金子ノブアキ×テクノロジー
──新曲「Respect & Rise」は音楽とテクノロジーの進化で作られた曲ですね。
テクノロジーの進化が著しい昨今。僕自身もさまざまな場面でシーンの変化をとても感じています。今までに経験したことのない、まったく新しい時代がやって来るという予感もしています。その中で自分に何ができるか。時代の進化の推移を目撃しながら、届く限りの可能性を追求したいのです。
──今、制作で使っているソフトや音源は?
メインのソフトはAbleton Liveです。あとはNexusというシンセのプラグイン音源やSpliceという月額料金で使えるサンプルのサブスクサービスが重宝しています。ほかにもフリー素材からの抜粋もあります。去年のアルバム(「KERAUNOS」)の大半はサンプリングで作りました。ドラムはもちろん自分で叩いているから生だけど、そこにドラムのサンプリングをぶち込んでみたり、必要に応じて臨機応変に。
一人だからこそ表現できる音楽を
──「Respect & Rise」ではタイトルの通り、「憎悪の争いは不要」「尊重と上昇(=Respect & Rise)で分断の連鎖を断ち切ろう」というメッセージ性の強い歌詞が歌われています。
世界情勢も長く混乱しているし、ちょうど日本でも参議院選挙が終わったばかりで、時事と強く結び付いているように聞こえるかもしれないけど、根本としてはそこにだけ特化しているわけではなく、アートにおけるポジティブなエネルギーを改めて言葉にした感じなんです。そこもやっぱり去年のライブの手応えが大きかった。自分の母艦とも言えるバンドの「RI“Z”E」ではなく、「RI“S”E」というワードを使って曲を作ってみたかったというのもあったし。RIZEのライブ活動も復活以降自分らのペースで順調にやれているし、おかげさまで俳優の仕事も順調で、いろんな現場で、いろんなクリエイターや職人さんやテックの人たちといろんなものを作らせてもらっているので、ソロは自分1人だからこそ表現できる音楽を作りたい。僕はロックだけじゃなく、バレエのような肉体表現もアートもファッションも好きなので、そうした表現から得られるエネルギーや芸術表現における自分の精神性を、シンプルに、ポジティブに発信したいという着想から自然とここにたどり着いたような気がします。
──8月には東京と大阪で「Nobuaki Kaneko Showcase 2025 "Leave the negatives"」が開催されます。どんなライブになりそうですか?
基本的には昨年のライブのアップデート版ですが、AIやテックの進化に足並みが左右されるプロジェクトでもあるので、ギリギリまで精度を高めたいと思っています。カルチャーって、かつては明日か明後日ぐらいまでを生きる力をなんとか蓄えるためのもの、みたいな役割があったと思うし、そこは今も変わらないとは思うんですが、一方でサブスクやSNSで燃料補給もしやすくなったじゃないですか。でも、ライブで生まれるエネルギーって、やっぱり絶対的だと僕は思うんですよ。これはよく話すたとえなんですけど、俳優の現場って“煮込み”なんです。グツグツ煮込んでカタルシスに向かっていく。一方、音楽の現場は“焼きもの”なんですよね。バーッと焼いて、下手したら2、3秒で形ができて「へいお待ち!!」っていう(笑)。僕のライブも、かなり“焼きもの”の部類だと思うんですが、その場その瞬間でしか生まれない純粋なエネルギーを体感してほしいという思いが最も大きいです。絶対に面白いと思うし、とにかくクオリティは保証するので、読者の皆さんもぜひ一度観に来てください。
──そこは前回のライブを観た自分も一緒に読者に保証したいですね。なんというか、限られた時間の中で数々の音と映像の物語に魅了されて、さまざまなことを考えさせられ、気付かされる時間だったので。
僕自身もそうなんだけど、いいライブを観ると、自分がしたかったことを確認できたりするじゃないですか。「ああ、あれを買いたかったんだ」みたいな小さいことから、「あれ、やりたかったじゃん」とか「あの人に会わなきゃと思ってたんだ」とかね。決して押し売りをする気はないけど、そういったなんらかの思いを提示し、共有するきっかけになるようなライブは常に心がけています。
──今後のソロ活動については?
楽曲はどんどん出していくつもりです。ライブの直前に当たる8月10日にも、新曲「Morpho Effect」をデジタルリリースします。現代アーティストのNAGONさんとコラボしたMVも見応えのある仕上がりになっているので、ぜひチェックしてほしいです。ほかにはサウンドトラックの仕事も順次解禁されていく予定です。手弁当で始めたソロだったけど、今ではすごくたくさんの人が関わってくれるようになって。SNSの映像運用のスタッフも若い世代が参加してくれて、偶然にもその1人のお父さんは昔僕が世話になった人だったりと、また新たな人のつながりを感じています。スタッフチームからも、「せっかくのクオリティなんだから、もっと本気で広げる動きをしていかないともったいない」と言ってもらえているので、そういう活動をしていきたいですね。ワクワク感しかないので、楽しくがんばっていこうと思っています。
公演情報
Nobuaki Kaneko Showcase 2025 "Leave the Negatives"
- 2025年8月17日(日)大阪府 Yogibo META VALLEY
- 2025年8月21日(木)東京都 WOMB
プロフィール
金子ノブアキ(カネコノブアキ)
1981年生まれ、東京都出身。ロックバンドRIZEのドラマーとして2000年にメジャーデビューし、2009年にソロ活動をスタートさせた。ソロライブでは音楽、映像、照明を駆使し総合芸術として表現するスタイルが高い評価を得ている。2019年にバンドRED ORCAを始動させ、精力的に活動を展開中。俳優としても映画、ドラマ、CMに出演している。2024年9月にソロとしては8年ぶりのフルアルバム「Keraunos」を発表し、9月に東京・WOMBにてショーケースライブ「Nobuaki Kaneko Showcase 2024 "Keraunos"」を行った。2025年7月に新曲「Respect & Rise」を配信リリース。8月に東京と大阪でソロライブ「Nobuaki Kaneko Showcase 2025 "Leave the Negatives"」を開催する。
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