目指せ!著作権王|トンツカタンと学ぶ著作権

2024年3月に行われた「R-1グランプリ2024」の決勝戦後、ある“事件”が発覚した。トンツカタンのお抹茶が自身のネタ「かりんとうの車」にて使用した楽曲が、楽曲ダウンロードサイトおよび作曲者が定める規定に沿わない形で使用されていたため、該当ネタをTVerやYouTubeから削除する騒動となったのだ。お抹茶本人および所属事務所のプロダクション人力舎が早急に謝罪したため事態はすぐに沈静化し、さらに元ネタ曲「天水のユーロビート」の作曲者であるマニーラがお抹茶のために新曲を制作するという心温まる展開も見られた。

音楽ナタリーでは昨年から日本音楽著作権協会(JASRAC)との共同企画「音楽と生きる、音楽で生きる」を実施し、アーティストと著作権について考える特集を展開している。そこで今回は派生企画として、トンツカタンに著作権について改めて学んでもらう機会をセッティング。JASRAC広報部の安藤暖さんに協力を仰ぎ、「目指せ!著作権王」と題してトンツカタンの3人に著作権に関するクイズに挑戦してもらった。

取材・文 / 張江浩司撮影 / 大槻志穂

著作権王クイズ ルール説明

  • ◯×問題10問、記述問題3問を出題。
  • ◯×クイズは正解すると1ポイント、記述問題は3ポイントをゲットでき、合計ポイントの最も高い人物が優勝。
  • 優勝者にはJASRACからプレゼントも!
優勝者に贈られるJASRACグッズ。
左からトンツカタンの森本晋太郎、お抹茶、櫻田佑、JASRAC広報部の安藤暖さん。

左からトンツカタンの森本晋太郎、お抹茶、櫻田佑、JASRAC広報部の安藤暖さん。

◯×問題スタート:お抹茶の出足好調!

Q1
思想や感情を創作的に表現したものを著作物、作った人を著作者と言う。著作物は誰でも自由に使うことができる。

3人の回答

  • 森本

    ✗

  • お抹茶

    ✗

  • 櫻田

    ✗

森本晋太郎 「自由に」が違うんじゃないかなって。特定の条件を満たして初めて使うことができるんじゃないでしょうか。

お抹茶 「他人のものを勝手に使っちゃダメ」っていう家庭で育ったので。著作物も「もの」なのかなと思って×にしました。

櫻田佑 今日は全部×でいこうと思ってます。

森本 ちゃんと考えてくださいよ!

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✗

安藤暖 皆さんがおっしゃった通り、他人の著作物を使うときには基本的に著作権を持っている権利者の許諾が必要になります。この著作権には禁止権という性質があります。

森本 禁止権って初めて聞きました。

安藤 自分の著作物が勝手に使われないようにできる権利という意味ですね。ちなみに勝手に複製されない権利を複製権、勝手に上映されない権利を上映権、勝手に演奏されない権利を演奏権と言います。ほかにも使い方に応じた権利があって、それらの権利の総称が著作権なんです。

お抹茶 なんか笑っちゃいますね。

森本 なんで? 1問目でパンクしないでくださいよ。

Q2
著作権を持つ権利者の代わりに、著作物を使用したい人から使用料を徴収し、権利者に分配するJASRAC。JASRACとは「Japanese Society for Rights of Authors, Composers」の略である。

3人の回答

  • 森本

    ◯

  • お抹茶

    ✗

  • 櫻田

    ✗

森本 考えたこともなかったですけど、(インターナショナルスクール仕込みのネイティブな発音で)Japanese Society for Rights of Authors, Composersか。英語としても意味は正しいので、◯だと思います。

お抹茶 ジャスラックのつづりはJASRAKなんじゃないですか? そこが違うんじゃないかな。

森本 Kはなんの頭文字なの?

お抹茶 それは考えてないんだけど。

森本 考えてないの!?

お抹茶 この記事の後半でKを思い付いたら発表します。

櫻田 ジャスラックというのは人名なんじゃないですかね。著作権を発見した研究者の。

森本 著作権って発見したりするんですか?

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✗

安藤 「Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers」の略になります。

森本 本当は最後にPがあるんですか? しゅんしゅんクリニックPと同じ方式?

安藤 これはひっかけ問題なんですが、Publishersは音楽出版社のことなんですね。JASRACは作詞家、作曲家と音楽出版社の権利のための組織ということです。JASRACが設立された1939年には音楽出版社は対象ではなかったんです。現在は音楽出版社のための組織でもあるので、正式名称にPublishersは入っているのですが、略称は「JASRACP(ジャスラックプ)」にはなっていません。ちょっと呼びづらいですし(笑)。

森本 カッコよさを優先したんですね(笑)。

安藤 あまり馴染みがないかもしれませんが、音楽出版社というのは楽曲のプロモーションを行う会社になります。音楽出版社は、作詞家や作曲家といった音楽クリエイターから楽曲の著作権を預かって、その管理をJASRACに委託しています。JASRACは音楽クリエイターや音楽出版社といった権利者の代わりに音楽を使う方から著作権使用料をいただいて、音楽クリエイターや音楽出版社に分配しています。

Q3
学生が学園祭で入場無料のライブを開催し、人気バンドの楽曲を演奏する場合は著作権使用料を支払わなくてよい。

3人の回答

  • 森本

    ◯

  • お抹茶

    ◯

  • 櫻田

    ◯

森本 やっぱり入場無料だと払わなくていいのかなと。「頼むから◯であってくれ」という全国の学生の思いを代表しています。

お抹茶 学生の前に“苦”が付くと思うんですよね。苦学生の皆さんは大変なんで、もう何をしてもお金払わなくていい!

森本 さっきのKは苦学生のKですか?

お抹茶 違います。

森本 ここにいる全員がつながると思ったのに!

櫻田 (出題者が)3回続けて×にする勇気はないだろうと思って◯にしました。自分も不安になってきたんで。

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◯

安藤 入場無料ならすべてのライブで使用料を支払わなくてよいというわけではありません。「入場料などのお金が必要ない」ことのほかに「非営利」「無報酬(出演する実演家に報酬が支払われない)」という3つの条件を満たした場合は、自由に音楽を演奏できるということが著作権法38条1項に定められています。「学生による学園祭での入場無料のライブ」はこの3つの条件を満たしているので許諾を得ずに利用することができ、使用料も支払わなくてよいということになります。

森本 営利目的でやっていたけどお客さんが集まらなくて、結果的に収益がプラスにならなかった場合はどうなるんですか?

安藤 営利目的なので、使用料を支払う必要があります。収益がプラスかどうかではなくて、あくまでも「入場無料」「非営利」「無報酬」のすべてを満たしている必要があります。

お抹茶 非営利で無料なのに、おひねりをもらっちゃったときはどうですか?

安藤 おひねりが必須の場合は有料ということだと思いますが、求めていないけどもらっちゃったという場合は、具体的な状況を見て営利性があるかどうかや報酬にあたるかどうかを考えることになると思います。

森本 ケースバイケースなんですね。

Q4
好きなアーティストの楽曲のカバー動画を自由にYouTubeへアップしてもよい。

3人の回答

  • 森本

    ✗

  • お抹茶

    ◯

  • 櫻田

    ✗

櫻田 これで注目されてる人もいるけど、当然ダメなものだと思ってました。

お抹茶 僕もダメだと思ってたんですけど、わざわざ問題にするということはOKなんじゃないかな。

森本 そもそもYouTubeには、こういうカバー演奏の動画をアップしたらその収益を権利者に渡すようなシステムが備わっていたような気がするから、ということは×なんじゃないですかね。

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◯

安藤 YouTubeとJASRACは包括的な利用許諾契約を結んでいて、JASRACが管理している楽曲のユーザーの利用行為についてYouTubeが代わりに手続きをして著作権使用料を支払っているので、ユーザーは動画を上げるときにJASRACへ手続きをする必要はありませんし、使用料の支払いもする必要はありません。JASRACは、YouTubeだけでなく、InstagramやTikTokなどの動画投稿サービスとも同じような包括利用許諾契約を結んでいるので、これらのサービスに動画を上げるときには基本的にユーザーの手続きは不要です。ただし、使用する楽曲や動画の目的によっては手続きが必要な場合もあるので、詳しくはJASRACのホームページをご覧ください。手続きが不要なサービスの一覧も掲載しています(参照:YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用)。

Q5
好きなアーティストの楽曲のカラオケ動画を無断でYouTubeにアップしてもよい。

櫻田 お抹茶がYUKIさんの曲をカラオケで歌ってYouTubeにアップする際にお金を払うかどうか、ってことですか。

お抹茶 僕の好きなYUKIちゃんね。それはぜひ払いたいけど。

森本 カラオケということがポイントだと思う。カラオケ印税って聞いたことあるので、それがあるのに無料でアップしたらややこしくなるんじゃないかな。

櫻田 いや、カラオケで歌った時点でアーティストには印税が支払われてるはずだから、動画に関しては払わなくていいんじゃないですか。

お抹茶 「好きなアーティスト」と書いてあるから、やっぱり好きならお支払いしたほうがいいと思う。

3人の回答

  • 森本

    ✗

  • お抹茶

    ✗

  • 櫻田

    ◯

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✗

安藤 著作権とは別に、音源にも権利があります。Q4のように自分で演奏したカバー音源をYouTubeにアップする分にはユーザーが許諾を得る必要はありませんが、カラオケ音源の権利は通信カラオケ事業者などのカラオケ音源の制作者に帰属するので、そちらの許諾が必要です。曲自体の著作権はクリアしているけど、音源の権利が問題だということですね。音源の権利は著作隣接権という権利の1つですが、これについては、のちほど詳しく説明します。

森本 芸人がカラオケライブみたいなものをやったときに、そのダイジェストがYouTubeに上がったりしますけど、映像の右上に「第一興商」とかカラオケ業者の名前が書いてあるんですよ。あれはちゃんと許可を取ったという証拠なんですね。

安藤 まさにその通りです。著作権とはまた別の権利が発生しているんですね。