ナタリー PowerPush - KEI

人気ボカロPとサニーデイ田中貴が共闘する理由

ロックバンド・NO LEAF CLOVERのギター&ボーカルとしても活躍するボーカロイドプロデューサー(ボカロP)・KEIがメジャー1stアルバム「dialogue」をリリースした。今作を制作するにあたってKEIはプロデューサーにサニーデイ・サービスの田中貴(B)を起用。さらにオカモト“MOBY”タクヤ(Dr / SCOOBIE DO)、原“GEN”秀樹(Dr / SCOTT GOES FOR、NORTHERN BRIGHT)、西浦謙助(Dr / アゼル&バイジャン、進行方向別通行区分)、細野しんいち(Key / ex. magoo swim)というプレーヤー陣を迎え入れ、自らのボーカロイドナンバーのバンドアレンジバージョン9曲に、新録曲3曲を加えた全12曲のアルバムを完成させている。

ボーカロイド“プロデューサー”があえてプロデューサーを立てたその意味とは? 邦楽ロック屈指のプレーヤー陣は人気ボカロ曲をいかに料理したのか? 今回ナタリーではそんな話を聞くべくKEIと田中の対談をセッティングしてみたのだが……。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類

 
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「マクロス7」に憧れてロックにハマる

──KEIさんがほかのボカロPともっとも違う点といえば、やはりNO LEAF CLOVERという現役で活動中のロックバンドのフロントマンであることだと思うんですよ。なので、まずはボカロP以前のキャリアから教えてください。ロックにハマったきっかけは?

KEI

KEI 表向きはMr.Childrenって言ってるし、もちろんウソではないんですけど、子供の頃「マクロス7」っていうアニメの劇中に出てくるFire Bomberっていうバンドにすごく憧れて(笑)。それが本当のルーツですね。

──じゃあ当時から、比較的アニメやゲームと親和性の高いニコニコ動画的な文化になじむ素養はあった?

KEI ええ。わりとオタク気質は強かったですし、親がパソコンが好きだったんですよ。小さい頃からPCに自由に触れる環境ではあったので、ネットやDTMにも抵抗なく入れたんだろうな、とは思ってます。実際ギターを弾き始めた頃は、ネットでミスチルやゆずのコード譜を検索していましたし。

──それっていつ頃ですか?

KEI 小学校6年生か中1くらいですね。家にフォークギターがあったので、そのコード譜とコードブックを見比べつつ練習してました。

バンド結成の理由は「意識の低い学生」だから

──初めてバンドを組んだのは?

KEI ちゃんとしたバンドを組んだのは大学のサークルで、ですね。

──12歳からギターを触ってはいたけど、それまでは1人で演奏していたんですか?

KEI 当時ヤマハがやっていた「TEENS' MUSIC FESTIVAL」に友達何人かと出てみたりはしたんですけど、高校が富山のクソ田舎にある学校だったので、軽音部みたいなのはなかったんですよ。でもやっぱり音楽をやりたかったので「どこでもいいから東京に出たい」っていう志望動機で大学を選んで。すごく意識の低い大学生でした(笑)。

──最近のネットの流行語で言うところの(笑)。

KEI でもホントに意識の低い学生だったんですよ。5年も通っちゃいましたし(笑)。

──その大学のサークルではどんな曲を?

KEI 曲自体は今とあまり変わらない感じ。それこそ「下北系」っていう感じのオリジナルのギターロックを作っていました(笑)。で、2007年にNO LEAF CLOVERを結成して、今のメンバーが揃ってちゃんと活動を開始したのが2008年。ニコニコ動画に「スターシップ」っていうボカロ曲を投稿したのが2008年の2月なので、ほとんど同時期ですね。

ボツ曲を供養したかった

──なぜ現役のバンドマン、しかもボーカリストがボカロ曲を?

KEI 最初はバンドのボツ曲の供養のつもりだったんです。さっきもお話したとおり、ネットの文化みたいなものに抵抗はなかったので、ニコニコ動画もサービスが始まった頃から好きでしたし、その流れでボカロもけっこう早い段階から知っていたので、曲が誰にも聴かれないまま眠らせておくのはもったいないからって。そんな感じで始めたわりにボカロP歴はもう5年。古参というか、もはや老害です(笑)。

──あはははは(笑)。当時の反響っていかがでした?

KEI まだランキングなんかが細かく整備されていたわけじゃないので、詳しい順位や再生数はよくわかってないんですけど、最初から聴いてくれる人がたくさんいたことは覚えてますね。「ライブハウスは閑散としているもの」っていうのが当たり前というか、そもそもライブハウスにはお客さんなんて来てくれなかったから、「いい曲じゃん」ってコメントをくれる人がスゲーたくさんいたっていうのはホントにうれしかったです。

──そういうネットでの反響ってバンドの動員にフィードバックされるものなんですか?

KEI されますね。今もそうなんですけど、ボカロで僕を知って「あっ、バンドでライブとかやってるんならちょっと観に行ってみようか」って言ってくれる人もたくさんいますし。あと、最近はボカロPがやっているライブイベントみたいなものもたくさんあって、実際僕も去年8月の「ボカニコナイト -VocaNicoNight-」や今年1月の「ドキ生R」といったイベントにNO LEAF CLOVERとして出て、ボカロ曲を歌ってますし。ネットをきっかけにいろんな場所でアウトプットできている感じはありますね。

──特にKEIさんの場合、ほかのボカロPに比べて楽曲をステージでアウトプットしやすいからお客さんの反応が直にフィードバックされやすいっていう側面もありますよね。

KEI ああ、そうですね。

──バンドでは採用されなかった曲をボカロバージョンに仕立てることからPとしての活動を始めているのが象徴的な話だと思うんですけど、ニコ動で発表しているボカロ曲は基本的にはKEIさん言うところの「下北系」というか、2000年代以降のモードを取り入れた最新型のギターロック。みんなが歌いたくなるような楽曲が中心ですもんね。

KEI 特にここ数年、そういう曲が増えている印象があるんですけど、ボカロ曲っぽいボカロ曲ってあるじゃないですか。

──メロディラインの音域が広い上に符割が細かくて、しかもBPMも速い。で、歌詞がファンタジックだったり、物語仕立てだったりする、いかにもボカロらしい曲のことですか?

KEI ああいう感じの曲、作ろうと思ってもぜんぜんうまく作れないんですよね(笑)。

ニューアルバム「dialogue」 / 2013年2月20日発売 / GENEON UNIVERSAL ENTERTAINMENT
初回限定盤 [CD+DVD] / 2625円 / GNCA-1346
通常盤 [CD] / 2100円 / GNCA-1347
CD収録曲
  1. dialogue
  2. タワー
  3. 走れ
  4. 隔離病棟
  5. 声で言葉で
  6. アイラビユーアイニジュー
  7. Hello, Worker
  8. ピエロ
  9. mercy
  10. Neverland
  11. ユートピア
  12. エコー
初回限定盤DVD収録内容
  • Dialogue PV
  • Interview about "dialogue"
KEI(けい)

ロックバンド・NO LEAF CLOVERのハヤシケイ(G, Vo)のソロ名義。2008年2月、ニコニコ動画にボーカロイドナンバー「スターシップ」を投稿したところ、瞬く間に注目を集め、以来、ギターロックを基調としたアップリフティングながらもどこかシニカルな楽曲を立て続けに発表。ニコニコ動画ユーザーを中心に高い人気を獲得する。2013年2月にアルバム「dialogue」にてメジャーデビュー。

田中貴(たなかたかし)

1994年、メジャーデビューの3ピースバンド、サニーデイ・サービスのベーシストとして活動する傍ら、タルトタタンのサポートベーシストや、声優ユニット・ワンリルキスのプロデュースなども手がける。また2013年2月にはボーカロイドプロデューサー・KEIのメジャー1stアルバム「dialogue」のプロデューサーも務めた。