神聖かまってちゃん|ちばぎん脱退まであとわずか、4人そろって語る最後のインタビュー

「この4人での最後の作品」という意識はしていない

──アルバムの制作が始まったのは、ちばぎんさんの脱退が決まってからなんですか?

ちばぎん 「来年アルバムを出しましょう」ということは決まってて、「コンセプトや収録曲はどうしましょうか?」って話し合いが始まったくらいのタイミングで伝えた、はず。レコーディングとかはまだ全然やってない段階でした。

──じゃあ制作しながら「これが4人での最後のアルバムになる」っていう意識が多少なりあったんですか?

みさこ そんなに意識してないかな。

の子 俺はなかった。

mono うん。

みさこ ちばぎん自身が「あんまり意識しないで」って感じだったし。

ちばぎん 俺も全然意識してないですよ。曲目に関しては「あの曲レコーディングしておきたかったな」ってあとから思うのが嫌だったので、「これ入れたいなー」って推したりもしたけど(笑)。ラストだからどうのというのは本当にない。レコーディング最終日に「ああ、終わったな」と思ったことくらいです。

の子 もし「この4人での最後の作品」ということを意識してたら、もっとギターポップっぽいアルバムになったんじゃないかな。

──ちなみに、ちばぎんさんが「入れたいな」とアピールした曲とは?

ちばぎん 脱退するって発表してから、「夜空の虫とどこまでも」を再録してほしいという声が配信のリスナーとかからけっこう寄せられたんですよ。前のアルバム(2010年発売の「つまんね」)に入ってた音源は打ち込みに寄せたアレンジだったから、ライブでやっているようなバンドサウンドのこの曲を、今の4人でいるうちに収録してくれって。だから「そういうのを求めてる人は多いみたいだよー?」みたいなことを言ってました(笑)。

の子 まあ、あの曲はいつか再録しようと思ってたし、今回のアルバムの世界観に合ってたからな。合わない曲だったら拒否してましたよ(笑)。

──「夜空の虫とどこまでも」はバンドと共に成長してきた曲だと思うんです。もともとシンセの打ち込みで作られた曲だったのが、長年ライブで演奏しているうちに少しずつ変化して、最近では「バンドがステージ上で演奏するための曲」になっていて。曲自体の世界観が大きく変わったわけでもないのに、10年前と今とでは全然印象が違うんですよね。

ちばぎん そうですよね。

みさこ アレンジも変わってますね。後半に裏打ちからエイトビートに変わるところとか、最初の頃はやってなかった。

ちばぎん あとは確か「静かなあの子」と「おやすみ」も推してたと思う。この2つはデモの段階からすごく好きな曲で、ぜひ入れたいって話をした記憶があります。「おやすみ」って、デモにはベースが入ってないんですよ。でも「これ絶対ベース入れたらカッコいいから、頼むから1回試しに入れさせてくれ。録ってみてダメだったら消してもいいから」って説得して、やらせてもらってOKをもらったんですよ。これはかなり気に入ってますね。

みさこ 「おまけでピックアップゴールド(神聖かまってちゃん加入前のちばぎんがボーカル&ギターを担当していたバンド)の曲も入れるか」みたいな話も挙がったよね(笑)。「神聖かまってちゃんの名義で出すアルバムに別のバンドの曲が入ってると権利がややこしくなる」ということでボツになったけど。

ちばぎん そもそも「入れようか?」って言われたときに、俺は断ってたと思う。

みさこ そうそう、ちばぎんも「『最後だから』みたいな特別感は出さなくていいよ」って感じだったもんね。

──そういうムードのアルバムにはしたくなかった?

ちばぎん いや、神聖かまってちゃんの作品にそういう、いちメンバーの自我を入れるのは違うと思うので。

の子 うん、そこはやっぱちゃんと分けないとダメだと思うな。

神聖かまってちゃん

の子が手放しで褒めているのを聞いて「とうとう言わせたぞ」って(笑)

──今回のアルバムは、ここ数年の中で断トツのクオリティだと思います。

みさこ えー、すごい!

ちばぎん ありがとうございます!

──サウンド面はこれまでで一番洗練されてて、バンドの成長が見える一方で、“かまってちゃんらしさ”というか、魅力の1つであった未成熟な部分がまったく損なわれてなくて。非常にバランスのいいアルバムだなと思いました。4人での最後のアルバムが「これぞ今の神聖かまってちゃん」と言える名刺代わりの1枚になってよかったなと。

の子 ジャケットとかも含めてトータルですごくいい作品になったと思う。こんなアルバムは神聖かまってちゃんにしか作れねえってマジで思う。だから俺らは海外に行って、世界に向けてもっとアピールすべきなんだよ。

みさこ じゃあチリに行こう(笑)。今Spotifyとかで、どこで聴かれてるのかが都市別で見れるんですけど、1位が東京で、2位はチリのサンティアゴなんですよ。

ちばぎん たぶん「進撃の巨人」好きがチリに多いんだよね。

の子 でもまあアニメとか関係なく、もっとアピールさえできれば世界中で受け入れられると思うけどな。

ちばぎん かまってちゃんって今までインタビューとか配信とかで、アルバムについて「この曲はよくできたと思うけど、ほかの曲はの子が作ったデモのほうがカッコいいな」みたいなことを普通に言ってたんですよ。でも、の子は今回のアルバムに対しては「今までで一番いいのができた」って手放しで褒めてて。それを聞いた瞬間、俺は心の中でニヤッとしてます。「とうとう言わせたぞ」って(笑)。まあ、の子の中で思うところがまったくなくはないのかもしれないですけど。

──実際、かなり評判もいいですよね。今回のアルバムはCD発売の2カ月半前に全曲先行配信されているので、この取材をしている時点ですでに多くの人が聴いているわけですが、大げさでなく「1人残らず全員絶賛」みたいな。

ちばぎん めちゃくちゃ反応いいです。

みさこ 「この曲が好き」って言ってみんなが挙げてる曲がバラバラなんですよね。みんなにとっても捨て曲がないってことなんだな、と思うとうれしいです。

間違いなくの子のメロディなんだけど、今までに似た曲があったかというと思いつかない

──皆さんが特に気に入っている曲はどれですか?

mono さっきちばぎんも挙げてたけど、僕もデモを聴いたときから「静かなあの子」が一番好きなんですよね。あの曲は最高です。

ちばぎん バンド全体として見ると「毎日がニュース」は相当カッコいい感じに仕上がったと思う。

みさこ 「毎日がニュース」は以前「NGフェス(神聖かまってちゃんが主催した「Net Generation」)」のときに即興でセッション的にやった曲がベースになってるんだけど、だからかベースとドラムが好きにやってる感じがして、の子さんがイチから作った曲とはリズムの感じがちょっと違う気がします。

ちばぎん 間違いなくの子のメロディなんだけど、今までに似た曲があったかというと思いつかない、という感じの曲ですね。

の子 自分ではあんまりわからないですけどね(笑)。

──「毎日がニュース」もそうですが、特にアルバムの前半は積極的に新しいことに挑戦している姿勢を感じました。「Girl2」も、世間が持つかまってちゃんに対するイメージを打ち壊すような1曲に仕上がったと思いますし。

みさこ 「Girl2」は私も新しいなと思った。

の子 まあでも、アルバム全体のストーリーを考えたら自然とそうなったって感じですね。女子高生をイメージした世界観で曲を決めたので。

──「聖マリ」は昔からライブでも演奏されていたので、バンドでの音源化はようやくという感じですね。ファンの思い入れも強い曲ですし、このタイミングでアルバム用にレコーディングをするのは、自分たちの中でハードルが高くなっていたのでは?

みさこ 1回やって失敗したからね。

の子 前にアルバム用にレコーディングしたことがあったんですよ。でも、ちょっと違うなと思って収録しなかった。それから4、5年越しで納得いくものができたから、今回のアルバムに収録しました。