音楽ナタリー Power Push - カノエラナ
Twitter動画で話題のSSW、メジャーへ参上。
クアトロワンマンは「まさかの展開」
──カノエさんの存在を広めた要因の1つに、Twitterに投稿している30秒の弾き語り動画があると思います。これを上げ始めたきっかけは?
Twitterに動画投稿機能が付いたときに、練習がてら録っていた童謡の「チューリップ」の動画をなんとなく上げたんです。そしたらいつもよりお気に入りとリツイートが多いし、リプライもいっぱいきて。「これを続けたらどうなるんだろう?」と思って、動画をどんどん上げて、カバーだけじゃなくてオリジナルも上げてみたら、オリジナルのほうがリツイートが多くて、味をしめました(笑)。こんなに効率よく顔と名前を覚えてもらえるツールを使わない手はないぞって思いましたね。
──動画投稿をし始めてから1年が経った今年の3月に、東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブを満員御礼という形で成功させています。
まさかの展開ですよね。
──なんか人ごとですね(笑)。
だってTwitterがきっかけで、1年でクアトロが埋まるほどの人が私のことを知って会いに来てくれるなんて思ってなかったんですよ。
──今のカノエさんにとって、ライブとはどういうものですか?
一番楽しいと思える瞬間ですね。もちろんレコーディングするのも大好きですけど、直接自分の曲を聴いてくれる人と交流ができて、私の鳴らしてる音に乗って体を揺らしてくれたり。音楽をやっていてよかったなと一番思えるときです。
──作った料理に対して、目の前で「おいしい」って言いながら食べてもらっているような感覚なのかなって思います。
まさにそれですね。だから「もっと作っていいですか?」「もっと食べていってください!」っていう気持ちになります。今までは誰かの背中を押したり、勇気付けたりみたいな、いわゆる“応援ソング”は作ってこなかったんですけど、聴いてくれる人の顔が見えるようになって、その人たちのための歌を作りたいって思うようになったんですよ。今回の作品に入っている「シャトルラン」なんかは私の音楽を聴いてくれてる人を応援したくて作った曲なんです。
──ライブを重ねていく中で自分の気持ちがそういう方向にシフトしていった感じ?
そうですね。私1人で感じていた「歌うのが楽しい」という気持ちから、「一緒に楽しみたい」「聴いてくれる人を楽しませたい」という気持ちに変わっていきましたね。
アコギ弾き語りが“バンド”になって返ってくる
──「『カノエ参上。』」はアレンジャーとしてチームしゃちほこなどの楽曲でおなじみの浅野尚志さんが参加していますよね。どういうふうにして曲を作っていったんですか?
「シャトルラン」は作曲から一緒にしたんですけど、それ以外の曲は私が曲と歌詞を弾き語りで浅野さんに渡すと“音源”になって返ってくるみたいな感じでした。
──“音源”というと?
アコギの弾き語りがバンドサウンドになって戻ってくるみたいな……いわゆるオケの状態です。メロディラインはそのまんま。あ、あと「My World」は浅野さんが作ってくれたオケに私が歌を乗せました。それ以外は弾き語りがバンドサウンドになって戻ってきました(笑)。
──「シャトルラン」みたいな爽快なロックチューンがあったり、ジャジーな「恋する地縛霊」があったり、和メロを取り入れた“お祭りロック”みたいな「夏の終わりのわっしょい歌」があったりと、かなりバラエティに富んでますよね。
「夏の祭りのわっしょい歌」は浅野さんから返って来たのを聴いてびっくりしました(笑)。「ジャンジャランジャジャ」ってアコギで鳴らしてたものが高速リズムのアゲアゲな曲になるとは思いもしなかった。「やっぱり浅野さんはすごい!」って感激しましたね。
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収録曲
- シャトルラン
- 恋する地縛霊
- My World
- 夏の祭りのわっしょい歌
- あたしの彼氏は二次元の人
- 大事にしてもらえよ
カノエラナ
佐賀県唐津市出身の1995年生まれの女性シンガーソングライター。14歳の頃に出場した「唐津ジュニア音楽祭」で、EGO-WRAPPIN'「くちばしにチェリー」を歌って優秀賞を獲得した。高校を卒業した2014年の春に上京し、音楽活動を本格的に開始。Twitterに弾き語りの30秒動画を上げるようになったことをきっかけに人気に火が付き、ライブ動員を徐々に増やしていった。2016年3月に行った東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブはソールドアウト。同年8月にワーナーミュージック・ジャパンよりミニアルバム「『カノエ参上。』」でメジャーデビューを果たす。