ナタリー PowerPush - 河野マリナ
自称「ややこしい子」“河野監督”の考える強力打線
カッコつけてるヒマはない! もう歌うしかない!
──さっき言っていた思いがあったからか、3歳のときに地元の福岡でピアノを習い始めるんだけど、小学校の頃にはエアロビやダンスのスクールに通っていて、中学ではそのテニスとソフトをやっている。一時、音楽からスポーツに浮気してますよね(笑)。
浮気というか二股ですね(笑)。ピアノは高校卒業まで習ってましたから。
──で、さらに高校生のときに軽音部に入る、と。
実はワンクッションを置いたというか、ためらってからの入部だったんです(笑)。その頃、私は「音楽をやってます」って表立って言うのはなんか違うと思っていたので。
──「創作活動、表現活動をしています」って公言するのって、ある意味自意識を丸出しにするってことですもんね。歌=アイデンティティだった河野さんだからこそ、なおのこと照れくさかった?
「音楽をやってます」って言うのはカッコ悪いとすら思ってました(笑)。それに小学校や中学校の頃の経験もあるから「やっぱり私はスポーツが好きなんだ」って思って、最初はバレー(ボール)部に入ってたんですけど、入ったからにはやっぱりスタメンになりたくて。でもそのためにはメッチャ声を出さなきゃいけなかったんです。「さあ、来い!」みたいな。それをがんばって毎日言ってたらノドを潰してしまいまして(笑)。その頃も歌は好きだったから、自宅やカラオケボックスでは歌ってたんですけど、まったく歌えない時期が3カ月くらい続いてしまったんです。そのときに本当に生きてる意味がわからなくなるくらい落ち込んで。そこで改めてさっき言っていただいた「歌=私」だったんだという事実を突きつけられた気がして「カッコつけてるヒマはない!」「もう歌うしかない!」ってなって軽音部に入ることにしたんです。
TMGEとアイドルのあいだにある音楽
──当時ってどんな曲をやってました?
木村カエラさんとか大塚愛さんとか、あとはHysteric BlueさんとかYUIさんとか。あと椎名林檎さんもカバーしてました。
──当時聴いていたのもそのあたり?
特に椎名林檎さんと東京事変さんはそうですね。
──そして関西の大学に進学してからも軽音サークルに入ってバンド活動を続けてますよね。
歌わないと友達ができないので(笑)。
──あはははは(笑)。大学時代に好きだったバンドは?
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(TMGE)さんとか、the pillowsさんとか、AJICOさん。
──河野さんが大学生の頃ってTMGEってもう解散してますよね。
はい。チバ(ユウスケ)さんとクハラ(カズユキ)さんはもうThe Birthdayをやってました。
──どこでTMGEのことを知りました?
その頃、梅田のLOFTで「ミッシェル・ガン・エレファント THEE MOVIE -LAST HEAVEN 031011-」っていうラストライブのドキュメンタリー映画の上映会をに観に行ったのがきっかけなんですけど、なんかすごく刺さったんです。エフェクターも挟んでないのに、すごい爆音がガーンってくる感じが。チバさんのボーカルももう極端なまでに“言葉”を叫んでる感じがして。すごくステキというか、これこそ音楽やロックの真髄だな、と思って。
──一方サークルではどんな曲を?
2年生の頃、先輩に誘われてアニソンのカバーバンドを組んで「星間飛行」を踊りながら歌ったりしてました(笑)。
──TMGEファンがそのアニソンカバーバンドの話に乗った理由は?
初めてアニソンに触れたとき「キングオブミュージックだな」っていう気がしたんです。というのも、ロックもあるし、ポップスもあるし、ジャズもあるし、ダンスミュージックもあるし。すごく幅広く表情豊かなジャンルがアニソンなんだと思って。
──そう言われれば、そうですね。「星間飛行」自体「マクロスF」のヒロイン、ランカ・リーの歌うアイドルポップっていう体なんだけど、実はロック的な要素の詰め込まれた曲だし、河野さんの好きなthe pillowsの楽曲は「フリクリ」のテーマソングや劇中歌に採用されていたりもしたし。
そうなんですよ。だからアニソンって小学校の頃からアイドルさんに憧れている自分と、すごく骨っぽい男気あふれるロックに憧れている自分の中間地点にある音楽のような気がしたんです。ここで私の歌いたいことや伝えたいことが表現できたら面白いなって。
たぶん歴代一番リアクションの薄かった優勝者
──「アニソングランプリ」に出場したのは、そのカバーバンドを組んだのと……。
ほぼ同時期ですね。大学に1人、アナウンサー志望の友達がいて。その子が毎日アルバイトをしてお金を貯めて、毎週深夜バスに乗って東京のアナウンス学校に通うっていう生活をしていたのを見て「もうステキすぎる!」と思って。あと「それに比べて私はなんなんだ」とも(笑)。歌手になりたいくせに行動どころか意思表示もできずに、なんか情けなくなっちゃったんです。そんなとき、偶然テレビで「アニソングランプリ」のCMを観て「今、私はアニソンをすごく愛してるんだから!」って即応募しました。
──1万人の頂点に立つってどういう気持ちになるものなんですか?
信じられないっていう気持ちはもちろんあったんですけど、「優勝は河野マリナさんです」って言っていただいたとき涙が出てこない自分がいて。なんか「ありがとうございます」って言葉しか言ってないんですよ。たぶん歴代で一番リアクションの薄かった優勝者だったと思います(笑)。
──なぜ泣けなかったんですか?
当たり前なんですけど「自分は未完成だ」っていう自覚があったので。でもステージの上にはその未完成な自分のことを「いい」って言ってくださった審査員の方だったり、「おめでとう」って言ってくれるライバルだったりがいて。だから「ちゃんといい歌を歌って、この声に恩返ししなきゃいけない」「ここはゴールではなくて、そのためのスタート地点なんだ」って、未熟ながらに責任感みたいなものがパッと芽生えたら、なんか涙が出てこなかったんです。自分で何度も言うのはちょっと情けないんですけど(笑)、コミュニケーションがうまくとれない自分が歌うことでライバルの人たちと出会うことができて、つながれたんだって気付いたら「この人たちの思いを大事にしなきゃ」って思えたんです。
- ニューアルバム「First Touch」 / 2013年12月11日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / SVWC-7970~1
- 通常盤 [CD] / 3150円 / SVWC-7972
収録曲
- その声を覚えてる
- 消えるdaydream
- Morning Arch
- たからもの
- MAGIC OF MUSIC
- バルーンシアター
- Do!! Do!! Let me Fun♪
- Cheer for me!!
- snowdrop -河野マリナ ver.-
- Imperfect blue
- アラタなるセカイ
- この優しい世界のなか
初回限定盤DVD収録内容
河野マリナスペシャルドキュメンタリーDVD「First Touch」
河野マリナ 東京・大阪ワンマンライブ
インパーフェクト・ブルー+S
- 2014年1月25日(土)大阪府 OSAKA RUIDO
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2014年2月18日(火)東京都 TSUTAYA O-WEST
OPEN 18:30 / START 19:30 - 料金:4500円(ドリンク代別)
一般発売:2013年12月28日(土)
河野マリナ(かわのまりな)
1990年福岡県生まれのボーカリスト。大学在学時となる2010年に「第4回全日本アニソングランプリ」において、応募総数1189組の中からグランプリを獲得し、翌2011年に神前暁(MONACA)プロデュースによるアニメ「Aチャンネル」のオープニングテーマ「Morning Arch」でメジャーデビューする。2012年には2ndシングルにして「夏目友人帳 肆」のエンディングテーマ「たからもの」をリリースし、またOVA「Aチャンネル+smile」のオープニングテーマ「バルーンシアター」や、作家入間人間の創作生活5周年を記念したメディアミックス作品「アラタなるセカイ」の同名イメージソングを発表。また2010年来、4年連続でアニメ専門チャンネルANIMAX主催のイベント「ANIMAX MUSIX」で神奈川・横浜アリーナのステージを踏み、2012年からはニコニコ動画にてレギュラー番組「おねがい♡マリナちゃん」の放送をスタートさせた。2013年にはアニメ「<物語>シリーズセカンドシーズン」内のエピソード「囮物語」「鬼物語」のエンディング曲となる3rdシングル「その声を覚えてる」をリリースし、春奈るなとともに同シリーズ「恋物語」のエンディングテーマ「snowdrop」を担当。そして12月、これらの楽曲も収録した1stフルアルバム「First Touch」をリリースした。2014年年明けにはアルバムを携えてのワンマンライブ「インパーフェクト・ブルー+S」が開催される。