ナタリー PowerPush - JUJU
ヒットシングル多数収録 待望4thアルバム「YOU」
一生懸命忘れた相手に限って、なぜかまた会ってしまったり
──それにしても、今回はどの曲も歌詞が本当に素敵で。最初の何行かでグッと引き込まれてしまう作品ばかりですよね。
そうなんですよ。皆さん本当にすごいと思います。餅は餅屋だなって。
──4曲目の「If」なんか、女性なら誰もが共感すると思うんですよね。
あら、こういう経験ありました?(笑) 一生懸命忘れた相手なのに、ちょっとしたきっかけでなぜかまた会ってしまって。心がざわざわするし、それを認めたくないような相手に限って、こういうことってよくありますよね。
──そうそう! 神様のイタズラか?って思うような再会が。
それも全然準備ができてないときだったりして。ユーミンの曲(「DESTINY」)じゃないけど、(歌いながら)♪「どうしてなの 今日にかぎって 安いサンダルをはいてたー」って(笑)。いつもとちょっと違うことをしたせいで、運命のイタズラに出会ってしまうっていう歌ですからね。
──特にサビの「いつもの駅で降りてたら」「いつもの靴をはいてたら」とか、たぶん男性の作家さんなら思い付かないんじゃないかなって。
確かに。そういう発想って女性ならではという気もしますよね。この曲はもともと私がトラックを聴いてすごく気に入って、自分で歌詞を書くって言ってたんです。でもその頃ちょうど忙しくて、歌詞をお願いしてみたら「ああ、こんなの私には書ける気がしない!」ってものが上がってきて。
──それでこの歌詞に決定と。
自分で書いたらもう少し違う方向に行ってただろうし、この曲にはこれが正解だなあって思ったんです。
──「If」は、曲調も他のナンバーとは少し違いますよね。
ちょっとバブルの匂いがするでしょ? レコーディング中も「なんか懐かしいわー!」って感じで。
──でもそのバブリーなサウンドとJUJUさんの歌声って、すごく相性がいい気がして。
まあ、昭和の女ですから(笑)。ちなみにこの曲は、スタッフのみんなが「水を得た魚のようだ」って言ったくらい、私すごく楽しそうに歌ってたみたいです。
キヨサクくん(MONGOL800)は神様ですね
──11曲目の「ANTIQUE」は上江洲清作(MONGOL800)さんの作詞作曲です。2ndアルバムの「愛しい」、3rdアルバムの「bouquet」に続き、キヨサクさんはすでにJUJUさんのアルバムのレギュラーみたいになってますね。
もともとはただの飲み友達だったんですけどね(笑)。でもなんか、今回も当たり前のように言いましたもん。「そろそろアルバム制作の時期なんですけど……」って。そしたら「お、いいねー!」って。
──そうして完成した「ANTIQUE」にはどういったメッセージが?
元々、キヨサクくんが「ANTIQUE」っていう言葉が気になってたみたいで。そこにプラスして、今までのコラボ曲は1曲目が友達との別れ、2曲目が結婚がテーマだった。じゃあ今回はなんだろう? 家族じゃない?ってところでこのテーマに行きついたみたいです。「ANTIQUE」という言葉も、人間関係を重ねたり歳老いたりするにつれ、深みや価値がどんどん増して骨董品みたいになっていくんじゃない?っていう意味を込めて。
──なるほど。
あと、この曲のすごさは、家族のことを歌ってるのに、歌詞に「家族」っていうキーワードが全然出てこないところ。私も、歌ってみて初めて家族の曲だってわかったんです。
──歌ってみて初めて?
はい、最初にデモを聴きながら歌詞を見たときは、いろんな解釈ができる歌詞だなって思ってて。それはもちろん恋愛のことかもしれないし。だけど、いざ自分で歌ってみると歌詞から連想するのは親との思い出ばかりで。曲の前半部分は思春期の頃の親との関係性がまざまざと思い返され、間奏明けからは今現在の自分と親のことを考えて……。私、泣いちゃって歌えなかったんですよ。うちの親、全然元気なんですけど。
──なんだか、すごい力を持った歌ですね。
今まで苦労かけたなあとか、いろんなことを思い出して「すいません、親不孝で!」って思いながら歌いました。だから、この曲は今回のアルバムで一番思い入れがある気がしますね。キヨサクくん、彼は天才です。神様ですね、たぶん(笑)。
──そんなふうに、歌ってみて曲の解釈が変わったのは初めてですか?
初ですね。聴くと歌うは違う、歌うと意味は変わるんだなって。だから、このアルバムを手に取ってくれた皆さんにも、ぜひそういう経験をしてほしいんですよ。
──それは冒頭におっしゃった「聴いた人が一緒に歌いたいアルバムになれば」という思いとつながりそうですね。
そうなんです。私がそういう経験をしたように、全13曲それぞれの曲の中で皆さんが主人公になると思うんです。そのときに思い浮かべる何かを、一人ひとりが持ってくれたら私はすごくうれしいなって。
「愛とは何か?」は棺桶に片足突っ込んだときにわかるかも
──今作には恋愛の曲が多い印象ですが、2ndアルバム「What's Love?」のインタビューのとき、JUJUさんは「愛に対するひとつの答えみたいなものが見えた気がした」とおっしゃってて……。
あ、見失いました!
──ええっ!?
その"答えになりそうなもの"は見失いましたね。なんとなくわかる気はするものの、あいかわらず「愛ってなんだろう?」って考えてるし。
──じゃあ、それはもう永遠のテーマということで。
はい。たぶん棺桶に片足突っ込んだらわかる気がします(笑)。そのくらいになったら初めてわかるのかなって。
──例えば今回のアルバム制作を通して、改めて愛について何か見えたことはありましたか?
今回のアルバムでいうと……。どんなことがあっても、きっと今の時代を選ぶだろうって思えるくらいの誰かに出会って、その人を守りたいと思えるのが愛なんじゃないかとか。
──それを思ったきっかけは?
シングルの「また明日…」がドラマ「グッドライフ」の主題歌で、曲を作る際に原作を読んだことが大きいかな。無償の愛ってあるんだなっていうのは初めての気付きだったし、自己犠牲を払ってでも守りたい愛っていうのはあるんだなって。原作、読みました?
──まだなんです。
ぜひ読んでください! 一部ネタバレになっちゃいますけど、病気の子供のために、自分の好きな仕事を変えたり辞めたり……原作ではもっとすごい自己犠牲があるんですけど、そこまではきっと、彼氏や旦那のためにはできない気がするんですよね。
──自分の子供だからこそ?
はい。でもそういう気持ちは、きっと子供ができたときに初めて芽生えるものなんだろうな。まだ産んでないから全然わかんないですけど(笑)。でもとにかく、その原作のようなことは、彼氏や旦那には絶対できないと思う。
──でも例えば、JUJUさんが「グッドライフ」の親の立場になったらどうします? 自分とイコールの存在である歌をやめられますか?
それはもう、全然投げ捨てるんだろうなと思う。子供って自分の分身なわけじゃないですか? その子のためだったらなんでもできるんだろうなって。実際に今、猫のためならなんでもできる気がしますし(笑)。
──愛猫でもそうなんだから、自分の子供はまた違いますよね。
そりゃもう、絶対格別だと思います。
CD収録曲
- この夜を止めてよ
- さよならの代わりに
- つよがり
- If
- 願い
- Voice
- Love again
- Memories
- Piece Of Our Days
- Trust In You
- また明日...
- ANTIQUE
- YOU
JUJU(じゅじゅ)
18歳で単身渡米。ニューヨークでシンガーとしての実績を積んだのち、2004年8月にシングル「光の中へ」でメジャーデビュー。2005年から日本でのライブ活動をスタートさせる。2006年にリリースしたシングル「奇跡を望むなら...」は、異例のロングヒットを記録。2010年3月発表の3rdアルバム「JUJU」は第52回日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞し、同年9月にリリースしたカバーアルバム「Request」はオリコン2週連続1位を獲得する。その楽曲は多くのドラマ・映画主題歌やCMソングなどに起用され、幅広い支持を集めている。