石崎ひゅーい「Tokyo City Lights」インタビュー|悩み、抗い、夢を追うすべての人たちへ捧げるエール (2/2)

言いたいことが一貫している

──「Sunny Days」もリアルな曲だなと思いました。「なんか理不尽でぶつかった肩」「ひとりぼっちコンビニの光」など、痛いほど気持ちが伝わってきます。

自分のリアルな過去を振り返りながら書いた曲です。2、3年前に、おばあちゃんが亡くなって。「家族に対して手紙みたいなものを書きたいな」と思いながら、曲の原型を書いたんですよ。そのあとタイアップの話をいただいたことで、少し形が変わって、もうちょっと広い意味を持った、僕の人生ソングになりました。「Sunny Days」は、実は自分が昔やっていたバンドの名前なんです。

──「白熱」では「37.5度」という数字を繰り返しているのが印象的でした。高熱でもなく、かといって平熱でもない。消えない微熱という感じがして。

たまに熱を出すことがあるんですけど、フラッとしながら、ちょっとうれしくなるんですよ。インフルエンザで高熱を出して寝込むのも、つらいけどなんか好きで。そういう感覚、ありませんか?

──ちょっとわからないですね。なぜうれしくなるんですか?

「あっ、俺にも熱があるんだ!」みたいな。平熱のときは自分に熱があるってよくわからないけど、37.5度くらいになると、さすがにわかるから。「人間だな」って感じがするんですよね。そういうところから着想を得て書いた曲です。

──先ほど出てきた「まだ足りない」という感覚がずっとあるという話とも重なりますね。

そうですね、確かに。このアルバム、今までよりも言いたいことが一貫している気がします。このアルバムの中で一番熱い、かなりまっすぐでロックな曲じゃないですか。そういう曲をトオミさんと一緒に作ったというのもまた熱い。

石崎ひゅーい

結局は「Tokyo City Lights」という言葉に集約される

──そんな中で、9曲目の「手品」はほかの曲と質感が違うように感じました。まるで天から授けられた言葉を歌っているような。

実はこの曲は、映画「あなたの息子ひき出します!」の主題歌なんです。以前、映画「そらのレストラン」やドラマ「ジャパニーズスタイル」でご一緒した深川(栄洋)監督の自主映画に呼んでいただいて。劇中で手品が扱われていて、そこからインスピレーションを得て書きました。言葉は僕のフィルターを通しているけど、映画の主人公の心情を歌っているので、授けられた言葉っていうのは、ある種その通りというか。

──なるほど。

演技の現場に入ると、普段とは違うスイッチが入るんですよ。カメラが回っていないときも含めて、基本的にはその人物になろうと思いながら過ごしているから、脳の使い方や物事の感じ方が変わってくる。「いつもとは違った自分の心の窓が開いているな」と思いながら曲を書くのはすごく面白いし、そういうときってメロディも言葉もバッと出てくるんです。「優しさってなんだろう」「正しさってなんだろう」ということを頭がぐちゃぐちゃになるほど考えさせられる映画なので、人の真理みたいなものを僕なりにちゃんと描きたいなと思って。ワンコーラスできて、「監督にも聴いてもらいたいな」と送ったら、「主題歌で使っていい?」と言っていただいた、という流れでした。僕自身「こういう作品にひさびさに出会ったな」と感じた映画なので、皆さんにもぜひ観ていただきたいですね。

──「手品」から「Season2」へ至るエンディングの余韻が重厚で、時間をかけて噛み締めたくなります。改めて、どんなアルバムになったと感じていますか?

大人の青春だったり、夢や理想をアルバムのテーマにしようと決める前に書いた曲も入っていますけど、結局は「Tokyo City Lights」という言葉に集約されるような気がしていて。「アルバムを作るから」というよりは、常に持っている感情……「これからもずっと持ち続けていくだろうな」という感情がアルバムになったのかなと感じています。僕が普段向き合っているものは音楽ですけど、みんなそれぞれ、いろいろな仕事をしている。みんなと同じ目線で葛藤したり何かと向き合ったりできる、そんな作品ができたんじゃないかという実感がありますね。あとは、最初のほうに話した通り、アレンジャーの方々が石崎ひゅーいの新しい蓋を開けてくれて、僕自身「こういう挑戦ができるんだ」ということを感じられたアルバムでした。ここからまた探求心を持って、どんどん音楽をやっていきたいなと思います。

石崎ひゅーい
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これからは濁さずに言っていきたい

──7月にはCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、LINE CUBE SHIBUYAでワンマンライブ「石崎ひゅーい LIVE 2026 -City Lights-」が開催されます。2024年5月に国際フォーラム ホールCで開催した初のホールワンマン「石崎ひゅーい LIVE 2024『宇宙百景』」以降、着実にホール会場でのライブ経験を重ねられていますね。

僕は今、考えなくても言葉が届いてきて、バシッと胸に響くような歌を歌いたいと思っているんです。それを踏まえると、椅子があって音もいいホールという環境はちょうどいいんじゃないかと。「ホールいいですよね」と言ってくれるファンの方も多いし、スタッフからもそう言われます。歌に没頭できる場所なんだろうなと感じるし、「それなら没頭させないと」って思います。

──そしてゆくゆくは武道館ということですね。

その通り。これからはもう、口酸っぱく言っていきますから! そもそも東京国際フォーラムでホールライブを初めてやったのも、「武道館に向けて」という意識があったからなんですよ。

──でもそのときは、MCで武道館の話はしていませんでしたよね?

そうですね。ファンのみんなにちゃんと言うようになったのは最近です。でもスタッフとの会話の中では武道館という名前を出していたから、どこかのタイミングで「濁してるよね」と言われたんですよ。そう言われて、「確かに」「誰に気を使って、濁しているんだろう?」と自分でも思って。

石崎ひゅーい

──それは最初のほうにおっしゃっていた、「口に出すのが恥ずかしい」という思いがあったということですか?

たぶんそうだと思います。俺が恥ずかしいと思っていたということは、同じように、本当にやりたいことを言えないまま生きている人もきっといるんだろうなって。だからこそ、これからは濁さずに言っていきたい。「濁すほうがダサい」くらいのマインドでいようと思う。そういうことを歌っているアルバムです。

──武道館という夢を叶えたとき、石崎さんは何を感じると思いますか?

どうなんだろう? ……わからないですね。どんな感情になるのか全然想像できないし、夢って結局追いかけ続けるしかないから、夢の形は自分では一生見られないのかなと思います。ゴールテープを切ったとしても、すぐに「また次」ってなりそう。そう考えると、音楽を作る、歌を歌うという行為には際限がなさそうですね。

石崎ひゅーい

公演情報

石崎ひゅーい LIVE 2026 – City Lights –

  • 2026年7月4日(土)大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
  • 2026年7月25日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューを果たす。2013年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2020年11月、菅田将暉へ提供した映画「STAND BY ME ドラえもん 2」の主題歌「虹」が大ヒットを記録する。2026年3月、6thアルバム「Tokyo City Lights」をリリース。7月に東阪でホール公演を開催する。「アズミ・ハルコは行方不明」や「そらのレストラン」といった映画に出演するなど、俳優としても活躍中。