キーワードその⑧ “ギフト”
──というわけで、このたび4作目となるオリジナルアルバム「This One's for You」が完成しました。テーマは“ギフト”ということですが。
今まで出させていただいた3枚のアルバムにもそれぞれコンセプトがあって。「水彩 ~aquaveil~」は“色”、「PopSkip」は“新生活応援”、「Rhythmic Flavor」は“新たな挑戦”というふうに。それがあったうえで、今回はもう4枚目にもなるし、今まで作ってきたものをまとめて「伊藤美来として作りあげてきた音楽をプレゼントにしちゃおう」と考えました。これまでは聴いてくれる方たちと一緒に模索してきた感じだったんですけど、今回は自信を持って「自分の歌を“プレゼント”なんて言っちゃうよ?」っていう、それくらい成長した姿を見せるアルバムにしたいなと。「ここまでできるようになったよ」という思いをパッケージして、それをみんなに受け取ってほしいという気持ちで作ったアルバムです。
──先ほどのお話にあった「伊藤美来の音楽とは?」をそのまま冠したようなアルバムタイトルですよね。
はい、その通りです。4枚目にして、ようやくそれを胸張って言えるようになりました(笑)。
──全11曲のうち、6曲が新曲となっています。まず1曲目「laid back」、2曲目「ユニットバス」と、すごくメロウなオープニングのアルバムになっていますね。
そうなんです。「laid back」は「え、これが1曲目なの?」みたいな、ちょっとしたサプライズというか。曲調的には驚きもあるんですけど、「ずれたままでいいの」という歌詞の通りに人それぞれのスタンスを肯定してあげるような楽曲なので、内容的にはこのアルバムの1曲目にとてもふさわしいものになっていると思います。その流れで来る2曲目の「ユニットバス」は、ゆいにしおさんの提供曲で、以前作ってもらった「hello new pink」という楽曲で描かれていた男女の後日談になっているんです。とても“読み応え”のある楽曲なんじゃないかなと思いますね。
──そして既発曲「気づかない?気づきたくない?」に続いて「Oh my heart」と、今度は一転クールなダンスナンバーが続きます。
「Oh my heart」は曲順ありきで、「気づかない?気づきたくない?」のあとに置くことを前提に作られたものなんです。この流れも素晴らしいですし、「私もこんなカッコいい女になりたいな」って背中をグッと押される楽曲ですね。聴いているだけでやる気が出ます。
──かと思えば、その次には「Gift」「100年前に会いましょう」とジャジーなスウィング曲が並びます。
「Gift」は私が作詞をさせていただいていて、自分の中にあるすべてのポジティブさを詰め込んだような楽曲です。楽曲自体も華やかですし、アルバムのコンセプトをそのまま落とし込んだ歌詞になっていて。「なんでこの曲で作詞をさせるんだろう?」と思うくらい難しい楽曲だったので(笑)、ぜひ歌詞にも注目してもらいたいですね。その次の「100年前に会いましょう」は映画の世界に入り込めるような楽曲で、まるで“ギフト”のようなワクワク感が得られると思います。タイムスリップをするような気持ちで聴いてもらえたらうれしいです。
──そこから既発曲「傘の中でキスして」「パスタ」を挟んで、新曲「トロイメライ・ミライ」からの「青100色」「La-Pa-Pa Cream Puff」という、王道感あふれるラスト3曲の畳みかけがすごく気持ちよかったです。
ありがとうございます。「トロイメライ・ミライ」は今回のアルバムの中で一番、聴いてくれるお客さんや応援してくれている方とのつながり、絆を意識した楽曲になっていて。いろんな方に共感してもらえる歌詞でもありつつ、私とファンの皆さんとのことを歌った内容にもなっているという、2つの意味が込められているんです。ライブで歌う場面を想像しながら聴いてもらいたい1曲ですね。
キーワードその⑨ アルバムとしての作品性
──既発シングル曲「No.6」が今回のアルバムに未収録なのは、アルバムとしての作品性を重んじてあえて外したということなんですよね?
そうですね。私も最初に「『No.6』はアルバムに入れない」という話を聞いたときは「え、なんで?」と思ったんですけど(笑)。ありがたいことに「No.6」はすごくたくさんの方に聴いてもらえて、ミュージックビデオも楽しんでいただけた楽曲で、私の中でも存在感がすごく大きくなっているんですね。いろんな意味合いの強い楽曲だから、アルバムの中に入れて前後の流れをこの子に合わせたりするよりも、「No.6」は「No.6」単体として聴いてもらう形が一番この子にとって輝ける状態なんじゃないかなっていうことで。
──なるほど。
アルバムのコンセプトに合わなかったとかでは全然なくて。なんなら内容的にはぴったりなんだけど、この楽曲自体の意味が強すぎるから、「果たしてアルバムに入れられることが『No.6』にとって本当に幸せなんだろうか?」みたいな(笑)。
──アルバムが「『No.6』とそれ以外」みたいになっちゃうと、お互いに不幸だろうと。
そうですね。
──チームとして機能することを第一に考えて、最高の選手である中村俊輔をメンバーから外したフィリップ・トルシエ監督のような判断がそこにはあったわけですね。
あははは。いや、本当にそういう判断です。「輝けるところで輝いてくれ」っていう。
──とはいえ、商売を考えたら「No.6」は絶対に入れるべきですよね。「『No.6』が入っているアルバムなら買いたい」と思う人も少なからずいるでしょうから。
確かにー! 私はそこをあまり考えてなかったけど……実は最初、「『青100色』も入れない」みたいな話もあったんですよ。
──日本コロムビアさん、どうかしてますね。
本当にどうかしてる(笑)。
──もちろん、商売的には悪手でも作品性を重視するという姿勢はカッコいいんですけどね。
そうですよね! おかげですごく完成度の高いアルバムになったと思います。「No.6」を楽しみにしてくださっていたファンの皆さんには私の口から謝罪を申し上げますので、納得していただけたらいいなあと思います。
──でも実際にアルバムを聴いたら、皆さん納得すると思いますよ。
だからこそ、一刻も早く皆さんに聴いてもらいたいですね。
キーワードその⑩ ライブ
──アルバムリリース後の5月には、ライブツアー「伊藤美来 Live Tour 2023『Every Day is a Gift』」が開催されます。伊藤さんにとって、ライブとはどういう意味を持つ場ですか?
楽曲が完成する場所、みたいなイメージですね。先ほど「一方通行が嫌だ」というお話をしましたけど、ただ楽曲をリリースしただけの段階では、その曲はまだ未完成なんです。出しっぱなし、リリースしっぱなしではなく、聴いてくれる方の反応を受け取ることで初めて完成する。SNSのコメントやファンレターで感想を教えてくれる方もすごく多くて、それも本当に糧になっているんですけど、実際に目の前で皆さんの生の反応を見ることで「ああ、ちゃんと届いているんだ」と実感できるんですよね。あと、お客さんの前で歌ってみると思わぬ発見をすることもあって……「この曲って、こんなに受け入れられてたんだ」とか(笑)。
──そういう意味では、伊藤さんの音楽がもっとも“あるべき姿”になるのがライブという場?
そうですね。ちゃんと受け取ってもらって、その反応を見ることで私も「作ってよかったな」「がんばってよかったな」と思いますし。同じように、来ていただいた皆さんにも「聴いてきてよかったな」「ライブに来てよかったな」と思ってもらいたい。そんなふうにお互いが感じられる空間をこれからも一緒に作っていけたらなって。今回のツアーは「Every Day is a Gift」というタイトルを付けたんですけども、日々の中に小さな幸せを見つけて「今日もいい日だったな」と少しでも思えるような、そんなツアーにしたいと思っています。ぜひ遊びに来てもらえたらうれしいです!
ライブ情報
伊藤美来 Live Tour 2023「Every Day is a Gift」
- 2023年5月6日(土)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2023年5月13日(土)愛知県 名古屋市公会堂 大ホール
- 2023年5月21日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
プロフィール
伊藤美来(イトウミク)
10月12日生まれ、スタイルキューブ所属の声優。2012年に「第1回スタイルキューブ声優オーディション」に合格。翌2013年にゲーム「アイドルマスターミリオンライブ!」の七尾百合子役で声優デビューし、2014年に「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」の宇佐美奈々子役でテレビアニメ初主演を果たした。以降、「BanG Dream!」シリーズの弦巻こころ役、「五等分の花嫁」の中野三玖役、「プリンセスコネクト!Re:Dive」のコッコロ役などで人気を博す。アーティストとしては、20歳の誕生日である2016年10月12日に日本コロムビアよりシングル「泡とベルベーヌ」でソロデビューしたのを機に、作品を次々に発表。2023年2月に4thアルバム「This One's for You」をリリースした。
伊藤美来 Official Music Information Site | 日本コロムビア
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