JUJUインタビュー|スナックJUJUのママが歌う“みんなにも出会ってほしい昭和歌謡の名曲” (2/2)

カバーによって手に入れた新しいニュアンス

──前作に引き続き、本作でも楽曲ごとに多彩なプロデューサー陣が参加されているのが大きなポイントですね。亀田誠治さん、川口大輔さん、小林武史さん、島田昌典さん、武部聡志さん、蔦谷好位置さん、松浦晃久さんらが見事な手腕を発揮され、絶妙なアレンジを施されています。

収録曲が固まった段階で、「この曲はあの方にこんな感じでやっていただけたらいいね」というアイデアをスタッフ含めて好き勝手、言い合っていって。それをもとにお声がけさせていただいたところ、皆さん快諾してくださり、本当に素晴らしいアレンジをしてくださいました。松浦さんにお願いした「なごり雪」では、「え、最後にそのコード感にいくのか!」とビックリさせられましたし、小林さんがアレンジしてくださった「魅せられて(エーゲ海のテーマ)」では「そう来たか!」と感動させてもらって、すべてが想像以上の仕上がりになりました。本当に幸せなことですね。

──歌に関しては、どの曲も原曲を歌われている方が憑依している印象もあって。JUJUさん本来の持ち味とのさじ加減がこれまた絶妙だなと。

ライブでは特になんですけど、ともするとすぐモノマネしようとしちゃうんですよね(笑)。「音源ではそこをやりすぎないように」というのは、けっこう意識したところで。ボーカルは昔からずっと川口大輔くんに立ち会ってもらって録ってるんですけど、今回も要所要所で川口チェックが入って。「はい、ちょっと(JUJUの歌い方に)戻ってきてもらっていいですかー」って(笑)。とはいえ、やっぱり原曲の歌い手の方の表情が好きすぎて、ついついそっちに引っ張られたところはあったと思います。以前出したユーミンカバー(2022年3月リリースのカバーアルバム「ユーミンをめぐる物語」)もそうでしたけど。

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

──いや、でもJUJUさんの場合、モノマネという感じでもないんですよね。言ったら数々の名曲のメロディをきっかけにJUJUさんの新たな引き出しが次々と開けられていっているような。

本当ですか? それならよかった。でも確かにカバーによって手に入れた新しいニュアンスが自分のオリジナル曲の歌い方につながっていくことはよくあるんですよ。「あの曲をカバーしなかったら、きっとこの歌い方はしていなかっただろうな」っていう。カバーをするときって、こちらの意図とは関係なく新しい声が出てくることも多いので、「あ、こんな声もあったんだ」という気付きもあるんですよね。

──で、それがご自身の声色のライブラリに追加されていくと。

そうそう。喉ってUSBメモリみたいなもので。曲との出会いによって新しい声色のデータが生まれたら、それがどんどんメモリに蓄積されていくんです。で、新たな曲を歌うときには、そこから喉が勝手にデータを読み込んでくれるという。そういう自分の新たな声との出会いや気付きがあるのもまたカバーをすることの面白さ。だから毎回、嬉々としてやってるんでしょうね。「またカバーやっていいんですか!」っていう(笑)。もちろんオリジナルアルバムを作ることも、オリジナル曲でツアーを回ることも同じくらい楽しいんですけどね。

脈々と受け継がれていくスナック文化

──「なごり雪」とともに先行シングルとしてリリースされた「あゝ無情」はJUJUさんにものすごくマッチした選曲だと思いました。

ありがとうございます。私も“あゝ無情”な人生を送っております(笑)。

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

──いやいや(笑)。原曲についてはどんな思い出があります?

アン・ルイスさんは子供の頃に衝撃を受けた歌手の1人だったので、前作の「六本木心中」に続き、今回も歌わせていただきました。「あゝ無情」に関しては、ちょっと不良っぽくて勝気な女性像と、その裏にある本音の部分とのギャップで揺れ動く感じがすごく好きなんですよね。子供の頃からこういう曲を愛してやまなかったからなのか、私自身もどんどんそっち側の人間になっていきまして(笑)。勝ち気なフリをずっとしているけど、本音はね……みたいなことが大人になるにつれどんどん理解できるようになっていったし、年齢を重ねる中で3度、4度と意味合いが変わっていくところもあるなと思いながら歌わせていただきました。

──この曲はツアーでも披露されていましたが、お客さんの合いの手が入ることでより心に刻まれる感じがありますよね。

そうなんですよね。「サングラスー」「フッフー!」「外したら」「フッフー!」みたいな(笑)。スナックで誰かが歌っても、絶対に「フッフー!」と「フワフワフワフワ」のコールは巻き起こりますから。ライブでは別に私から求めたわけじゃなかったんですよ。「コールしてください」とお願いしたわけでもないし。でも自然に発生するんです。7年前に代々木競技場第一体育館(「ジュジュ苑スペシャル~スナックJUJU~」)で「DESIRE -情熱-」をやったときも「はーどっこい!」のコールが会場を揺らしてましたから。あれはなんなんでしょうね。日本人としての定めみたいなものなのか(笑)。私のライブには親子3世代で観に来てくださる方もいらっしゃるんですけど、中学生くらいのお子さんも最初は「え?」みたいな顔をしつつ、すぐ一緒に「はーどっこい!」って言ってたりしますからね。こうやって脈々とスナック文化は受け継がれていくのだと思います(笑)。

──「あゝ無情」はミュージックビデオも公開されています。JUJUさんとともに出演されている俳優の吉田栄作さんが、最初はクールに飲んでいたのに後半になるとはっちゃけだして……相当面白かったです。

実際ホントに面白い方ですからね。一緒に飲んでいてお腹がよじれた人ランキングでは文句なしで1位。“アニキ”そしてなぜか“ジュンコ”と呼び合う間柄でもあるので、MVには二つ返事で喜んで出演してくださいました。

──栄作さんの後半の壊れっぷりは台本通りなんですか?

“最終的に盛り上がる”っていう指示があったので、台本上は栄作さんらしくカッコよく盛り上がる想定だったと思うんですよね。でも撮影が始まる前に、「私は普段のアニキが見たいです」とお伝えして。その結果がアレです。私的には大満足ですね。「いいMVができたわ」と思って。実際の栄作さんはあの100倍くらい面白いんですけどね。

ますます本当のスナックに

──全国ツアーと本作でひさびさに帰ってきた“ママ”は、さらなる大きなことをしでかそうとしているようで。来年2月17日に「ソニー銀行 presents ジュジュ苑スーパーライブ スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU 20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~」が開催されます。タイトルにあるように、会場は東京ドームです!

「スナックJUJU」の第1号店からして代々木競技場第一体育館でしたし、欲張りなママはずっと「世界一大きいスナックがやりたい!」と言ってましたからね。にしても、ドームだなんて(笑)。でも、「ジュジュ苑」はどんな規模の、どんな会場でやっても「ジュジュ苑」になるんですよ。ニューヨークでやってもちゃんと「ジュジュ苑」になりましたし。で、「ジュジュ苑」の中でも「スナックJUJU」が特に好きと言ってくださるファンの方も多いですからね。そんなスナック愛に満ちあふれた方々が埋め尽くしてくれる東京ドームは、絶対にほっこりしたスナックになるはず。しかも東京ドームではお酒が飲めるので、ますます本当のスナックになるんだろうなって。

──豪華なゲストが来店されることが決まっていますね。

そうなんです。小田和正さんとNOKKOさん、そして以前一度「スナックJUJU」にご来店いただいている常連のマーチン(鈴木雅之)さんが来ていただけることになって。「どうしても会いたいから頼んで」ってママからお願いされたので、私から招待状をお送りしました(笑)。

──ちなみにJUJUさんの来店予定は?

私にもママからの招待状は届いてます。「よかったら歌ってもいいよ」って書いてありました。その言い方にイラっときたのでまだちょっと保留にしてますね(笑)。

──あははは。ママからの盛大なお祝いを受け、来年8月にJUJUさんはデビュー20周年を迎えますね。何か企みはありますか?

どうなるんでしょうねえ。ママがやることとJUJUがやることは本当にまったく別なので、JUJUはJUJUとして粛々と20周年を噛み締めたいなとは思ってますね。企みとしては、あれとこれとそれがあります(笑)。きっと楽しい1年になると思います!

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

公演情報

ソニー銀行 presents ジュジュ苑スーパーライブ スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU 20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~

2024年2月17日(土)東京都 東京ドーム
OPEN 15:00 / START 17:00
<出演者>
JUJU
ゲスト:小田和正 / 鈴木雅之 / NOKKO

プロフィール

JUJU(ジュジュ)

18歳で単身渡米。ニューヨークでシンガーとしての実績を積んだのち、2004年8月にシングル「光の中へ」でメジャーデビュー。以降、「奇跡を望むなら...」「やさしさで溢れるように」「明日がくるなら」など立て続けに大ヒット曲をリリースする。ジャンル洋邦問わず名曲を歌い継ぐことをライフワークとし、邦楽カバーアルバム「Request」シリーズやジャズアルバム「DELICIOUS」シリーズなども人気を博している。2021年9月から12月にかけて過去最大規模のアリーナツアーを開催。翌2022年3月に松任谷正隆、松任谷由実プロデュースによるカバーアルバム「ユーミンをめぐる物語」をリリースした。2023年5月より「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」と題した全国ツアーを開催。全53公演を完売し、合計11万人を動員した。同年11月にアルバム「スナックJUJU ~夜のRequest~ 『帰ってきたママ』」を発表。2024年2月には東京ドームにて「ソニー銀行 presents ジュジュ苑スーパーライブ スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~」を開催する。