている時期なんです。だから、その時期ならではの面白い楽曲ができたなあと思って。

──新しい音楽性というのは言葉で表現すると?

横山 意外とルーツミュージックに忠実にやってますね。今回のオリジナル2曲は、片方はスカソウルみたいな曲で、もう片方はUSコアなんですよ。それをKen Bandなりに消化するとどうなるか。今まではたぶん無意識にメロディックパンクってものに縛られてたんだと思うんですよ。「Ken Bandらしくない」とか。そのKen Bandらしさとは何か?ということを、一から見直してる感じですね。

──何かきっかけはあったんですか?

横山 やっぱり箱モノのギターを弾き始めてからですね。それまで普通に好きで聴いてたロカビリーとかロックンロールの聴こえ方が変わってきたんですよ。これは僕がやることじゃないと思ってたことも、YESになってきちゃったんですよね。それを僕以外の3人のメンバーに「俺、こうしたいんだ」ってミーティングで話して、音でも示して。それで作ったのが「Sentimental Trash」で。今もその延長線上にあるし、たぶん次に作るアルバムもそういう方向になっていくんじゃないかなと思いますね。で、メロディックパンクはハイスタが作ったものだから、もちろん自分の要素にあるんです。だから当たり前のようにそういう曲はできますよ。でもそれと同じように、当たり前のようにロックンロール、ロカビリー、スカ、ソウル、ブルース、何でも出していいじゃない?って、今は思うんですよね。

難波 ハイスタだって別に「メロディックパンクをやるぞ!」って言ってやってるわけじゃないし。

横山 そうだよね!

難波 やっぱりKen Yokoyamaっていう世界観がバンドのオリジナリティになってるわけだから。俺、最初にKen Bandの今回の3曲を聴いたとき「ウゲッ」と思って。Hard-Onsとか思い出した。

横山 うわあ(笑)。

難波 聴いただけで衝撃で。何でこうなっちゃったのかわからんない感覚があって。これはヤバいな、オリジナリティあるなって思った。

横山 Hard-Ons来た?(笑) うれしいな。

難波 最初に聴いたとき、音が立体的だったんだよね。マジで焦った。アレンジ、ハンパないですよ。マジで変ですよね。

次のページ »
ko-hey加入以降のNAMBA69

公演情報

Ken Yokoyama VS NAMBA69 Tour
  • 2018年6月22日(金)宮城県 Rensa
  • 2018年6月24日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2018年7月4日(水)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2018年7月5日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2018年7月10日(火)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2018年7月12日(木)大阪府 なんばHatch
  • 2018年7月13日(金)愛知県 DIAMOND HALL
Ken Yokoyama(ケンヨコヤマ)
Ken Yokoyama
1969年10月1日生まれ。Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリスト。2004年にソロアーティストとしての活動を開始し、Ken Yokoyama名義によるアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした。Ken Bandとしてライブ活動を開始してからも、2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月に初の東京・日本武道館公演を実施したほか、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で実施した。2011年にはHi-STANDARDのライブ活動再開や「AIR JAM 2011」開催など、ソロ以外の活動も続々展開。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。2013年11月にはドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が全国60館の劇場にて公開され、2014年9月に「Stop The World」を収めたCDが付属したDVD「横山健 -疾風勁草編-」を発売した。2015年7月には8年4カ月ぶりとなるシングル「I Won't Turn Off My Radio」をリリースし、テレビ朝日系「ミュージックステーション」に初出演。大きな話題を呼んだ。9月にニューアルバム「Sentimental Trash」を発表し、同月より年をまたいだ全国ツアー「Sentimental Trash Tour」を開催した。2018年6月にNAMBA69とのスプリットアルバム「Ken Yokoyama VS NAMBA69」をリリース。
NAMBA69(ナンバシックスティーナイン)
NAMBA69
2010年3月からソロ名義で活動を行ってきた難波章浩(Vo, B / Hi-STANDARD)が2013年3月にK5(G)、SAMBU(Dr)と結成したパンクバンド。2014年6月にデビューシングル「MELODIC PUNKS NOT DEAD!!!」、同年12月に1stアルバム「21st CENTURY DREAMS」をリリースした。2016年6月にko-hey(G, Cho / ex. ARTEMA)が加入し、4人体制に。2016年に株式会社ジャパンミュージックシステムと共同で新レーベル「POP SPEED RECORDS」を設立し、2017年4月にミニアルバム「HEROES」を発表した。2018年6月にKen Yokoyamaとのスプリットアルバム「Ken Yokoyama VS NAMBA69」をリリース。