音楽ナタリー Power Push - KEMURI
伊藤ふみおがワールドツアーで見つけた「今、歌うべきこと」
スカのカッティングがなくてもKEMURIのスカパンクに
──今作もレコーディングはアメリカで?
はい、いつも使ってるコロラドのスタジオです。何度も行ってるし、安心してレコーディングはできました。ただエンジニアの要求も高いので、毎回ボーカル録りが大変で。
──ボーカル、よかったです。特に「SAKURA」はスピード感があるけど音に乗っかっていくんじゃなくて、しなやかさとグイッと道筋を作っていくような太さがあって。
いつもはエンジニアが「OK」って言ったものは、もう1回歌いたいとはほとんど思わないんだけど、今回は何度も歌った。「SAKURA」は特に。「SAKURA」の歌詞を作るときに、速いテンポに日本語の歌詞を乗せるにあたって、濁点のない言葉を使って書いてみようと思ったんですよ。
──なるほど。
それをね、チャレンジしてみようと。
──力強さがありながらとても滑らかなのは、濁点がないからか。
気が付く方がどれくらいいるかわからないけど、聴いた感じはほかの曲と確実に違いますよね。
──違います。あと今作は力強さを感じると同時に、スーッと胸に入って染み渡っていく感じがするんですよ。そのへん、音像などの意識はしていたんですか?
毎回「今作はこういうサウンドでいこう」とか「こういう感じの曲調でいこう」とか、あまり話し合いはしないんです。曲を作る人間がカッコいいと思って持ってきたものを、KEMURIの音楽として世の中にぶつけるということにベストを尽くす。それは変わりないんですけど、今作は日本語の曲が前作より多いし、日本語と英語が混ざっているような歌詞もあるし、それで印象は違うかもしれませんね。テンポも前作に比べると少し抑え気味の曲も多いかな。例えば「DIAMOND」とか「Dancing in MOONLIGHT」とか……「SHOUT」もそうですね。この3曲はブラッドが作ってきた曲なんですけど、ブラッドはスカのカッティングが入ってない曲も作ってくる。でも彼の中でのスカパンク感から外れてないんだろうし、こういう形の楽曲でチャレンジしているんだなと思います。
曲を作ることでハッピーエンディングにしていきたい
──「DIAMOND」のイントロのホーンが印象的でした。風景が目に浮かぶようで。
今回のホーンアレンジはすべて、須賀裕之(Tb)がやっています。彼が作品全部に絡むのは実は初めてで。
──あ、そうか、今作はサポートメンバーだった須賀さんと河村光博(Tp)さんが正式メンバーになって初のアルバムなんですね。
実はそうなんですよね。前回もレコーディングには参加しているんだけど、正式メンバーとしては初。須賀くんはSMAPのライブでの演奏経験もあるし、いろんな現場を経験してるから、僕たちの知らない世界を知っている。そういうところから持ってきてくれるものもあるんだと思います。
──「こういう音をKEMURIでやりたい」って思ったんでしょうね。
須賀くんは一番年下、ずっと年下なんだけど(笑)、例えばT(田中‘T’幸彦 / G)が作った曲のホーンのアレンジで、Tと言い合ってたりしてね。すごくいいことだなって。実際すごくよくなったし。ミッチー(河村)も若くしてPOTSHOTに入っていろんな場所でやってきた人だし……マイペースなんだけど(笑)。コバケン(コバヤシケン / Sax)含めて、ホーン隊のまとまり具合はこの1年でググッとよくなってます。ホーンだけじゃなく全員が、おのおののいろんな経験をKEMURIという場で愛を持ってアウトプットしている。今作は本当にいいものができたと思う。
──「My Best Friend」は亡くなった森村亮介さん(元Tp。2003年にツアー中の事故により逝去)のことが歌われているんでしょうか?
亮介のこともそうなんですけど、10年以上前に亡くなった、フランク(・ナヴェッタ)っていうDescendentsの初代ギタリストがいて……レコーディングのとき、フランクのことをリーダーのビル・スティーブンソンと話したんです。ビルが「がんばったけど、(フランクを)救ってやれなかったな」って。その話を聞いて「自分にも手助けしていたようでできてなかった人たちがいたな」って思ったんですよ。誰が何をできるってわけじゃないんだけどね。何をやれば救ったことになるのかわからないし。でもビルは「フランクと作った曲を今でもライブでやるんだ」って言ってて、「そうか。僕たちもそういう歌を作って、ずっと歌っていけたらいいな」って思った。「My Best Friend」は平谷庄至(Dr)が曲を作ったから、庄至くんに歌詞を見せて「こういうテーマで、残念ながらハッピーエンディングじゃないんだけど、でも曲を作ることによってハッピーエンディングにしていきたいっていう思いを込めた歌詞なんだ」って話をして。そしたら庄至くんの中で火が付いちゃったらしく、レコーディング中に急にメロディを変えたいとこがあるって言い始めて……新しいメロディを覚えるのがすごく大変だった(笑)。最後に入ってるウインドチャイムはエンジニアが急に言い出して。彼はマッチョなデカいヤツで、ウインドチャイムなんか全然似合わないんだけど、入れようって言い張ったりして……面白かったですね。
──音楽ができることって、今おっしゃった、「ハッピーエンディングじゃないけど、曲を作ることによってハッピーエンディングにしていきたい」ということなのかもしれないですね。
生きていくってことは、そういうことなんじゃないかなと思って曲を作ってるよ。
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- ニューアルバム「FREEDOMOSH」 / 2017年3月1日発売 / ONECIRCLE
- CD+DVD / 4968円 / CTCD-20052/B
- CD / 3240円 / CTCD-20053
CD収録曲
- THUMBS UP!
- GO! GO! GO! GO! GLOW!
- CHOCOLATE
- DIAMOND
- My Best Friend
- SAKURA
- AWE
- SPIRAL
- Dancing in MOON LIGHT
- RAINDROP
- SHOUT
- サラバ アタエラレン
DVD収録内容
- THUMBS UP! -MUSIC VIDEO-
- サラバ アタエラレン -MUSIC VIDEO-
- I am proud(Bristol,UK)
- SUNNY SIDE UP!(Sheffield,UK)
- Crappy Go Happy(Birmingham,UK)
- Dancing in MOON LIGHT(London,UK)
- HATE(Atlanta, US)
- PMA (Positive mental Attitude)(Orlando,US)
- New Generation(St.Petersburg,US)
- サラバ アタエラレン(Tokyo,JP)
- Heart Beat(Tokyo,JP)
- Ato-Ichinen(Tokyo,JP)
KEMURI Tour 2017「FREEDOMOSH」
- 2017年4月1日(土)長崎県 DRUM Be-7
- 2017年4月2日(日)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年4月7日(金)石川県 Kanazawa AZ
- 2017年4月8日(土)長野県 Sound Hall a.C
- 2017年4月14日(金)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2017年4月15日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年4月22日(土)滋賀県 SHIGA U★STONE
- 2017年4月23日(日)兵庫県 神戸VARIT.
- 2017年5月13日(土)北海道 CASINO DRIVE
- 2017年5月14日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年5月19日(金)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2017年5月20日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2017年5月21日(日)千葉県 千葉LOOK
- 2017年5月26日(金)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2017年5月27日(土)宮城県 Rensa
- 2017年5月28日(日)岩手県 Club Change WAVE
- 2017年6月2日(金)大阪府 なんばHatch
- 2017年6月10日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年6月16日(金)新潟県 新潟LOTS
- 2017年6月17日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2017年6月24日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2017年7月1日(土)香川県 DIME
- 2017年7月2日(日)愛媛県 松山サロンキティ
- 2017年7月9日(日)東京都 新木場STUDIO COAST
KEMURI(ケムリ)
1995年結成のスカコアバンド。「P.M.A(Positive Mental Attitude/肯定的精神姿勢)」をバンドの哲学として、活動を展開する。当初からアメリカのレーベルと契約していたため、「アメリカからの逆輸入バンド」として話題となった。ハードコアやパンク、レゲエといった要素を取り入れたサウンドが特徴で、日本のスカコアシーンの代表的存在。2007年12月9日の東京・Zepp Tokyoでのライブを最後に解散したが、2012年9月、Hi-STANDARDからの呼びかけに応じ、「AIR JAM 2012」にて約5年ぶりに復活を果たす。2013年1月、南英紀(G / 現 Ken Yokoyama Band)の脱退と初代ギタリスト・田中‘T’幸彦の復帰を発表。その後、ツアーや音源リリースなどを重ね、精力的に活動をする。結成20周年を迎えた2015年6月にベストアルバム「SKA BRAVO」を、7月に11thアルバム「F」をリリース。同年10月にサポートメンバーだった河村光博(Tp)と須賀裕之(Tb)が正式加入した。2016年6月に13年ぶりのシングル「サラバ アタエラレン」を発表し、2017年3月にニューアルバム「FREEDOMOSH」をリリースする。