石崎ひゅーい「night milk」インタビュー|「鳥肌が立った」オリジナルアーティストも絶賛の初カバーアルバム (3/3)

あの魔法みたいなボーカルを習得できたら

──ほかの収録曲についても聞かせてください。まずは、藤井風さんの「旅路」から。

「旅路」は、本当に温かい曲ですよね。この曲に関しては、藤井風さんの歌い方をめちゃくちゃ参考にさせてもらいました。風さんの歌はリズムに対して後ろノリなんだけど、全部めちゃくちゃ気持ちいい場所に着地するんですよ。あの魔法みたいなボーカルを習得できたらと思いつつ、僕はわりと前ノリなので、苦労しましたね。けっこう大変でしたけど、そこを無視したら挑戦にならないので。習得したとはまだ言えませんが、今回この曲を歌えた経験は、自分のこれからの歌作りにも必ず役立ってくると思います。

──「旅路」の編曲を手がけたYaffleさんは、石崎さんの楽曲「Season2」の編曲も手がけていますよね。

実は「Season2」のアレンジをYaffleさんに頼もうと思ったのは、風さんの楽曲を聴いて、サウンドに惹かれるものがあったからなんです。一緒に曲を作らせてもらったときの会話とかも新鮮でしたね。Yaffleさんが「この曲いいよね」と挙げてくるのが、僕の知らないイギリスのインディーズバンドだったり、アメリカのちょっと昔のブラックミュージックだったりして。

──Aimerさんの「蝶々結び」については、どのような思いで選曲を?

「蝶々結び」もすごく好きな曲です。トオミさんとも話していたんですけど、“Aimer前”と“Aimer後”ってあると思うんですよ。

──紀元前と紀元後みたいな?

そうそう。Aimerさんの歌には不思議な浮遊感がある。言葉尻の締め方も独特なんですけど、それに影響を受けた若い世代の方ってめちゃくちゃいるだろうなと思うんです。あの浮遊感をどう解釈するかを自分の中ですごく大切にしながら、この曲も「挑戦だ」という気持ちで歌いました。あと、僕は野田洋次郎さんの楽曲もすごく好きなので。この言葉の詰め方、点(音符)の多さは、やっぱり野田さん節ですよね。「この感じ、素敵だな」と思いながら歌わせていただいて。ボーカル面でもソングライティング面でも、たくさんのことを吸収できた曲でした。

石崎ひゅーい

──Mrs. GREEN APPLEの「点描の唄(feat. 井上苑子)」についてはいかがでしょう?

この曲が一番難しかったです。レンジが広くてメロディにすごく抑揚があって、自分にとっては歌いやすいのかなと最初は思っていたんですよ。僕の曲にもそういうメロディが多いので。だけど歌うとわかるんですよね。「あっ、ここにこういうこだわりがある!」というふうに。そのこだわりを1つひとつ解釈して、習得して、歌っていく作業だったんですけど、メロディの細かい動きとか、裏声の使い方とか、僕にはないものばかりで。そういう意味で一番「なるほどな!」と思った曲かもしれない。素晴らしい楽曲に出会えました。

──大森元貴さん特有の節回しを石崎さん流に表現されていて、さすがだなと思いました。

すごくいい挑戦をさせてもらったし、勉強になりました。女性と男性が歌っている曲だから、キー設定もムズくて。1本にまとめるのも大変でしたけど、自分としてはいいところに収められたかなと。

石崎ひゅーい

──平井堅さんの「ノンフィクション」は、「愛し君へ」と同じくライブで歌っていましたね。

大好きな堅さんの曲です。この曲は、めちゃくちゃ歌ってるんですよ。「ナイトミルクLIVE」でも歌ってるし、カラオケとかでも歌ってる(笑)。「瞳をとじて」と「ノンフィクション」は僕にとって宝物みたいな曲。堅さんにとってもすごく大切な曲なんだろうなということは歌詞を見てわかっていたので、最初は「僕が歌ってもいいのかな?」という気持ちが若干あったんですよ。だけど歌詞の内容が「ナイトミルク」にすごく合っているのと、僕自身感情を込めて大切に歌える歌だなと思ったので、選ばせてもらいました。

──歌いながらどんな気持ちになりましたか?

感謝というか、「ありがたいな」という気持ちで歌っていましたね。勝手にですけど、「ナイトミルク」を育ててくれた楽曲だと思っていて。このカバーアルバムは僕とトオミさんが歩んできた11年間の足跡みたいな作品にしたかったので、この曲は絶対に入れるべきだと思っていました。僕らと一緒に歩んでくれた、ずっと隣にいてくれた曲ですね。

この経験は必ずこれからの楽曲制作や表現に役立ってくれる

──改めて、アルバム完成後の心境を聞かせてください。

「形にできてよかったな」と思ってます。僕とトオミさんがずっと、静かに作り続けてきたものを形にできた喜びが一番大きいです。あとはここまで話してきた通り、歌い手としてさまざまな挑戦をさせてもらえてよかったですね。この経験は必ず、これからの楽曲制作や表現に役立ってくるだろうなと。

──「night milk」が石崎さんにとって2024年ラストのリリース作品でした。2025年はどのように活動していきたいと思っていますか?

やることは変わらないですね。とにかく挑戦し続ける。石崎ひゅーいの型みたいなものがあるとするなら、それをどう壊して、どう作り直していくかということの連続なのかなと思っています。今は歌い手としても、シンガーソングライターとしても幅を広げていきたいという気持ちなのかな。幅を広げても、もしかしたら1周回って戻ってくるかもしれないし、そこはわからないんですけど、ゴール地点は設けずに歩いている状態ですね。「これだ!」と思いながら歌える日を求め続けているというか。そういう歌の旅を、自分はずっとしていたいんだと思います。

石崎ひゅーい

公演情報

石崎ひゅーい LIVE 2025 - Season2 –

  • 2025年7月5日(土)大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
  • 2025年7月25日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューを果たす。2013年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2018年3月に初のベストアルバム「Huwie Best」を発表後、全48公演におよぶ全国弾き語りツアーを実施した。2020年11月、菅田将暉へ提供した映画「STAND BY ME ドラえもん 2」の主題歌「虹」が大ヒットを記録する。2024年11月、初のカバーアルバム「night milk」をリリース。「アズミ・ハルコは行方不明」や「そらのレストラン」といった映画に出演するなど、俳優としても活躍している。