ナタリー PowerPush - KANA-BOON
若手最強のライブバンドが見せた“完成度の高い未完成”という本質
この4人だったら、なんでもやれる
──KANA-BOONのライブを観たことがなくて今の発言だけを読んだ人は、もしかしたら「素人っぽいバンドなのかな」って思うかもしれないけど、実は全然そんなことはないということはフォローしておかないと(笑)。大前提として、すごくいいライブバンドですからね、KANA-BOONって。
谷口 でもそこはまだ全然納得いってないです。今の僕らのよさって、成長過程にあるバンドのよさだと思うんですよね。ただ納得いかない半面、常に成長過程であるべきだとも思っていて。僕自身、あまり完成されたものに興味がないんですよね。観てる側としても、完全に完成されたものよりも、今にも完成しそうな感じのもののほうが、スリリングだったり楽しかったりするじゃないですか。リスナーやオーディエンスが自分を投影できるのも、完成されてない部分だったりするんじゃないかなって。だとしたら、これからもそういう姿を見せてきたいなって思うんですよ。
──なるほどね。未完成でありながら、その未完成のあり方が非常に完成度が高い、というのがKANA-BOONの魅力なのかもしれないですね。
谷口 まあ、どこかで完成はしたいですけどね(笑)。バンドとしてこうありたいという姿はちゃんと見えてます。
──音楽的にも?
谷口 音楽的にも、僕個人としては完成の一歩手前くらいのところまでは見えてます。まだどうなるかわからない部分も残ってますけどね。
──その「バンドとしてこうありたい」という姿はどういうものなんですか?
谷口 一番になること。僕たちがずっと思い描いている一番というものがあって、それは、毎度毎度作品をリリースするごとにチャートで1位を獲るということではなくて。ずっとアジカンを目指してきたし、アジカンが支えにもなってきたから、そのアジカンの向こう側へ行くのが僕たちにとっての一番で。そこの景色を見てみたいんですよね。
──さり気なくすごいことを言ってますが、それは憧れを乗り越えるということですよね。
谷口 そうです。これまでも口で言ってきたことはだいたい実現してきたんで。
──すごい!
谷口 よく言うじゃないですか、言霊って(笑)。この4人だったらなんでもやれると思うんですよね。僕たち全員にとってKANA-BOONは初めてのバンドで、ほかに何もないから。みんな、これしかないと信じてやってるんで。
何かを信じ、一歩を踏み出すための準備はできている
──これからこういう歌を歌っていきたいという目標は明確にあるんでしょうか?
谷口 「信じる」ということを歌っていきたいです。これも今回のアルバムを作ったあとから気付いたんですけど、歌詞の中に「忘れる」「忘れない」って言葉がすごく多くて。その裏には、きっと自分の無常観のようなものがあって。今までの自分は何もかも信じることができなかったんです。今は、少しずつ人のことも信じられるようになってきたんですけど、それってつまり自分のことをこれまで信じられてなくて。それがだんだんと信じられるようになってきたからなんですよね。
──それは何がきっかけだったんでしょうか?
谷口 やっぱりこうして人前で音楽をやってると、いろんなことを言われるじゃないですか。そこには批評とかじゃなくて、ただの悪口みたいなものも多くて。最初はすごく傷付いたし、これまで以上に何を信じていいのかわからなくなったりしたけど、まずは自分を信じないと、目の前にいる人たちを信じることができないなって思ったんですね。目の前にいる人を信じることができないと、音楽を作っていくことはできないんだなって。このアルバムを作って、ようやく一歩前に踏み出すことができたというか、一歩前に踏み出す前の、片足を上げることができた感じです。
- ニューアルバム「DOPPEL」/ 2013年10月30日発売 / Ki/oon Music / KSCL-2315
- [CD] 2800円 / KSCL-2315
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収録曲
- 1.2. step to you
- ワールド
- ウォーリーヒーロー
- MUSiC
- 東京
- 白夜
- 目と目と目と目
- 盛者必衰の理、お断り
- 夜をこえて
- 羽虫と自販機
- A.oh!!<Bonus Track>
KANA-BOON(かなぶーん)
谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G, Cho)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流し、現在の陣容となり、地元大阪を中心に活動を展開する。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務め、注目度が急上昇。自身の企画ライブは軒並みソールドアウトを記録する。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、バンド初の全国流通盤となる1stミニアルバム「僕がCDを出したら」をリリースし、夏には「ROCK IN JAPAN FES」「SUMMER SONIC」「SWEET LOVE SHOWER」など大型フェスに多数招へいされたことで知名度を全国区のものとする。そして2013年9月シングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビュー。翌10月に1stフルアルバム「DOPPEL」を発表した。