音楽ナタリー Power Push - 羽深創太(ジョゼ)×渡井翔汰(Halo at 四畳半)
シンパシーとライバル心
ジョゼが4thミニアルバム「honeymoon」を、Halo at 四畳半が4曲入りの新作「万有信号の法則-EP」をリリースした。
公私共に交流が深く、刺激をし合う仲という彼ら。今回音楽ナタリーでは、新譜の発売に合わせて、それぞれのフロントマン羽深創太(Vo, G)と渡井翔汰(Vo, G)を招いて対談取材を実施した。新作についてはもちろん、両者の間柄、シンパシーを感じる部分、嫉妬する魅力などを大いに語ってもらった。
取材・文 / 田山雄士 撮影 / 西槇太一
憧れの渡井先輩です
──お二人の出会いは?
渡井翔汰 最初はアレですよね、渋谷のCHELSEA HOTEL。
羽深創太 そうそう。ジョゼがフルアルバムの「Sekirara」を出した頃に、スペシャのイベント(※2015年1月開催の「Gathering Neo」)があったんです。対バンはそれが初めて。でもHaloの名前はもっと前から知ってたな。YouTubeとかで観てて。
渡井 僕もジョゼは高校生のときから知ってます。「溺れる」のミュージックビデオとかチェックしてたんで。
羽深 恐い話だなあ(笑)。
渡井 なんでですか!(笑) ジョゼにはシンパシーを感じてますよ。
羽深 どんなところに?
渡井 まず、歌が真ん中にドシッとある。かといってワンマンなスタイルではなくて、ジョゼだったら3人、僕らだったら4人で、歌を引き立たせるアレンジを追求してる点ですね。
羽深 そうかもね。俺はコードの使い方に一番シンパシーを感じたよ。アレンジにしても、「自分たちが4人なら、絶対こうする!」ってのをけっこうやってたんで、うらやましくて。悔しさを噛み締めながら近付いていったけど。
渡井 僕、初対面の人とうまく話せるタイプじゃなくて。だから羽深さんから声をかけてもらったのは記憶してます。
羽深 あのさ……今思い出したんだけど、バンドの前にソロで一緒のときなかった?
渡井 あっ!
羽深 それがたぶん初対面なんだよ。ただ、あのときはまったく……。
渡井 そうだった。会話ゼロでしたよね。初競演は新宿LOFT(※2013年10月開催の「平成デモクラシーvol 3.5」)だ。
羽深 その弾き語りイベントがあったから「LOFTで一緒だったよね?」って切り出せたし、何より対バンで観たHaloのステージがめちゃくちゃよくて! それでどうしても話しかけたかった。かなりカルチャーショックだったんで、自分にとっては。
渡井 そうですか?
羽深 「こういう新しい子たちが出てきてるんだ」っていう。音楽シーンの今がHaloに象徴されてる気がした。ここ5、6年とかでアーティストとお客さんとのコミュニケーションの仕方が変わってきてる中、ちゃんとお客さんを引っぱっていけるバンドの姿を見せつけられたんだよね。憧れてたものを持ってたので、悔しいなと思った。憧れの渡井先輩です。
渡井 なんですか、そりゃ(笑)。もう、帰りますよ!
羽深 ゴメンゴメン。
渡井 でも、うれしいです。
歌に感化された部分が多いよ
渡井 僕の場合はマニアックな話になっちゃうけど、対バンしたときのジャズコ(ROLAND JC-120)のアンプ、レンタルでしたよね?
羽深 うん。
渡井 それを知らないでリハーサルから観てたんですけど、とんでもなくいい音を出してらっしゃって。で、あとで聞いたら、レンタルしたジャズコってのがわかって、さらに衝撃だった。ライブに関しても、羽深さんならではのフレーズがちりばめられてて、「この人の頭の中、どうなってるんだろう?」って思いましたもん。音使いも人間としても、ミステリアスだったし。
羽深 そっか、どんな音出してたんだろ。自分では忘れちゃったな。今は自分のアンプ使ってるんだけど。まあ、そもそもジャズコはいいアンプだしね。
渡井 いやいや! 僕がやったら「ジャズコだな」みたいな感じにしかならないし、本当に持ち込みのアンプだと思ったので。羽深さんの音って、きらびやかでパシっと飛んでくる。けど、耳に痛くないのがすごい。
羽深 キンキンしないように心がけてるから。
渡井 そこがHaloと違う部分なんですよね。さっき羽深さんが言ったように、3ピースと4ピースではギターのアプローチも大きく違いますしね。もともと僕も前身バンドが3人で、ギター&ボーカルだったんですけど、歌いながらリードのフレーズを弾くことに挫折しまして……それに関してはもう、ジョゼはお手のものだし。
羽深 お手のものって(笑)。
渡井 3ピースでリードギターを弾いちゃうと、音がスカスカになってしまうというのが僕のイメージなんですけど、ジョゼは違いました。スカスカじゃなくて引き算をしてるような見せ方ができるバンドで、そこが「らしさ」って言える部分なのかなと。
羽深 ジョゼの音源を聴いた上でライブも観てくれてるから、音の引き方がよりわかるんだろうね。Haloとの違いで言うと、俺は歌のほうが感じてる。あったかいんだよ、声が。歌モノにおいては、バンドのカラーになるのってやっぱりボーカルの声質で。「あったかく包み込むような歌い方が、天然でできる人なんだな」って最初に思ったんだよね、渡井のことは。
渡井 ありがとうございます。
羽深 歌に感化された部分が多いよ、本当に。「こういう表現力がある人が周りにたくさんいるんだとしたらヤバイな」って気持ちも、出会わなきゃ芽生えてないしね。
渡井 僕のほうこそ、刺激になってますよ。
どんなことをやっても俺は俺でいられる確信
渡井 そう言えば、ジョゼはライブがめちゃくちゃ変わりましたよね!
羽深 お。マジで?
渡井 CHELSEA HOTELで観た頃って、言い方が悪いかもしれないけど、いい意味で内向きな印象だったんですよ。「己と闘う!」みたいなモードで。でも、「YOUNGSTER」(2016年1月リリースの3rdミニアルバム)を出したあとのライブは、視野が広がってて。今、すごく外を見てますよね?
羽深 そうやって分析されると、恥ずかしいなあ。
渡井 あははは(笑)。
羽深 そうだね、本当に自分たちを変えたくてね。Haloをはじめ、いろんな仲間と共演して感じたことを無駄にはしたくなくて、「俺らも外に向けてやってみよう」っていう気持ちになった。渡井は今、「いい意味で」と言ってくれたけど、悪い方向に行っちゃいそうでもあったから。
渡井 そうなんですか?
羽深 伝えたいことが前提にある上で、曲を作ったりライブをしたりしてるのに、今までのやり方で外を向いたら「コイツ、何が言いてえんだ?」って感じるんじゃないかなって。聴き手に合わせるわけではなく、でも自分の思いを伝えるために「俺はもっとできるんじゃないか」って考えに変われた。
渡井 外を向いてるとは言っても、ただ「みんなで行こうぜ!」みたいな安易な感じではなくて、ジョゼという芯をしっかり持ったまま、変われてる気がします。って、ごめんなさい、偉そうで(笑)。
羽深 いや、すごくうれしいよ。結局、歌詞にしろ、纏ってるものにしろ、俺の性格の根本的なところは絶対変わらないからね。渡井にもなれないし、「ウェーイ」みたいなパーティ野郎にもなれないじゃん? どんなことをやっても俺は俺でいられる確信は、「YOUNGSTER」のときに持てた。
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収録曲
- モラトリアム・ラヴ
- Carnival end
- サイダーは煌めいて
- 流星雨とアンブレラソング
- S・O・S
- 名もなきBGM
- バイタルサイン
- Halo at 四畳半 新作CD「万有信号の法則-EP」/ 2016年11月9日発売 / SPACE SHOWER MUSIC
- CD+DVD / 2484円 / DDCB-14047
- CD / 1296円 / DDCB-14048
CD収録曲
- モールス
- カイライ旅団と海辺の街
- メル・ユース
- ユリーカの花
DVD収録内容
- ep
- 春が終わる前に
- アメイジア
- 天文薄明の街へ
- トロイメライ
- 硝子の魔法
- 水槽
- アンドロイドと青い星の街
- ウユニの空へ
- 孵化
- ペイパームーン
- 海鳴りのうた
- リバース・デイ
- アストレイ
- 箒星について
- 飛行船
- 怪獣とまぼろしの国
ジョゼ
羽深創太(Vo, G)、中神伸允(Dr)、吉田春人(B)からなる3人組。2010年の結成以来東京・下北沢や渋谷を中心にライブ活動を展開し、2013年5月に初の全国流通盤「Aquarium」を発表する。2014年5月に前任のベーシストが脱退し、6月に吉田が加入し現在の体制となる。2015年1月に初のフルアルバム「Sekirara」を発表。2016年1月に「YOUNGSTER」、11月に「honeymoon」と題されたミニアルバムをリリースした。なお「YOUNGSTER」と「honeymoon」は共に根岸孝旨がプロデュースを担当している。
Halo at 四畳半(ハロアットヨジョウハン)
渡井翔汰(Vo, G)、齋木孝平(G, Cho)、白井將人(B)、片山僚(Dr, Cho)からなる4人組のロックバンド。2012年に現在の体制で活動をスタートさせ、同年10月に1stデモシングル「アメイジア」を発表した。2015年7月にはバンドにとって初の全国流通盤となるミニアルバム「APOGEE」をリリース。2016年11月には4曲入りの新作「万有信号の法則-EP」を発表した。