カノエラナが1stフルアルバム「『キョウカイセン』」をリリースした。
リード曲「サンビョウカン」をはじめ、「恋する地縛霊」や「たのしいバストの数え歌」「シャトルラン」といった人気ナンバーが収録された「『キョウカイセン』」。メジャーデビュー以降、アッパーチューンを多く発表してきたカノエだが、今作には新境地とも言えるバラードナンバーも多く収められており、彼女の魅力を存分に楽しめる1枚に仕上がった。音楽ナタリーでは、デビュー前からカノエとタッグを組んできた浅野尚志との対談を企画。浅野から見たカノエの成長やアルバム収録曲の制作秘話など、この2人だからこそ話せた内容をアルバムと共に楽しんでほしい。
※特集内に登場する作品タイトルに使用されている二重カギカッコはすべて一重カギカッコが正式表記です。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / 草場雄介
自分が作った曲が倍以上の力を持って返ってくる
──浅野さんがカノエさんの楽曲に携わるようになったのは2015年発売のミニアルバム「『カノエラナです。』」からですね。年数で言うと、3年ほど前になるのでしょうか。
浅野尚志 意外とそんなもんか……たくさん一緒に仕事をしているので、もっと長い付き合いな気がしていました。ラナちゃんとはかなり早いペースで作品を作っていて、半年に1枚くらいのペースで出してきたからね。よう曲作ったなあ……(笑)。
カノエラナ 作りましたね……なんか出会った頃から今までが濃密すぎて「え、もうそんなに経った!?」って感じです。デビューしてからは体感時間がめちゃくちゃ早くて、たくさんCDを出して、いろんなところで歌っているうちに「あれ? もう春!?」みたいな。
──浅野さんが最初に触れたカノエさんの曲は「カノエラナです。」になるんでしょうか?
浅野 そうですね。ワーナー(Warner Music Japan)からデビューすることが決まって、ワーナーの方が僕とラナちゃんとつないでくれて。
カノエ 私の楽曲なら「浅野くんと相性がいいんじゃない?」って。
浅野 「カノエラナです。」は自己紹介ソングなので、キャラが立つ子だなという印象を受けましたね。
──浅野さんはNICO Touches the Wallsのプロデュースやサポートメンバーとしても活動していますが、チームしゃちほこや乙女新党、でんぱ組.incなどアイドルへ楽曲提供も多いですよね。シンガーソングライターの楽曲アレンジを手がけるのはカノエさんが初めてになるんでしょうか?
浅野 シンガーソングライターの楽曲を一緒に作るのはラナちゃんが初めてでした。出会った頃は、アイドルの曲をたくさんやっていた頃だったので、ちゃんと歌えるのがいいなあとしみじみ思いましたよ(笑)。
カノエ えへ(笑)。
──ポップさみたいなところはアイドルの楽曲と共通していると思うんですが、制作時に違いはあるんですか?
浅野 自分の中ではスイッチを切り替えてます。ラナちゃんの曲にはもともとフックになる要素が散りばめられているので、それを生かしつつやり過ぎないように心がけてアレンジをしています。
──これまでリリースしてきた作品の表題曲は主に浅野さんが携わってますし、カノエさんの音楽には浅野さんが欠かせない存在なのかなと思います。
カノエ (深く何度もうなずく)。浅野さんは「自分が作った曲が倍以上の力を持って返ってくる」という衝撃的な経験を最初にさせてくれた人なんです。そしてその衝撃が毎回続くんですよね。
──カノエさんは以前のインタビュー(参照:カノエラナ「『カノエ参上。』」特集|Twitter動画で話題のSSW、メジャーへ参上)で「弾き語りで歌を投げたら曲になって返ってくる」とおっしゃっていましたが、具体的にどうやってオーダーしているんですか?
カノエ 「これはキラキラした感じで、サビはバーっとやってください」みたいな擬音の多いオーダーをしているのに、それをしっかり汲み取って膨らませて返してくれるので「すごいなあ……」といつも感動します。
浅野 まあ僕は空気を読むことが得意だから(笑)。というのは冗談で、自分もディレクションしているときに具体的に案を出すより、「イエーイ!って感じで」とか言っちゃうタイプだから、感覚的に似てるのかもしれませんね。
カノエラナの成長したところ
──浅野さんから見て、カノエさんがデビューした頃と比べて成長したところってどんなところだと思いますか?
浅野 人見知りがだんだん直ってきたなと思いますね。最初は本当に「大人は信じられない」みたいなオーラをめちゃくちゃ出してたから(笑)。
カノエ あははは(笑)。恥ずかしくて消えたい……。
──ボーカリストとしてはどうですか?
浅野 歌がどんどんうまくなってきて、ボーカリストっぽい声になってきたなと思いますね。最初の頃は自己流で声を出している感じがあったんですけど、今はもうプロっぽいと言うか……プロなんですけど(笑)。
カノエ ボイトレの成果もあると思うんですけど、若干声変わりして声の低さが変わったのも大きいかもしれないです。最初の頃は声色が今よりずっと高かったんですけど、最近は低いところもしっかり出せるようになってきて。
浅野 ちゃんと芯のある声になってきたよね。
カノエ 今回のアルバムに「カノエラナです。改」という、アレンジを変えて歌い直した「カノエラナです。」が入っているんですが、オリジナルと聴き比べると全然違うんですよ。オリジナルの声はすごいキャピってます(笑)。
──カノエさん自身が思う、自分の成長したところはどこですか?
カノエ 楽曲を構成する音の要素を理解して、曲を聴けるようになったなと思います。最初はアレンジされたものが送られてきても「なるほど、こんな変わるんだ。すごいな」としか思わなかったんですけど、それぞれの楽器の音が聞き取れるようになって、「あ、これはちょっとベースが大きいかもな」とか「ギターをもう少し下げてください」とか言えるようになったのは大きいです。
浅野 確かにそうだね。
カノエ 昔はそういうふうに分析をしながら音楽を聴くことがなかったんですよね。私はボーカリストだし、楽器もそんなに弾けるわけじゃないので、自分になじみのあるアコギとピアノの音だけが耳に飛び込んできて、ほかのパートのことがあんまりわかってなかったんです。
──楽器の音がわかるようになって、自分の理想の音に近付ける指示もできるようになったんじゃないですか?
カノエ そうですね。「もっとズンズンさせてください」とか。
浅野 まあでも擬音が多いのは変わらないよね(笑)。そしてその空気や行間を僕が読んでいくというスタイルは変わりません。
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「学校でキツかったこと」からできた「シャトルラン」
- カノエラナ「『キョウカイセン』」
- 2018年2月7日発売 / Warner Music Japan
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初回限定盤 [CD+DVD]
3456円 / WPZL-31411~2 -
通常盤 [CD]
2700円 / WPCL-12822
- CD収録曲
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- カノエラナです。改
- トーキョー
- おーい兄ちゃん
- サンビョウカン
- 恋する地縛霊
- 地縛霊に恋をした
- 嘘つき
- たのしいバストの数え歌
- エスカレーターエレベーター
- ダイエットのうた
- あーした天気になぁれ
- シャトルラン
- ツキウサギ
- ヒトミシリ
- 初回限定盤DVD収録内容
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Music Video
- カノエラナです。
- ヒトミシリ
- シャトルラン
- トーキョー
- おーい兄ちゃん
- たのしいバストの数え歌
- ダイエットのうた
Making of Music Video
- シャトルラン
- トーキョー
- たのしいバストの数え歌
- ダイエットのうた
- カノエラナ「全国キャラバンツアー2018ファイナル ~ぼっちカノエの武者修行、終わりと始まりのキョウカイセン。~」
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2018年3月31日(土)東京都 WWW
- カノエラナ
- 佐賀県唐津市出身の1995年生まれの女性シンガーソングライター。14歳の頃に出場した「唐津ジュニア音楽祭」で、EGO-WRAPPIN'「くちばしにチェリー」を歌って優秀賞を獲得した。高校を卒業した2014年の春に上京し、音楽活動を本格的に開始。Twitterに弾き語りの30秒動画を上げるようになったことをきっかけに人気に火が付き、ライブ動員を徐々に増やしていった。2016年3月に行った東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブはソールドアウト。同年8月にワーナーミュージック・ジャパンよりミニアルバム「『カノエ参上。』」でメジャーデビューを果たした。2017年2月にメジャー2ndミニアルバム「『カノエ上等。』」と、Twitterで公開してきた“30秒弾き語り曲”を30曲収録した“30秒ソング集”「『30秒~カノエの楽しい歌日記~』」を同時リリース。3月から17カ所を回る弾き語りツアー「勇者を探して三千里~ぼっちで広げる旅の地図~」、5月からバンド編成ツアー「とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち。」を開催し、成功に収める。7月にメジャー3rdミニアルバム「『カノエ暴走。』」を発表。2018年2月に1stフルアルバム「『キョウカイセン』」をリリースし、弾き語りツアー「全国キャラバンツアー2018~ぼっちカノエの武者修行、装備はギターと水のみです。」を行う。3月31日には東京・WWWにてバンド編成のワンマンライブ「全国キャラバンツアー2018ファイナル~ぼっちカノエの武者修行、終わりと始まりのキョウカイセン。~」を開催。
- 浅野尚志(アサノタカシ)
- 1989年10月20日、石川県生まれのサウンドクリエイター。幼少時よりピアノとバイオリンを学び、中学生の頃に独学で作曲・編曲を始める。創作活動の中で、ドラム、ギター、ベースなどさまざまな楽器をすべて1人で演奏するスタイルを構築。カノエラナをはじめ、チームしゃちほこ、でんぱ組.inc、鈴村健一などさまざまなアーティストの作品にも携わる。プレイヤーとしても活躍しており、サウンドプロデュースを手がけるNICO Touches the Wallsのライブサポートも務めている。