ナタリー PowerPush - 河野マリナ

自称「ややこしい子」“河野監督”の考える強力打線

一生懸命で全力であることがもたらすかわいらしさ

──そして2011年にデビューして3枚のシングルをリリース。今月には1stアルバム「First Touch」も発表しました。そのアルバムを聴いていて思ったんですけど、河野さんってヌケのいいギターサウンドに乗せてグッドメロディを歌うのがホントに似合いますよね。

ありがとうございます!

──で、その楽曲群を制作しているのはMONACAのクリエイター陣。なんだけど神前暁さんと高田龍一さんが今年手がけた楽曲には上坂すみれさんの「七つの海よりキミの海」という、80年代ニューウェーブとプログレを足したまんま2で割らない、みたいな1曲があって。田中秀和さんは……。

「ニャル子さん」(笑)。

──ええ(笑)。アニメ「這いよれ!ニャル子さんW」の「恋は渾沌の隷也」という、これまたストレンジなダンストラックを作っていて。でもそんな彼らが河野さんにはさわやかでストレートな、いわゆる「いい曲」を書いている。MONACAの面々の目には河野さんはどういう人に映ってるんだと思います?

5月の初ワンマン(ライブ)の打ち合わせのときに皆さんに言われたんですけど、神前さんや、(河野楽曲の詞を多く手がける)こだまさおりさんや周りのスタッフさんの私に対する印象って共通していて。こだまさんが「その声を覚えてる」の詞の中で描いてくださった「どんな時も精一杯に抗いたい」という感じ。猪突猛進というか、よくも悪くも一生懸命で全力であるところに、自分で言うのはちょっと照れくさいんですけど(笑)、かわいらしさみたいなものを感じてくださってるのかなって思ってます。

ドラマチックだったレコーディング

──でもこのアルバムっていい意味で肩の力が抜けている。ものすごくスムーズに聴ける作品ですよね。

ベストな温度感というものを全力で考えて、自分の必死さを全力で抑えた結果なんだと思います(笑)。例えば11月の横浜アリーナでの「ANIMAX MUSIX」っていうイベントでも1万人以上のお客さんを前に歌うことはすごく大きいことというか、ステージ裏にいるときからすでに涙が出そうだったりしたんですけど、でもその感動を100%ステージで出して泣いてしまうことが曲を生かすことになるのか、って考えたら、きっと逆に殺すことになってしまう。だからこの思いは涙や必死さとして出すんじゃなくて、ちゃんとキレイに音をとって、キレイな歌として届けたいって思っていて。それはアルバムを作るときも同じでした。

──レコーディングは順調でした?

順調ではなかったです。ただそれはすごくいい意味で、とってもドラマチックだったんです。

──ドラマチック?

いろいろドラマチックな場面はあったんですけど、特に私の中に意識改革みたいなものがあったのが印象的でした。最初に5曲目の「MAGIC OF MUSIC」と7曲目の「Do!! Do!! Let me Fun♪」のオケ録りがあって。オケと一緒に仮歌を録ることになってたんですけど、そのときちょっと高音がうまく出なくて不安になってしまって。でも、ワンマンライブでもサポートをしてくださっているギタリストの堀崎翔さんが「音楽は1人でやるものじゃないから」って言ってくださって。「自分たちはカラオケを録るつもりでレコーディングしてるんじゃなくて、マリナちゃんとライブしてる気持ちでいつでもレコーディングしてる。マリナちゃんもライブしてるときと同じ気持ちで臨んでくれれば大丈夫」って。乱暴な言い方をすると「音楽は1人でやるものじゃない」ってありふれた言葉かもしれないんですけど、初ワンマンの頃からお世話になって堀崎さんの言葉だからこそすごく響いたし、実際、その言葉を聞いたら高音が出ないことを克服できたんです。そういうドラマがまずありました。

「snowdrop」は誰の曲?

──その気付きがあってからは歌うのもラクに?

自由に表現できるようになった気はしています。ただドラマチックなことは続くというか「snowdrop -河野マリナ ver.-」のレコーディングにはちょっと時間がかかって……。

──それはそれで意外というか。原曲は春奈るなさんとのデュエットバージョンとはいえ、新曲よりは歌い慣れた曲ですよね。

ええ。だから歌入れ自体はスムーズだったというか、すごく大切に歌うことができたんですけど「snowdrop」っていう楽曲を消化するのに時間がかかったんです。というのも、私にとって歌はコミュニケーションツール。「私を見て」「私を愛して」っていう気持ちで歌い続けてきたっていう面がある中で、春奈さんの曲でもある「snowdrop」をちゃんと私のものにできるのか、すごく考えてしまったんです。

──どうやって解決しました?

やっぱり音楽は1人でやるものじゃなかったという感じというか(笑)。神前さんや作曲の田中さん、制作スタッフの方々から「河野マリナバージョンってことだしアウトロをちょっと変えてみようか」「コーラスを重ねてみようか」って言っていただいて。改めてアレンジしていただいて、自分でコーラスを入れさせてもらったら「この歌の中に私の居場所があったんだな」「春奈さんとのデュエット曲でもあり、私の曲でもあるんだな」って思えるようになりました。

──その「snowdrop」が「<物語>シリーズセカンドシーズン」“恋物語”のエンディング曲であるようにアルバムにはアニメのテーマソングも収録されてますよね。しかもちゃんとアルバム用の書き下ろし曲とスマートに混ざり合っている。アニメソングを河野マリナのものにする秘訣ってありますか?

私自身、子供の頃に「セーラームーン」や「SLUM DUNK」にハマって以来のアニメファンだからできるんだと思ってます。特に「SLUM DUNK」のキャラクターに対してそうなっちゃうんですけど、アニメを観ているときって登場人物に自分を完全に重ねてしまっているので(笑)。それはこれまでテーマソングを担当させていただいたアニメも同じ。全部大好きな作品なので、自然と自分の世界とアニメの世界をぴったり重ねられるというか。

──「『<物語>シリーズ』の中なら神原駿河萌え」って公言してますもんね(笑)。

グッズを集めるくらい好きなので(笑)。それに今回のアルバムについて言うと、こだまさおりさんやmeg rockさんや入間人間さん、分島花音さんの書いてくださった詞について「私には全然合わないから」って思ったことがまったくなくて。どなたもアニメのストーリーにも、私のストーリーにも一致している詞を作ってくださるので、河野マリナの曲であり、アニメの曲でもあるっていうことを自然と成立させられちゃうんだと思います。

ニューアルバム「First Touch」 / 2013年12月11日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / SVWC-7970~1
通常盤 [CD] / 3150円 / SVWC-7972
収録曲
  1. その声を覚えてる
  2. 消えるdaydream
  3. Morning Arch
  4. たからもの
  5. MAGIC OF MUSIC
  6. バルーンシアター
  7. Do!! Do!! Let me Fun♪
  8. Cheer for me!!
  9. snowdrop -河野マリナ ver.-
  10. Imperfect blue
  11. アラタなるセカイ
  12. この優しい世界のなか
初回限定盤DVD収録内容

河野マリナスペシャルドキュメンタリーDVD「First Touch」

河野マリナ 東京・大阪ワンマンライブ
インパーフェクト・ブルー+S
2014年1月25日(土)大阪府 OSAKA RUIDO
OPEN 18:00 / START 18:30
2014年2月18日(火)東京都 TSUTAYA O-WEST
OPEN 18:30 / START 19:30
料金:4500円(ドリンク代別)
一般発売:2013年12月28日(土)
河野マリナ(かわのまりな)

1990年福岡県生まれのボーカリスト。大学在学時となる2010年に「第4回全日本アニソングランプリ」において、応募総数1189組の中からグランプリを獲得し、翌2011年に神前暁(MONACA)プロデュースによるアニメ「Aチャンネル」のオープニングテーマ「Morning Arch」でメジャーデビューする。2012年には2ndシングルにして「夏目友人帳 肆」のエンディングテーマ「たからもの」をリリースし、またOVA「Aチャンネル+smile」のオープニングテーマ「バルーンシアター」や、作家入間人間の創作生活5周年を記念したメディアミックス作品「アラタなるセカイ」の同名イメージソングを発表。また2010年来、4年連続でアニメ専門チャンネルANIMAX主催のイベント「ANIMAX MUSIX」で神奈川・横浜アリーナのステージを踏み、2012年からはニコニコ動画にてレギュラー番組「おねがい♡マリナちゃん」の放送をスタートさせた。2013年にはアニメ「<物語>シリーズセカンドシーズン」内のエピソード「囮物語」「鬼物語」のエンディング曲となる3rdシングル「その声を覚えてる」をリリースし、春奈るなとともに同シリーズ「恋物語」のエンディングテーマ「snowdrop」を担当。そして12月、これらの楽曲も収録した1stフルアルバム「First Touch」をリリースした。2014年年明けにはアルバムを携えてのワンマンライブ「インパーフェクト・ブルー+S」が開催される。