ナタリー PowerPush - 片平里菜
メジャーデビューを前に明かす「これまで」と「これから」
人生を賭けた「閃光ライオット2011」
──初ライブを終えて、自分のライブの感想は耳にしましたか?
まだまだヘタクソだったのに、「すごい子が出てきたよ」「なんか持ってる子がいるよ」みたいな感じで盛り上がってくださって、すごくよく言ってくれる人が多かった気がします。
──そこからライブを頻繁に行うようになっていくわけですが、その頃は自分で書いた曲をどこに向けて歌って、何に対して歌を届けようと考えてましたか?
そうですねえ……自分の感情を歌でぶつけるような曲ばかりだったかな。誰かに向けてっていうよりは自分のための歌でしかなかったかもしれないですね。
──自分の中にある感情を吐き出して、それをメロディに乗せて表現していたと。
はい。それで聴いた人が曲に共感してくれたらうれしいなって思ってました。
──なるほど。そして高校を卒業してから「閃光ライオット2011」に参加するわけですが。
そうですね。いろいろオーディションには応募してたんですけど、「閃光ライオット」は10代しか出られないから最後のチャンスかなと思って応募したんです。
──そこで東京・日比谷野外大音楽堂で行われたファイナルステージに出演して、審査員特別賞を受賞して。
まさかでした。うふふ(笑)。しかも私、それまでは小さいライブハウスとか路上とかでしかライブをしたことがなかったから、野音は自分にとってはもう……人生を賭けるような感じでした。でもすごく楽しかったですよ。
──あ、あの環境を楽しむことはできたんですね。
いや、でも演奏中はひどかったですよ(笑)。はっきり言って悔しい気持ちのほうが強かったですけど、今となってみたらすごくいい思い出です。
東京でも福島でも生活のペースを変えたくない
──「閃光ライオット」以前と以降とでは、片平さんの生活ってどのように変わりましたか?
「閃光ライオット」以降に事務所が決まってアルバイトも辞めて、音楽1本で生活するようになって。なんだろう、音楽のことで悩んだり考えたりすることは幸せなことなんだなと思うようになりました。
──好きなことをやれて、それに対して悩めることは幸せだと?
そうですね。だから今はすごくいい環境だと思います。
──現在も地元福島に住んでいて、仕事のタイミングで東京まで通ってるんですよね。
はい。
──福島での生活と東京での生活、かなり違うと思いますが。
違いますね。私、東京にいても福島にいてもあまり生活のペースを変えたくなくて。例えば福島にいるときに、東京のスタッフさんから電話がかかってくると話し方が早いなっていつも思ってるんです(笑)。
──あははは(笑)。
話すペースが早くて、会話も50秒くらいで終わっちゃうみたいな。
スタッフ 電話で話すといつも「寝起き?」って聞いちゃうくらい、ゆっくりなので(笑)。
でも最近はそのペース感が福島のよさだと思うようになって。福島にいると時計を気にしないんです。日が暮れてきたら「あ、犬の散歩しなきゃ」って思うし。東京にいるときは「何時にどこどこに集合」ってなるけど、福島だとそこまできっちりしてないし。
──でも東京では時間に追われつつも、ちゃんと「何時にどこどこに集合」ということに適応できてるんですよね?
そうですね……あれ、そう考えるとやっぱり東京に来たら東京のペースになってるんだ、私(笑)。
今は故郷にいることに意味がある気がしている
──曲を作る上で故郷の福島から影響を受けている部分ってあると思いますか?
うーん、あるのかなあ。私、高校を卒業して就職も進学もしないで音楽だけしてたんです。周りの友達は進学して東京に出て行ったり就職したりして大人になって……なんか自分だけ福島にいてちょっと取り残された感じはありました。だからずっと上京したいって思ってたんですよ。福島には何もないし、中途半端な田舎だなと思ってたから。でも今は、逆に故郷にいることに意味があるのかなという気がしていて。
──それはどういったことですか?
震災があって、みんないろいろと考え方が変わってきたと思うんです。その中には自然の流れとともに生きていこうとか共存していこうとかそういう考え方もあって、私自身その考えの大切さが最近わかってきた気がしていて。
──なるほど。震災を機に故郷を大切にする人も増えたかもしれないし、音楽活動をするにも東京や首都圏に出て行かなきゃいけないという考え方も変わってきているのかもしれないですね。
別に音楽ってどこでもできるものじゃないですか。それこそギターが1本あれば。
──だったら今住んでいる場所での生活を大切にして、音楽を続けることもできる。ライブのときに東京へ行って、終わったら福島に帰ってくるっていう。そういう活動ができたら素敵ですよね。
まさにそれです。
片平里菜 (かたひらりな)
1992年5月12日生まれ、福島出身・在住のシンガーソングライター。2011年9月、「閃光ライオット2011」で1万組の中から審査員特別賞を受賞する。翌2012年にはソニーWALKMAN「Play You. Label」第1弾アーティストに抜擢され、山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュースのもと楽曲制作。7月にはメジャーデビュー前にもかかわらず「NANO-MUGEN FES.2012」に出演し、大きな話題を集めた。2013年1月にアジカン山田プロデュースによる楽曲「始まりに」を配信リリース。東北地区全6局でパワープレイに選出され、新人としては異例のレコチョクデイリーチャート2位獲得した。今年ポニーキャニオンからのメジャーデビューを控えている。