神様、僕は気づいてしまった|次なるフェーズへ突入、メディアミックスでバンドの世界観を拡張した新作「パンスペルミア」完成

他ジャンルのクリエイターとの制作

──今回のプロジェクトはもともと「パンスペルミア」という曲があって、そこから派生する形でマンガや映像を組み立てていったんですか?

そういうわけではないです。曲自体、マンガやミュージックビデオと並行して作っていったんです。マンガにはプロットが必要になりますけど、どういう物語にしたいのか、どういう人に出てきてほしいのか、とかは自分からアイデアを出して、それをマンガ家の方に調理してもらいました。

──マンガは、神様に特殊な能力を与えられた人間たちそれぞれのドラマを描いたオムニバス形式のストーリーです。原作を岩城裕明さん、マンガをウエマツ七司さんが担当していますが、どのようにオファーしたんですか?

神様が出てくる、能力を与えるとか、物語の主軸になるアイデアは最初に僕が提案しました。そこからどういう物語を描いていただくかは、岩城さんとウエマツさんにお任せしていて。僕としては、お二人にもバンドメンバーになっていただいている感覚ですね。例えば曲作りでも、僕がベースの基礎のフレーズは考えるけど録るのは僕じゃない。その感覚と一緒というか、そこに素人の僕が入るのも無粋なので、任せてこそ一緒にやる意味があるなと思っています。

──複数のコンテンツを同時に走らせるとなると、曲の作り方にも変化はありましたか?

ありましたね。「パンスペルミア」はマンガであったり映像とセットで聴かれることが前提になるので、今までの手法だと通じないものが出てきたり、逆に今まで自分たちで縛っていたものが使えたりする場面もあったんですよ。歌詞で言うと今までは使えなかった言葉が使えたり、逆に今までの神僕で使ってきた直接的な表現は映像と合わせたときに脂っこくなっちゃうなと思って、使わないようにしたり。そういう違いはあると思います。

このメンバーでよかった

──「パンスペルミア」はスピード感のある、キャッチーなロックサウンドになっていますね。これはどんなイメージで作ったんですか?

マンガに登場するキャラクター“来訪神”

頭の中で架空のアニメのオープニングが浮かんでいたので、いい意味で“アニメソングらしさ”みたいなものを目指していたかもしれません。バンドの曲として考えると少しチグハグになってしまう部分もあるんですけど、映像込みで見たときに、そのフレーズの意味が浮かび上がってくるっていう、そういう表現を積極的に選んでいますね。それは特にイントロのリードフレーズに顕著に出ていると思います。今までの神僕だったら、絶対にああいうフレーズは使わないので。

──レコーディングはいかがでしたか? メンバーと一緒に制作するのもひさしぶりですよね?

そうですね。かなりひさびさに会ったので、勝手に距離感みたいなものを感じていたんですよ。でも録ってもらったテイクを聴いたときに、自分がアレンジのときに込めた意図がしっかりブラッシュアップされて返ってきて。最初の心配は杞憂だったなと、「逆にもっと他人を信頼しないといけないな」とバツの悪さを感じましたね(笑)。

──ははは(笑)。具体的に自分のアレンジの意図を汲んでくれているというのは、どういうところで感じたんですか?

今回は映像があることが前提なので、僕の頭の中で「この展開ではこういうスピード感のある映像」「ここではキャラクターの集合写真が出てほしい」というようなイメージができあがっていたんですが、メンバーにもその曲の抑揚に対する理解度が高くあってほしかったんです。ここは熱いシーンだからベースにうねりが欲しいなとか、緊迫するシーンだからビートが食っててほしい、みたいな。そういうのがちゃんと理解されたアレンジになっていて。

──なるほど。この曲、リズム隊の躍動感がカッコいいですよね。

そうですね、やっぱりこのメンバーでよかったなと思いました。

──どこのだれか(Vo, G)さんのボーカルに関しては、どうですか?

神僕は歌のキーが高すぎるから、僕が仮歌を入れられないっていう問題があったんです。でも、最近は下手くそでも、歌わないと伝わんないなっていうものがある気がして。無理やりピッチをイジったりして、自分の声で仮歌を入れるようにしてみたんです。それを聴いて彼に歌ってもらうと、やっぱり変わってくる実感がありましたね。

──そういうことで変わるものなんですね。

そのうえでプラスアルファ、彼ならではの提案を感じる歌い方でやってくれるので。そこはバンドの醍醐味だなっていうのはありますね。

神僕だからこそ意味がある表現

──タイトルの「パンスペルミア」というのは、種まきという意味合いでつけたそうですね。

「パンスペルミア」という言葉は、日本語では宇宙汎種説という、生命の起源はどこにあるの?っていう仮説の1つから取ったもので。

──生命は地球外からやってきたという。

そうです。端的に言うと、我々はどこか別の場所で生じたけど、種のような形で地球にやってきたんだよっていう話ですね。今回描いてもらっているマンガは、それぞれが1話完結ではありつつ、共通の世界で起きていることっていうものになっているんですが、「パンスペルミア」という曲は、それらを1つの型のもとに手繰り寄せる位置付けになってほしいなと思っていて。そういう意味で、別々の場所にあったものが種のような形で地球にやってきたっていうパンスペルミアっていう言葉がいいなと思ったんです。

──外部から来た種が広がっていくというのは、音楽という神僕の根幹にさまざまなコンテンツが加わって、新しい世界が広がるという今回のプロジェクトそのものを表しているようにも感じます。

神様、僕は気づいてしまった アイコン

いろいろな意味に受け取れますよね。特に僕は“種”っていうところがいいなと思っていて。種から物語の芽が開いていく、でもまだ開いてない状態だと中から出てくるのが天使か悪魔かもわからない。実際、マンガのシナリオとしても能力が付与される部分だけが共通していて、使う人間によって幸せになったり、不幸になったりするんですね。“種”という言葉にはよくも悪くも、いろいろな可能性がある。それがいいなと思ったんです。

──映像とマンガと音楽の相乗効果によって、今作から新しい神僕の表現ができあがりつつあると思いますが、そこからはどんな刺激を受けていますか?

曲の制作と企画が同時進行になっているので、いただいたものから楽曲に対して直接的な影響を受けることはないんです。ただ、定期的に打ち合わせの場を設けて、その中で映像のコンテとかも見させてもらったときに、自分たちの音楽とすごく向き合ってくれてるなっていうのを感じて、「自分たちも誠心誠意がんばらなきゃな」って思うんですよ。そういう精神論的な影響はありますね。1人でやっていると外在的なものからの刺激が生じることがあんまりないから、そういった点ではかなりモチベーションになっています。

──今後の神僕は面白くなっていきそうですね。

神僕だからこそ意味がある、みたいなものになると思います。結果的にこういう形になったプロジェクトは今までもあったと思うんですけど、神僕の場合はそこに哲学があるものにしたいですね。

──さまざまなコンテンツを巻き込んでいくけれど、結局バンドの哲学的な部分はブレずに変わらないままだから説得力もありますし。

そう、それが美しいと思いますね。

──今後、神僕はどのような展開を予定していますか?

とりあえず今はやるべきことが見えているというか、このプロジェクトをしっかり完成させるまでがんばるというゴールがあるので、そこまでは突っ走っていきます。突っ走ったあとはまた「20XX」を出した頃のように、いろいろと考えなきゃいけない時期が訪れるのかなと思っています。

──「考え続ける」って東野さんらしい在り方ですよね。過去のインタビューでも「神僕をこういうバンドにしたいっていうのを、ずっと考え続けていきたい」と言っていましたし、1つのやり方を見つけたらそれで終わりじゃない。

そうですね。やっぱり僕には考えるっていうのは必要な時間なんですよね。