音楽ナタリー Power Push - KANA-BOON

「ジャンプ」編集者と語る「NARUTO」への熱き思い

「NARUTO -ナルト-」の始まり

矢作 ちなみに皆さんどのキャラクターが好きですか?

古賀隼斗(G)

古賀 僕ロック・リー。

小泉 僕は秋道チョウジですね。

谷口 え、チョウジなの? 知らんかった。

大槻 背中に羽が生えたあたりで好きになったんですか?

小泉 あ、そうです。あそこです。

飯田 僕はうちはイタチですね。ツンデレ具合が……。

古賀 最強のツンデレや。ツンがデカすぎるがな(笑)。

谷口 僕は日向ヒナタですね。

矢作 意外と皆さんナルトじゃないんですね(笑)。

谷口 いやいや! ナルトが好きなのは大前提で、その上で好きなキャラです。あの、お聞きしたかったんですが、岸本先生との出会いってどういう形だったんですか?

矢作 最初はマンガ賞に投稿されてきたんですよね。それを読んで「これはすごい。読んだことがない作品だ」と思って。岸本先生は当時、大学生で博多にいて。携帯電話もない時代なんで、大学の寮に電話をかけると寮のおばちゃんが出るんですけど勝手に切られちゃうんですよ。

一同 あははは(笑)。

矢作 忙しいのかなと思ってかけ直さないでいると、あとで「電話かけてくれたんですね」とか連絡が来たり。20年前の話です。その後、岸本先生は大学を卒業して地元の岡山に帰って、家の仕事を手伝いながらマンガを描いてたんですけど悩んでたみたいですね。マンガ描いてるけどモノになるのか俺は、みたいな手紙もいただいて。アシスタントがやりたいですっていう申し出もあったんですけど、それは勧めずにマンガを描き続けてもらって、連載にこぎつけた感じでしたね。

谷口 「NARUTO -ナルト-」はどうやって始まったんですか?

左から大槻譲、矢作康介。

矢作 岸本先生の投稿作品(「カラクリ」)が「第132回 2月期ホップ☆ステップ賞」で佳作を獲ったんですけど、連載はちょっと難しい内容だったんですね。それで別の題材でやれるか打ち合わせを重ねる中で、岸本先生から「NARUTO -ナルト-」のネームが出てきて。増刊号で読み切りを1回掲載したんですけど、そのときはナルトが人間ではなく化け狐っていう設定だったんです。妖怪が主人公だと読者が主人公の気持ちに入れないんじゃないかってことで、別のネタでほかの作品を描いてもらったんですけど結果は出ず……。いまだに覚えてるのがその時期先生からしばらく連絡がなくなって、ある日電話したら「実は今青年誌向けにマンガを描いてます。ついては矢作さん、『スーパージャンプ』の編集者を紹介してもらえませんか」って言ってきて。それを説得して、ナルトを人間にして、妖怪が封印されている設定にすればいいという結論に達して連載が始まったんです。岸本先生に「スーパージャンプ」を紹介してたら「NARUTO -ナルト-」はなかったんです(笑)。

谷口 危ない、危ない! 連載が終わりそうになったときってあるんですか?

矢作 何度もありましたね。最初はよかったんですけど「波の国編」での白や再不斬との戦いのあとを描くのが難しくて。わりと2人とも先を考えないで進めてたんですよ。「波の国編」が終わってから中忍試験を入れてみたりして。我愛羅と戦う話が一番大変でしたね。電話で打ち合わせをしてるときに、先生と我愛羅のキャラクターの話をするんですが「わからないです」って言われてしまって。先生は原稿を上げた時にも自信なさげで、実際にアンケート結果もよくなかったんですよね。

KANA-BOON一同 へえ……。

矢作 このままじゃ終わっちゃう!かも、ってビビりました。暗すぎるエピソードも描いたし、ナルトが「我愛羅には勝てない」って絶望してしまって、読者もがっかりしたんでしょう。だけど、ナルトが「我愛羅よりもっと強いやつを俺は知ってるじゃないか」ってなって勝ったことでドカンと上がって。やっぱり作者自身が自信がないときはアンケート結果もよくない。みんな「打ち切りの心配してたなんて嘘でしょ」って言うけど、結構いつも心配でしたよ。

谷口 意外ですね。

──マンガ誌の編集者って作家と二人三脚でストーリーやキャラクターを作っていくんですね。

矢作 週刊誌なので打ち合わせして作らないと間に合わないんです。キャラの提案をすることもありますし。先生の描きたいものが一番大事ですけど、イメージを共有してすり合わせをしてないと先々が大変なことになっちゃうこともある。だからとことん話し合います。ちなみにKANA-BOONさんも締め切りってあるんですか?

谷口 ありますね。でも矢作さんの話を聞くと、僕らの締め切りなんてたいしたことないかもって思っちゃいます(笑)。週1でシングル作るみたいなもんやろ? で、コミックスがアルバムやとしたら……。

飯田 無理や(笑)。

岸本斉史=ナルト

飯田祐馬(B)

矢作 皆さんは岸本先生にはお会いになったんですか?

谷口 はい。大槻さんが前に「びっくりするぐらいいい方です」っておっしゃってて、まさにその通りでした。ものすごい優しかったし。

飯田 会うまでは、先生に言わされてんのかなと思ってたけど、めっちゃくちゃいい人やった(笑)。

谷口 ちゃんと「NARUTO -ナルト-」の作者然としてるというか。この人が描くから、ああいう作品が生まれたんやろなっていうか。人によると思うけど、どんだけいい音楽やっててもその人の性格があんまりやったら、どうなんかなって話と一緒で。作品とのギャップは感じなかったんですよね。それはすごいことなんじゃないかなって。

矢作大槻 (大きく頷く)

大槻 人間性がそのまま出てるから作品が面白いのかなっていう気はしますね。選んでいるテーマも、本人の関心がちゃんとあるから掘っていけるだろうし、リアリティが出るんだと思います。

純粋に映画の一部として聴いてほしい

──さて、映画が8月7日に公開されますが、「ダイバー」をどう聴いてもらいたいですか?

KANA-BOONと大槻譲、矢作康介。

谷口 映画を観た人には純粋に作品の一部として聴いてもらえるのが一番うれしいですね。“僕らの歌”として聴いてくれなくてもいいと思ってます。例えば映画を観た子が大きくなったときに、「BORUTO -NARUTO THE MOVIE-」のエンディングってKANA-BOONが歌ってたなって思い出してもらえたら。「シルエット」のときもそういう気持ちで作ってました。

──バンドとしての曲として聴かれるのではなく、映画主題歌として機能すればそれはそれで幸せだと。

谷口 はい。曲を作ってく上で、そこを一番に目指してました。音楽という好きなものを作ってる中で、さらに大好きな「NARUTO -ナルト-」に関われているわけで。それだけで幸せでした。

矢作 うれしいですね。「NARUTO -ナルト-」は孤独だったナルトががんばって成長していって、いろんな人ひとりひとりに認められていって、というストーリーです。そういうナルトを好きになってくださって、歌にして勇気を与えてくれるKANA-BOONさんの存在に励まされます。こんな素晴らしい歌を作っていただいたというのはホントに夢のようなことだと思います。

KANA-BOON(カナブーン)
KANA-BOON

谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流して現在の編成となり、地元大阪を中心に活動を始める。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務める。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、同年9月にシングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビューを果たし、10月に1stフルアルバム「DOPPEL」を発表した。2014年はテレビ東京系アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のオープニングテーマ「シルエット」を含め精力的に新作を発表する。2015年1月にはメジャー2ndアルバム「TIME」をリリース。さらに3月には大阪・大阪城ホールおよび東京・日本武道館にて初のアリーナワンマンライブを行い成功を収めた。5月には資生堂「アネッサ」CMソングの「なんでもねだり」を、8月に映画「BORUTO -NARUTO THE MOVIE-」の主題歌として書き下ろした「ダイバー」をシングルとして発表。