音楽ナタリー Power Push - JiLL × Kj(Dragon Ash) × YALLA FAMILY 座談会

ツバメのもとに集まった3組が紡いだ音楽

孤独の乗り越え方を学んだニューヨーク生活

──JiLLさんはニューヨークでどんな暮らしをしていたんですか?

JiLL 語学学校に行きつつ、Blue Noteとか老舗のライブハウスのオープンマイクで歌ったり、セントラルパークで音楽やってる人に混ぜてもらったりしてました。自分の経験してないことに興味があるんですよ。だからいろんなことをしたかった。

左からKj(Dragon Ash)、JiLL、YALLA FAMILY。

Kj ニューヨークで強盗に遭ってるんだよな。

JiLL そうなんです。ハーレムに住んでたんで。

Haku 俺は高校のときニューヨークに住んでたから、あの街の楽しさも怖さも知ってるんです。だからずっと「ハーレムとかに住んじゃって、本当に大丈夫なの?」って言ってたんですよ。

JiLL 私は「大丈夫っしょ!」みたいに言ってたんですけどね。あのときは精神的に落ちましたね。HakuがLINEですごい励ましてくれました。でもそれも含めて孤独の中でどうやって生きていくかみたいなことは学ぶことができたと思います。

Kj 日本にいる俺たちは本当に心配で、最低でしたよ。もう「2秒で帰って来い」って感じだった(笑)。でも強盗のことはともかく、ニューヨークに行くからにはバックパックいっぱいに経験値を詰め込んでこないと無駄だと思ってたから、そこは応援してました。

JiLL 日本でみんなと過ごした日々はすごく濃かったから、やっぱり寂しかったですよ。

50 俺らYALLA FAMILYはLAだったけどアメリカに住んでたから余計に心配でしたね。俺らもしょっちゅう銃向けられたりしてたんで(笑)。

多彩な「NAKED」収録曲

──皆さんは「NAKED」のどの曲が好きですか?

Kj 俺はゴスペルっぽい「FLOWER」が好きかな。あの曲を初めて聴いたのはライブだったんですよ。俺はJiLLがスランプに陥ってるのを知ってたから、あの曲にたどり着けたことでミュージシャンとして1つ階段を上がったような気がしたな。脱皮した感じというか。アーティストはそういう感覚を言語化したり、音楽に成長を刻み込んだりすることが最低限の技能だと思うんだけど、それができてる気がした。

JiLL この曲を完成させるまでに半年くらいかかったんですよ。全然歌詞も書けなくて。書きたいことはいっぱいあるのに、それが全然まとまらない。ちょうど日本人がISに殺された事件があった頃で、何を伝えたらいいだろう……ってわからなくなっちゃって。

50caliber(YALLA FAMILY)

50 俺は「UP AND OVER」が好き。LAのフィンガズがプロデュースしてるんですけど、トラックもすごくよくて。

JiLL フィンガズはアメリカ人なので、私とメロディの感覚が違うんですよ。彼から提案されるものが私の予想だにしないようなものばかりだったんで、お互いにとっての着地点を見つけるのが大変でした。でも自分にない世界観をたくさん教えてもらえましたね。50もすごい手伝ってくれました。

──歌詞は誰かの背中を押すような応援メッセージですね。

JiLL そうですね。この曲はサッカー日本代表の太田宏介くんに「俺の応援歌作って」って言われて作ったんですよ。うれしかったですね。彼がオランダに行くタイミングでプレゼントしました。もちろんこの曲はこうちゃんの応援歌ではあるんだけど、自分もこの曲で励まされます。

Kj JiLLはニューヨークで「Make The Road」が支えになるって経験をしてるから、音楽が持つ力をわかってるよね。

WEZ(YALLA FAMILY)

WEZ 僕は「Make The Road」ですね。ライブをしたときの画が浮かぶんですよ。

Kj この曲はライブでブチ上がるよね。前にこの曲をライブでやったとき、壁をジャンプ台のように使うなって怒られちゃいました(笑)。

Haku 僕は「TSUBAME」かな。曲もそうなんですけど、ツバメって仲間内のシンボルなんですよ。タトゥー彫っちゃってますし。それをタイトルに使うところがJiLLのすごいところだなって思いました。漢らしい。

Kj そもそもみんなが出会ったのが“海ツバメの巣”って意味が付けられた場所で。俺も「Swallow Dive」って曲を作ってるし、タトゥーも入れてる。ツバメは俺らにとってライフスタイルとかも含めたキーワードなんです。

JiLL この曲には友達とか家族、ニューヨークで孤独だったこと、今まで生きてきた全部を詰め込みました。

I.O 僕は「The Glitter Love」ですね。JiLLが初めて出した曲で、一緒にプリプロしました。彼女が、Facetimeみたいなのを使ってボーカル録りしていて驚きましたね(笑)。

JiLLへのエール

──最後に皆さんからJiLLさんにエールを。

DJ I.O(YALLA FAMILY)

I.O 俺はJiLLのライブでDJをしてるので……とりあえずツアーは全力で一緒にやっていきましょう。ライブってミュージシャンにとっては一番大切な場所だから。Kjさんとかいつもステージ終わったらぶっ倒れるんじゃないかなって思うくらい全力だしね。がんばろう。

Haku そうだね。僕も一緒にツアーに行くから、まずはそこをしっかりやりたいですね。ライブが終わったらOKってことじゃなくて、ちゃんと結果を残せるようにやろう。

WEZ JiLLはライブのときすごい緊張するから、これからは堂々とみんなでステージに立ちたいね。

50 ライブは観客が1万人でも、2人でも同じだから。全力を出し切って、自分が楽しんで観客も楽しませられたらいいよね。

Kj 音楽をやってる人はみんな宇宙で一番この仕事が好きでやってる。JiLLはそういういろんな人たちからもらったたすきを全力で次に回さなきゃいけない。音楽をやってるとたすきの重さがどんどんわかってくる。だけどJiLLはいまだに信じられないようなシンデレラストーリーのまっただ中にいて。そういうのを間近で見られるのは、本当にありがたいし、うれしい。「おめでとう」はもうちょっと先に言うことにするよ。

JiLL ここを新たなスタート地点に、いろんな重みを感じながらアルバムの曲をみんなに聴いてもらえるようにがんばっていきたいです。人生1回なんでやれるとこまで走っていこうと思います。

Kj ヤバい、この空気は感動的すぎるね(笑)。

JiLL、Kj(Dragon Ash)、YALLA FAMILY。
JiLL ニューアルバム「NAKED」2016年8月3日発売 / 1500円 / UNY-1004 / UNITY
「NAKED」
Amazon.co.jp
収録曲
  1. Intro
  2. Up and Over
  3. FLOWER
  4. TSUBAME
  5. NAKED feat. Tarantula from Spontania
  6. Get a Chance
  7. The Glitter Love
  8. My Voice
  9. "Make The Road" by the Late Sessions with Kj from Dragon Ash & YALLA FAMILY [Bonus Track]
JiLL(ジル)
JiLL

女性シンガー。16歳のときに演歌を学び始め、CMソングのコーラスを担当したり、倉木麻衣のツアーにコーラスで参加したりと活動の幅を広げていく。ニューヨーク留学を経て、2014年にアーティストとして本格始動。2016年8月にKj(Dragon Ash)、YALLA FAMILY、Tarantula(Spontania)らをフィーチャリングゲストに迎えた1stアルバム「NAKED」をリリースする。

Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)
Dragon Ash

Kj(Vo, G)、桜井誠(Dr)、IKUZONE(B)の3人で結成されたミクスチャーロックバンド。1997年2月にメジャーデビューを果たす。1999年に発表したシングル「Let yourself go, Let myself go」がヒットを記録し、一躍有名に。2002年にはシングル「Fantasista」がサッカーワールドカップのFIFA公式テーマソングの1つに選出された。その後もオルタナティブロックやヒップホップ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れたミクスチャーサウンドで独自の活動を続けるが、2012年4月にIKUZONEが急逝。以降はKj、桜井、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、DRI-V(Dancer)、ATSUSHI(Dancer)の6人にサポートベーシストを加えた編成で活動している。2014年1月に3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」をリリース。同年5月にはキャリア初となる東京・日本武道館ワンマンライブを成功させた。2015年3月にはKjが降谷建志名義でソロ活動をスタートし、6月に初のソロアルバム「Everything Becomes The Music」をリリースした。2016年4月から5月にかけてはDragon Ashとして約2年ぶりの全国ツアーを実施した。

YALLA FAMILY(ヤラファミリー)
YALLA FAMILY

50caliber(MC)、Haku the Anubiz(MC)、WEZ(MC)、DJ I.O(DJ)からなる、音楽とファッションを融合させたエンタテインメントグループ。LAで同じ音楽性、似ている感性、異なる個性を持った4人が出会い、2007年にグループを結成した。結成と同時に共同生活を始め、トーランス、ハリウッド、ダウンタウンを中心に音楽活動を行う。2008年にはA.I.のLA凱旋公演のオープニングアクトに抜擢されたほか、FINGAZZのコンピレーションアルバム「NEXUS」のメインアーティストに採用された。その後、個々の可能性を高めるためソロ活動に徹し、2011年1月に日本で活動を再開させる。DIX AZABUを本拠地とし、レギュラーイベント「YALLA PARTY」をオーガナイズしながら、日本各地でライブ活動を展開。2014年1月に1stフルアルバム「BEGINNING」を、2014年11月に2ndアルバム「DREAMER」を発表し、2016年8月に3枚目のアルバム「FEEL」をリリースする。