J「BLAZING NOTES」インタビュー|この体の中に流れているものをカッコよく鳴らしたい (3/3)

全曲で「BLAZING NOTES」という1曲になる

──アルバムでは「TIME BOMB」をはじめ、冒頭から勢いのあるパワーチューンが並びますが、4曲目「Remenber」でグッと流れが変わります。ここにロックバラードが入ることで、アルバムとしての抑揚もついていると感じました。近年はサブスクで1曲ごとに聴く傾向にありますが、“曲集”として音楽を聴くということに、Jさんはどういう考えを持っているんでしょうか?

昔はアルバム単位で曲を聴くのが当たり前だったので、僕らはいい時代を過ごしてきたのかなって思うこともある。レコードに針を落として1曲目から聴いて、B面にいくっていう作業。そんな聴き方をしていた最後の世代だと思うし、アルバムにドラマ性を求めることを避けて通れない世代なんですかね。

──「BLAZING NOTES」も1~4曲がA面、というイメージですよね。後半の「Don't Look Back」はライブのクライマックスでも聴きたくなるし、最終曲「Let It Burn」はショーの締めくくりにピッタリだと感じました。

そういう意味では、収録曲すべてで「BLAZING NOTES」という1曲になるような思いで、アルバム構成を作っていた自分もいます。

──確かにこのアルバムには表題曲がありませんし、その意見には合点がいきます。

それが僕にとってのアルバム観。本当に手応えのある、「Jってヤツ」のすべてが詰まった最高のアルバムになったと思っています。

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ベースプレイにおけるJのテーマとは?

──本作には当然ベーシスト・Jの今のプレイが入っているわけですが、ズバリ自身が思う「最もJらしいベースプレイ」が入ったトラックというと?

コイツ何言ってんだ?と思われるかもしれないんですけど、「いかに簡単に弾けて、カッコいいフレーズを作れるか」が、いつも僕のテーマなんですよ。誰が弾いてもその瞬間、ロックスターになれる……そんなベースフレーズ、サウンドを作りたいなと思ってますね。

──特別なものじゃないけど、カッコいいという。

そうなんです。それでいうと「Walk On」なんてAをずっと8分で刻んでいるだけで、昨日ベースを始めた子でも楽しみながら弾ける。「Let It Burn」も休符がすごく多いし。僕自身の究極の目標、いかにベースを弾かないでカッコいいベーシストでいられるかを考えると、まさにベストな曲。「立っているだけでカッコよければそれでいいじゃん」みたいな(笑)。

──“ロックは背中で語る”みたいなところですね(笑)。音色ということでは、どちらもブーミーなドライブトーンになっていますが、それも音数を意識したサウンドメイクですか?

そうですね。基本的に自分が出す音というのは定まってはいるんです。フェンダーを持つようになってから、ロックベースのスタンダードなサウンドの中での究極を追い求めている自分がいて。その中でより自分らしさを出すことへの挑戦をずっとしているような気がしているんです。

──王道サウンドの中に、どう自分の色を入れていくかという。

その答えの1つはすでに持っていると思っていて。今おっしゃったドライブしたサウンドっていうのは、まさにJの音なんじゃないかな。

──各パートがハードに唸る曲が並ぶ中でも、リフが強烈な「Free Fall」は、4弦をD♭にまで下げたダウンチューニングとも相まって特にヘビーなナンバーに仕上がっています。

これはギターとベースがユニゾンしてどこまでもグルーヴしていくような、バンドとしてのカッコよさを表現したいと思って作った曲なんです。アルバムにはドラマ性も必要になってくるので、「Free Fall」が7曲目にあるのも、前後の流れあってこそなんです。

──ソロアルバムも13枚目となった現在、Jさんは新譜で自身のどのような姿を見せようと考えたんでしょうか?新しい面なのか、過去の自分をブラッシュアップした姿なのか。

逆にどう感じました?

──これまでと大きく違うことをやるのではなく、パンチ力をさらに上げた音を聴かせようとしているのかなと感じました。必殺技をパワーアップさせていくみたいな。

まさにそうです。それこそがすべて。自分の音楽世界があるとすれば、その先にある世界を描いているような気がします。それは借り物の表現ではなく、自分が楽器を手にする前から心に抱いていた情熱的なビジョンを今の自分が形にしたもの。つまり、今の自分が持てる最高のサウンドを表現しているということです。むしろ、そのビジョンに沿ってアルバムを作らなければならないと考えています。

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LUNA SEAとして立つ東京ドームにも期待

──そしてアルバム発売以降は、いよいよ作品を“引っさげた”状態でツアーを回っていくことになります。

ライブって同じメニューをやったとしても、毎回同じにはならないんです。その会場の熱、そのときのテンションを全部吸い込んで、音やパフォーマンスに替わっていくようなイメージがある。そして今まで積み重ねてきた音世界のさらに上に行くために、必殺技としての新曲を自分の弾倉に込めて、ライブで自分の最新形をどんどん見せていく……その繰り返しを僕らは楽しんでいる気がするんです。

──ライブでは常にそれぞれの楽曲の進化系を楽しめるということですね。

僕らは、みんなと一緒に新しい世界へ飛び出していく準備をしているんです。ライブが終わったあと、今までの自分や見ていた世界が変わってしまうくらいの音を届けたい。そんな思いを持ってツアーをやっています。

──またライブという意味では、LUNA SEAの東京ドーム2公演も目前に迫っています。初日はGLAYとの対バン、2日目は「黒服限定GIG」です。

2024年は35周年記念ツアーということで、今まで出してきたアルバムに特化したライブを各地でやってきたんですね。自分たちの35年間を振り返ったときに、すごく重要なライブの1つが、GLAYとの東京ドームだった(1999年12月23日開催「The Millennium Eve」)。もう25年も経ちますが、僕たちにとって大切な一夜だったんです。この35周年の間にもう一度やることができないかな?って、GLAYのみんなに聞いてみたんですね。もう二つ返事でOKだと。同じ時代を生きてきたバンドとして、最高の瞬間を僕らはまた楽しもうとしているんです。

──どんな夜になりそうですか?

この間、GLAYとLUNA SEAのメンバー全員で打ち合わせをして、いろいろ悪戯を計画しましたよ。今しかできないようなことが、その夜繰り広げられると思いますよ(笑)。そして2日目は僕たちのワンマン。「LUNATIC TOKYO 2025」と、僕たちが最初に東京ドームでやったときのタイトルを付けたんですけど、LUNA SEAにとって東京ドームは特別な場所だし、バンドの活動においても特別な夜になると思います。

──バンドの“終幕”も東京ドームでしたから。

そのこともあるんですよね。そういう意味では、東京ドームはファンのみんなにとっても複雑な思いのある場所でもあると思うんです。僕の考えとしては、そんなネガティブな思いに、みんなで落とし前をつけにいきたいと思っています。本当に2日間すごいライブになると思うので、ぜひ皆さん遊びに来てほしいですね!

──しかし、本当に忙しい2025年上半期になりそうですね。体力は万全ですか?

僕はけっこう前にお酒も飲まなくなったし、タバコも吸わなくなったんですね。別に具合が悪くなったとかじゃなくて、必要としなくなったタイミングがあって。今生きているこの瞬間をすべて、この目にこの体に焼き付ける。「酔っ払っている場合じゃねえよ」って。それに、ライブの時間って魔法がかかっているから、そんな日々はなんでもできちゃう気がするんですよ。それでも、去年は骨折しちゃいましたけど(笑)。

──魔法が背中を押しすぎたのかも(笑)。改めてひさびさのソロアルバム、本当に聴きごたえのある内容でした。開催中のツアーに限らず、今後のソロ活動にも注目ですね。

自分自身にとってとても大切なアルバムができあがりました。最高に熱いロックアルバムになっているので、刺激が欲しい仲間たちがいたら、ぜひチェックしてください。そしてアルバムを聴いて「おおーっ!」なんて感じてくれたら、一緒にライブで盛り上がりましょう。2025年、燃え上がるような1年をみんなとともに過ごしたいなと思っています。

公演情報

J LIVE TOUR 2025 -BLAZING DAYS-

  • 2025年1月11日(土)東京都 LIQUIDROOM
  • 2025年1月12日(日)東京都 LIQUIDROOM
  • 2025年1月18日(土)宮城県 Rensa
  • 2025年1月26日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2025年2月1日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2025年2月9日(日)神奈川県 SUPERNOVA KAWASAKI
  • 2025年2月15日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2025年3月1日(土)石川県 Kanazawa AZ
  • 2025年3月2日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2025年3月8日(土)京都府 KYOTO MUSE
  • 2025年3月9日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2025年3月15日(土)北海道 cube garden
  • 2025年4月5日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2025年4月6日(日)大阪府 Yogibo META VALLEY
  • 2025年4月12日(土)東京都 LIQUIDROOM
  • 2025年4月13日(日)東京都 LIQUIDROOM

プロフィール

J(ジェイ)

1992年、LUNA SEAのベーシストとしてアルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年のバンド活動休止期間にシングル「BURN OUT」でソロデビューを果たす。2000年12月のバンド終幕以降、本格的なソロ活動を開始。LUNA SEA時代からソングライターとして知られる彼ならではの、パワフルでパンキッシュなロックサウンドが高い支持を得る。2003年にはソロとしては初となる東京・日本武道館でのライブを実施した。2008年にLUNA SEAが“REBOOT”(再結成)して以降は、ソロと並行して音楽活動を展開。2017年3月に、ソロデビュー20周年を記念してベストアルバム「20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017>[W.U.M.F.]」をリリースした。2019年にフェンダーとエンドースメント契約。2022年3月にソロデビュー25周年を迎え、1stアルバム「PYROMANIA」、2ndアルバムBLOOD MUZIK」、3rdアルバム「Unstoppable Drive」がサブスク配信された。2025年1月にアルバム「BLAZING NOTES」を発表。LUNA SEAとソロの両方で精力的な活動を継続している。