神聖かまってちゃん|ちばぎん脱退まであとわずか、4人そろって語る最後のインタビュー

このバンドでいろんなことをやってきた結果、僕はいったい何を身に付けたんだろう

──ちばぎんさんにとって、神聖かまってちゃんをやっていたこの10年間はどんな期間でした?

ちばぎん あー、どんな期間だったんだろう。ひと言で表すのは難しいですね。

みさこ 人生の3分の1だもんね。

ちばぎん ベースはそれなりにうまくなったんじゃないかなって自分では思ってます。初期の頃のアルバムとか、ちょっと聴くのがためらわれるくらい下手ですからね(笑)。

──仕方ないですよね、このバンドに加入してからベースを始めたわけですから(笑)。

ちばぎん 本当にここ3年くらいは自分の演奏に自信が付いてきたし、音源の完成度も高くなってきて、アルバムを1枚出すたびに「ああ、今までで一番いいアルバムができたな」って感じていたんです。今年それをまた更新して、最後に最高のアルバムを作ることができたので、それを考えたらいい10年だったなと。

──最近の神聖かまってちゃんのバンドサウンドにおいて、ちばぎんさんのベースは重要な立場を担っていたと思います。

ちばぎん けど、バンドを辞めてほかの職業に就こうと思ったときに、「かまってちゃんでは死ぬほどいろんなことをやってきたけど、その結果、僕はいったい何を身に付けたんだろう?」って、すごく考えちゃったんですよね。ベースに関しても、「みさこさんと一緒に演奏したときのグルーヴ」という観点で言えば、今の僕はすごくよくなっていると思うんですけど、かと言って別に教室を開いて人に教えられるほどはテクニックも知識もない。基本的にピック弾きですしね。車の運転に関しても、この10年でものすごい距離を走ってきたんですけど、それで二種免許を取ったわけでもないし。僕には何が残ったんだろうなと考えると、答えるのがちょっと難しいなって。

の子 数々の青春ですよ。プライスレスな。

ちばぎん そんな感じっす(笑)。何が残ったのかはよくわかんないけど、なんかよくがんばったなあ、という10年(笑)。

の子 別にほかの仕事をやっててもそんなもんなんじゃねえの? 大変な思いをして長く続けても、それで何か残るのかって言ったら同じようなもんだ。それと比べたら、かけがえのない濃厚な体験はできてるだろ。だから来年からバンド生活とのギャップに苦しむかもしれない。「あれ? 意外と社会人って楽しいなー」って。

ちばぎん 苦しんでないじゃん(笑)。

活動の9割はつらいんだけど、残りの1割のためにやっていた

──ちばぎんさんがこのバンドで一番思い出に残ってることはなんですか?

ちばぎん えっ、一番ですか?

の子 言えないよな、そんなん言われても。

みさこ ありすぎてどれが一番なのか難しい(笑)。

──では、ほかのメンバーが一番印象に残ってるちばぎんさんとのエピソードは?

mono ないな。

ちばぎん 思い出が何もないみたいな言い方するなよ。忘れてるだけだと思うぞ(笑)。

mono でも本当にないよ。

ちばぎん 嘘だろ(笑)。

みさこ 一緒にいすぎたから逆にわかんないんだよ。特にmonoくんはそうなんだと思う。バンドを始める前からずっと一緒だったから。

──いい意味で、空気のような存在になっていると。

の子 でもケンカしたりもしたじゃん。旅館で2人で向き合ってさ(笑)。

みさこ 相撲してた!(笑) 仲悪い時期もあったねー。

の子 10年くらい前でしょ? あれは当時の年齢だからできたことだと思うよ。今だったらあんなケンカの仕方はしないっしょ?(笑)

mono 今やってたら痛々しい(笑)。あの頃はお互いいっぱいいっぱいだったからな……。

ちばぎん 振り返るとマジで、「もう一度かまってちゃんをイチからやれ」って言われたら絶対嫌だ(笑)。

──ははは(笑)。じゃあ、一番つらかったことってなんですか?

ちばぎん 何ってこともなく、だいたいつらかったですね、本当に(笑)。活動の9割はつらいんだけど、たまにものすごくいいライブができて、お客さんとの一体感を感じて、うわー楽しい!っていう、その残りの1割のためにやっていたところはありますよ。そこが楽しすぎたから10年続けてこれた、みたいな。

──さっきのケンカの話もそうですけど、昔の神聖かまってちゃんはある種の危うさが漂っていて、周囲から「いつ解散してもおかしくないバンド」と思われていたわけじゃないですか。

ちばぎん そうですね。

──以前までであれば、もし今回のようにメンバーが脱退することになったら、解散という選択肢もあったんじゃないかという気がします。

mono だってケンカ別れじゃないですからね。相変わらず仲はいい、というのはデカいと思いますよ。

みさこ 「もうこんなバンド辞めてやる!」って言って脱退するわけじゃないので。

──ああ、それはそうですね。じゃあ、ちばぎんさんが辞めると聞いたときに3人は“解散”の2文字はまったく思い浮かばなかった?

の子 うん、まったくなかった。

みさこ 私は「そうなる可能性はあるのかな?」とは思った。例えば神聖かまってちゃん名義は1回終わらせて、名前を変えて新しいバンドをやるとか。