音楽ナタリー Power Push - JiLL × Kj(Dragon Ash) × YALLA FAMILY 座談会

ツバメのもとに集まった3組が紡いだ音楽

シンガー・JiLLが8月3日に初のアルバム「NAKED」を発表する。本作には「The Glitter Love」「FLOWER」「Make A Wish」「TSUBAME」といったシングルのほか、Kj(Dragon Ash)とYALLA FAMILYをフィーチャリングゲストに迎えた「Make the Road」やTarantula(Spontania)とコラボした「Naked」といった多彩な9曲が収められる。

音楽ナタリーでは「NAKED」のリリースを記念して彼女の素顔に迫る座談会を企画した。参加メンバーはJiLLと、アルバムに参加しているKj(Dragon Ash)、YALLA FAMILYの面々。音楽を媒介にして濃密な友情を育んでいる彼らと共にJiLLの素顔に迫った。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 小坂茂雄

JiLLは“超行動派の妹”

──JiLLさんは音楽ナタリー初登場なので、仲間の皆さんから彼女のことを紹介していただきたいです。

50caliber(YALLA FAMILY) 俺らからするとJiLLは妹みたいな感じですね。

Haku the Anubiz(YALLA FAMILY) 超行動派の妹。突然1人でニューヨークに音楽修行に行っちゃうし。

DJ I.O(YALLA FAMILY) 独特の雰囲気を持ってるよね。僕はアルバムのレコーディングに立ち会うことが多かったから、信じられないようなメロディを急に思いついたり、想像もできないようなアイデアを提案してきたりして随分驚かされた。

JiLL みんな、ちゃんと私のこと見ててくれてるんですね。すごい感動してます(笑)。

WEZ(YALLA FAMILY) こうやってインタビューを受けてると「NAKED」がついにできたんだなって改めて実感しますね。

Kj(Dragon Ash) 本当だよ。俺らはJiLLがずっと歌を志していて、いろんな経験をしたきたことを知ってるから、今こうしてインタビューを受けているのを見るのはなんだか不思議な気分。

JiLL

JiLL みんなと仲良くなってからもう6、7年は経つのかな。KjさんとかYALLAとか仲間が集まるバーがあるんですよ。私はたまたまそこの裏に住んでいて、ふらっとその店に遊びに行ってたら、いつの間にかみんなと友達になってた。

──JiLLさんは演歌もやってたんですよね?

JiLL はい。関西に住んでた頃です。先輩歌手に付いて行って、一緒にドサ回りとかしてましたね。前座で歌ったり。本当に大変でしたね。でも「何か違うな」って感覚があって、そのときにブラックミュージックの素晴らしさを知る機会を得て、演歌から逃げ出してすぐに東京に引っ越しました。それが18歳の終わりくらい。

──なんで演歌をやろうと思ったんですか?

JiLL 専門学生だった頃、歌のコンテストで賞金稼ぎみたいなことをしてたんですよ。

Kj マジで!? それサグすぎるよ(笑)。

JiLL でも、本当なの(笑)。で、コンテストに出てる私を見た演歌の人にスカウトされたんです。

旅立つJiLLのために作られた「Make the Road」

──アルバムにはKjさんとYALLA FAMILYをフィーチャーした「Make the Road」という曲がありますね。

JiLL この曲は4年前に作られているんですよ。

──そうなんですか。

JiLL 順を追って話すと……演歌の世界から抜け出して、1人でクラブとかで歌ってたんですけど、歌ってても全然光がないというか、道が見えなくて。音楽を辞めようか悩んでたんです。それでKjさんに相談したら「絶対辞めんな」って言ってくれたんです。Kjさんはもう忘れちゃったかもしれないけど。

Kj(Dragon Ash)

Kj もちろん覚えてるよ。音楽の仕事で成功できる人って、1000人に1人いるかいないかなんですよ。ほとんどの人がダメだからこそ夢がある職業とも言えて。だからこそ努力する価値があるし、人生を賭す意味があるんだよ。JiLLにはそういうことを知ってもらいたかった。

JiLL 私にはその言葉がすごくうれしかった。でも当時の自分には自信も実力も足りなかったから、計画は何もなかったけどニューヨークに行って何か新しい刺激を得ようと思ったんです。「Make the Road」はそうやって私がニューヨークに旅立つ前に、KjさんとYALLAのみんながプレゼントしてくれた曲なんです。

Kj ニューヨークに行くと言っても、片道切符だからね。俺はニューヨークに行くことがJiLLが音楽とつながっていられるかすがいのようなものになってほしかった。だから行く前に一度、本当のプロの作業を見せてあげようと思ったんです。トラックもJiLLと一緒にその場で作りました。ピアノでコードを弾いたり、リズムを構築したり。トラックをもらったりするだけじゃ、音楽がどうやって成り立っているかわかんないでしょ? 曲がゼロから完成するまでを見られるって経験は本当に大きいから。最初はガチなデモを作ろうみたいなノリでした。

Haku それでレコーディングするタイミングで、突然俺が呼ばれて。

Kj そう。「レコーディングするなら、Hakuを呼ぼう」みたいになったんだけど「HakuがいてWEZがいないのはおかしくない?」みたいな感じでだんだん話が大きくなって、結局YALLA FAMILYが全員そろったという。

I.O 当時は僕らもCDを出してなかったから、正直ちょっとうらやましかったですね(笑)。

50 俺はやる気に満ちあふれすぎて16小節でいいのに24小節もラップを書いちゃった。

Haku the Anubiz(YALLA FAMILY)

Haku 俺は5回も録り直した(笑)。

WEZ 俺は最後に呼ばれたから、来る途中に送られてきたトラックを聴いてリリックを書きながらスタジオに行ったんですよ。

Kj そうやってみんなでレコーディングしたんですけど、実は内緒で別の日にコーラス録りもしてて。それだけじゃなくて、仲間内のクリエイターたちがみんな「Make The Road」のためにこっそり動いてた。デザイナーがジャケを作ったり、映像作ってるやつがMVを編集したり。ちゃんとミックスもして、普通に売ってるようなCDを1枚だけ作って、それをニューヨークに行く前の送別会でJiLLに渡したんです。そのときに「実はコーラスはあいつとあいつがやってるんだぜ」って明かしてね。

JiLL 私はニューヨークに行く前にいろんな人に会っておきたかったんですよ。なのに誰も会ってくれない。「Make The Road」のためだったなんて知らなかったから、意味わかんなくて超キレてました(笑)。しかもMVがあったことも全然知らなかったから、サプライズで観せてもらったときはもう号泣でしたね。ニューヨークでもずっと聴いてたし、すごく支えになりました。

──アルバムに収録されているのは、レコーディングし直したものですか?

Kj いや、完全に当時録音したものだよ。それくらいのクオリティのものを作って渡したわけ。俺らは仲間がいなくなるとかそういうのが本当に嫌で。中学生のノリなんですよ。でもJiLLが決めたことだから、そこは全力で応援したかった。「Make The Road」という曲はその気持ちにぴったりなものになったと思うよ。

JiLL それが1stアルバムに収録されることになるなんて思いもしなかった。

JiLL ニューアルバム「NAKED」2016年8月3日発売 / 1500円 / UNY-1004 / UNITY
「NAKED」
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収録曲
  1. Intro
  2. Up and Over
  3. FLOWER
  4. TSUBAME
  5. NAKED feat. Tarantula from Spontania
  6. Get a Chance
  7. The Glitter Love
  8. My Voice
  9. "Make The Road" by the Late Sessions with Kj from Dragon Ash & YALLA FAMILY [Bonus Track]
JiLL(ジル)
JiLL

女性シンガー。16歳のときに演歌を学び始め、CMソングのコーラスを担当したり、倉木麻衣のツアーにコーラスで参加したりと活動の幅を広げていく。ニューヨーク留学を経て、2014年にアーティストとして本格始動。2016年8月にKj(Dragon Ash)、YALLA FAMILY、Tarantula(Spontania)らをフィーチャリングゲストに迎えた1stアルバム「NAKED」をリリースする。

Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)
Dragon Ash

Kj(Vo, G)、桜井誠(Dr)、IKUZONE(B)の3人で結成されたミクスチャーロックバンド。1997年2月にメジャーデビューを果たす。1999年に発表したシングル「Let yourself go, Let myself go」がヒットを記録し、一躍有名に。2002年にはシングル「Fantasista」がサッカーワールドカップのFIFA公式テーマソングの1つに選出された。その後もオルタナティブロックやヒップホップ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れたミクスチャーサウンドで独自の活動を続けるが、2012年4月にIKUZONEが急逝。以降はKj、桜井、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、DRI-V(Dancer)、ATSUSHI(Dancer)の6人にサポートベーシストを加えた編成で活動している。2014年1月に3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」をリリース。同年5月にはキャリア初となる東京・日本武道館ワンマンライブを成功させた。2015年3月にはKjが降谷建志名義でソロ活動をスタートし、6月に初のソロアルバム「Everything Becomes The Music」をリリースした。2016年4月から5月にかけてはDragon Ashとして約2年ぶりの全国ツアーを実施した。

YALLA FAMILY(ヤラファミリー)
YALLA FAMILY

50caliber(MC)、Haku the Anubiz(MC)、WEZ(MC)、DJ I.O(DJ)からなる、音楽とファッションを融合させたエンタテインメントグループ。LAで同じ音楽性、似ている感性、異なる個性を持った4人が出会い、2007年にグループを結成した。結成と同時に共同生活を始め、トーランス、ハリウッド、ダウンタウンを中心に音楽活動を行う。2008年にはA.I.のLA凱旋公演のオープニングアクトに抜擢されたほか、FINGAZZのコンピレーションアルバム「NEXUS」のメインアーティストに採用された。その後、個々の可能性を高めるためソロ活動に徹し、2011年1月に日本で活動を再開させる。DIX AZABUを本拠地とし、レギュラーイベント「YALLA PARTY」をオーガナイズしながら、日本各地でライブ活動を展開。2014年1月に1stフルアルバム「BEGINNING」を、2014年11月に2ndアルバム「DREAMER」を発表し、2016年8月に3枚目のアルバム「FEEL」をリリースする。