KAQRIYOTERROR|どんな状況でも貪欲に、泥臭く進み続ける

2019年はKAQRIYOTERRORにとって激動の1年だった。グループを牽引する存在だったのなめらが1月に脱退。5月にはグループ初期から活動を支えてきたヤマコマロも脱退し、グループ名は「幽世テロルArchitect」から「KAQRIYOTERROR」に改められた。8月に新メンバーとしてノア・ロンドとDKIが加入し、現在に至る新体制が築き上げられたが、10月にはグループの屋台骨である聖涙丸が体調不良により一部活動を休止することが発表された。2020年1月に聖涙丸は復帰を遂げ、5人で気持ちを新たに全国ツアーに臨んだKAQRIYOTERRORだったが、新型コロナウイルスの影響によりツアーは一部中止に。まさに激動の1年を彼女たちは持ち前の貪欲さで切り抜けてきた。音楽ナタリーではニューシングル「BWG」のリリースに合わせて5人にインタビューを実施。2019年から2020年にかけての活動を振り返りながら、曲に込められたメッセージに共感したという新曲「BWG」の制作秘話を語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 関上貴也

新しいKAQRIYOは「切れ味が増した」

──前回インタビューさせてもらったのが、2018年10月の「アイデンティティクライシス」発売時だったんですよ。当時は聖涙丸さんと季さんが加入したばかりのタイミングでした(参照:幽世テロルArchitect「アイデンティティークライシス」インタビュー)。特に去年はグループが大きく変わる1年だったと思います。

季

 去年は本当にいろんなことがありました。

聖涙丸 今では私と季がグループで一番の古参になってしまいました。

──順を追って触れていくと、のなめらさんとヤマコマロさんの脱退はグループにとってかなり衝撃が大きかったと思います。グループを引っ張る存在だった2人が抜け、現体制のKAQRIYOはリーダー不在の状態なんですよね?

涙丸 はい。今度決めようかという話はあるんですが、今はリーダーがいない状態ですね。

心鞠游 でも特に困っていることはなくて。何か決めなきゃいけないときは、みんなで意見を出し合えばなんとかなるんですよ。それで不自由したこともあまりないんです。

──リーダー不在とはいえ、集団で活動するうえでは役割としてリーダー的ポジションに立つ人がいると思うんです。その役割を担っているのは?

心鞠 強いて言えば、私と涙丸ですね。「今日はこれを決めよう」みたいに方針を示すのは私たち。でも立場が上とかそんなことは全然なくて、みんなでちゃんと相談しながらグループを前に進められていると思います。

──その後グループの改名があり、さらに新メンバーのノア・ロンドさんとDKIさんが加入しました。

涙丸 ロンドとDKIが入ってグループの切れ味が増したと思うんですよ。もともとKAQRIYOは個性的なメンバーが集まっていて「ヤバい集団だ」って思われていたんですけど、ノアは目力が強くて迫力があるし、DKIは“角”を合わせて180cmもあるし……とにかくグループのインパクトが増しました。

 5人になってから「なんか怖そう」って言われることが増えました(笑)。

──新メンバーの2人はKAQRIYOに入ってみて、グループの状態をどう感じていたんでしょうか?

DKI
ノア・ロンド

DKI 以前から個性的な人たちが所属しているグループという印象があったし、目まぐるしくグループの状況が動いているときだったので不安はありました。自分が入ったらどうなるかも全然想像できなかったし。最初はメンバーのことをけっこう怖い人たちだと思っていたんですよ。

心鞠 今、見た目が一番怖いのDKIだからね!

DKI (笑)。実際に話をしてみるとみんな真面目で、いい人たちなんですよね。グループの空気感もすごくよくて。

ノア・ロンド 「実はみんないい人」というのは私も感じました。以前からKAQRIYOのライブを観ていた身としてはカッコいいという印象が強かったし、やっぱり見た目通りに尖った人たちの集まりなんだろうなと思っていたんです。グループに入ってみて、カッコいいという印象はもちろん変わらないんですけど、メンバーみんなでふざけているときがすごく面白くて。みんないい人なのでホッとしました。

心鞠 2人共声がすごくよくて、KAQRIYOの表現力が豊かになったんですよ。ロンドは歌声がすごくしっかりしているし、DKIは見た目によらずすごくかわいらしい歌声で。

涙丸 個性的なメンツが集まってはいるんですけど、唯一全員に共通していることがあって。それは全員が一直線に真面目だということ。

 確かに。みんなすごく真面目。

──現体制の皆さんが、改名前の「幽世テロルArchitect」から受け継いでいるエッセンスはありますか?

心鞠 メンバー同士でわちゃわちゃしてるところかな(笑)。仲がいいのはいつも変わらないと思う。

 あとは泥臭い感じというか、がむしゃらな感じかな?

涙丸 うん。いろいろなことをがむしゃらに乗り越えてきたからこそ、これからも乗り越えていこうという気持ちは受け継いでいると思います。

活動復帰後にコロナ禍

──そして新体制初の東名阪ツアー「QIXI」の開催を前に、涙丸さんは一部の活動を休止して、ライブはしばらくの間4人体制で行われていました。

聖涙丸

涙丸 本当に駆け抜けるように活動をしてきたので、無理がたたったのかライブで体調を崩してしまいまして……。きっとすごく不安に感じたYOMIBITO(KAQRIYOTERRORファンの呼称)の方もいたと思いますが、5人でちゃんと前に進むためには時間が必要だと思ったんです。だから、一時期はライブに出ないで療養を優先していました。

──今年の1月には涙丸さんが復帰を果たし、5人体制での活動がスタートしたわけですが、今度は新型コロナウイルスの影響でリリースイベントや全国ツアーの一部中止が発表されてしまい……。

涙丸 ちょうど今年の2月に再録アルバム「Cultural Mixture」をリリースしたのもあって、ここから5人でライブを、というタイミングでした。ステージに立てない日々が続くのは歯がゆい思いがあって……。

 お客さんの前には立てていませんでしたが、私たちに何かできることはないかなと思って、4月からは配信ライブをすることで自分たちの活動を止めないようにしていました。

涙丸 これまで配信ライブをやったことがなかったから戸惑うことも多くて。まずお客さんを目の前にするパフォーマンスと、映像的な見栄えが全然違うことに驚きました。目の前の人を盛り上げる熱の伝え方と、カメラを通じて熱を伝える方法は全然違うんだということを痛感しました。

心鞠 何度か配信ライブをやってみて「普段と同じことをしていたら絶対ダメだな」というのは全員が感じたことですね。煽り方から何から全部変えないといけない。あと、引きの映像で見たときに気になったのが、5人の姿勢です。これまで自分たちのライブを映像でゆっくり振り返ったことがなかったから、基本的なところから気になってきちゃって。

涙丸 挑戦と発見の連続なんですよ。配信ライブをやるたびに課題が見えて改善して、そうするとまた次の課題が見えて……みたいな。本当に日々勉強だと思って、いろんなアーティストの配信ライブを観て勉強しています。

貪欲に生きる感じがKAQRIYO

──先ほど話題に上がりましたが、2月には既発の15曲を現体制でレコーディングし直した再録アルバム「Cultural Mixture」がリリースされました。曲によっては歌詞も変えられていますし、メンバーが変わることで曲の印象も変わったと思います。

心鞠游

心鞠 歌っている私たちも改めて曲と向き合うことで、印象が変わった曲があるんですよ。もともと私は「Never」という曲が一番好きだったんですけど、レコーディングをし直してみて一番好きな曲が更新されました。

──どの曲が一番好きになったんですか?

心鞠 「かごめかごめ」ですね。ライブでは必ずと言っていいほど歌う曲なんですけど、いつも歌う曲だからそこまで特別に好きという感情は持っていなかったんです。でも改めてレコーディングをする中で、なんだか初心に戻った気がして。「わかってはいたけど、この曲は思っていたよりもいい曲なのかもしれない」と思ったんです。まさかこんなに好きになれるとは思ってなかった。

ノア 私、好きな曲は変わらないけど、すごく愛着が湧くようになりました。私は「アイデンティティークライシス」が大好きで、私が入る前のメンバーでのミュージックビデオを何度も何度も観ていたんです。もともと大好きだったけど、自分が歌った音源がCDとしてリリースされたのが本当にうれしくて。もっと好きになりました。

涙丸 私も「アイデンティティークライシス」が一番好き。前のナタリーさんのインタビューでも「この曲が一番好き」と言っていたんですが、そこから変わっていないんですよね。一番自分に合っている曲というか、歌っていてしっくりくる曲なんです。

 私は再録する前もあとも「Like a Fake」が好きですね。貪欲に生きる感じの歌詞が、KAQRIYO全員に当てはまるし、もちろん私にも当てはまっているから。自然と感情を込めて歌える曲です。

心鞠 「Like a Fake」はいい曲だよね。

涙丸 私は「Like a Fake」という曲をすごく難しい曲だと捉えていたんです。再録する前はどちらかというと苦手な曲で。季とは逆で、私はこの曲に感情を乗せるのが難しくて。自分の性格だと「熱くがむしゃらに」みたいな曲には感情を乗せられるんですが、「Like a Fake」のような「冷静に熱く」みたいなものが求められる曲で苦戦する傾向にあって。ただ再録のレコーディングをやってみて、ようやくその苦手意識が払拭できたかな。今では好きな曲の1つになりました。

DKI 私の好きな曲は「摩訶不思議ズム」。KAQRIYOのイメージをひと言で表すなら、私は「楽しい」なんです。だから楽しげな曲が大好きで。「摩訶不思議ズム」はずっと大好きな曲だったから、いざ自分が歌うとなるとすごく難しくて、どうやってこの楽しさを表現したらいいかメチャクチャ悩みました。でも悩む時間も楽しいと思えるくらい、大好きな曲ですね。