石崎ひゅーい「night milk」インタビュー|「鳥肌が立った」オリジナルアーティストも絶賛の初カバーアルバム (2/3)

清竜人、アイナ・ジ・エンド、森山直太朗からのコメント

清竜人

清竜人

「痛いよ」を聴いた感想

新解釈!
新説とも呼べるような、非常に有意義かつドラスティックで、素敵なリアレンジ!
うれしいです、ありがとうございます。

「痛いよ」は清竜人さんの中で一番好きな歌です。すごく強烈なラブソングだと思うんですけど、僕はやっぱりそういう歌に惹かれるんですよ。歌い手として心は変化していっているけど、体はずっと、どこか痛みを伴う歌に共感しているというか。

──石崎さんももともとは痛みを伴う歌が多かったですからね。

そうそう。「痛いよ」が発表されたのは2010年ですけど、その頃に僕が出していた曲も近いニュアンスのものが多かった気がする。勝手に親近感を持っていたからこそ、いつかちゃんと歌いたいなと思っていたんですよね。

──清さんは「新解釈」とコメントされていますが、やはりそのような意識で取り組んだのでしょうか?

まさにそういうことを考えながらトオミさんと一緒に作っていきました。竜人さんの弾き語りの動画をよく観ていたんですけど、原曲はもうちょっとウェットなアレンジで、竜人さんはのめり込むように歌ってらっしゃる。竜人さんの表現もすごく好きなんですけど、僕がその路線で行くと重たくなりすぎちゃうので、優しく包み込むような方向性にしたいなと。だったら、原曲の反対を狙ってみようかと思い、竜人さんとはまた違う何かを引き出せたら、このアルバムの意味も出てくるかなと思ってました。だから原曲よりも少し明るいですよね。カバーアルバムをリリースすることを発表したときに、竜人さんのカバーを楽しみにしている声が多かったので、この対比が面白いと感じてもらえたらうれしいです。

アイナ・ジ・エンド

アイナ・ジ・エンド

「アイコトバ」を聴いた感想

もう、歌力がものすごい方だとはわかっていたはずですが……ひゅーいさん……
今回は、やりすぎ! すごすぎですから!
喉だけじゃなくて体で歌っているし、もう魂の分厚さが音にも波動にも乗っていて、鳥肌が何度も立ちました!
大好きなアイコトバを、もっと大好きになりました。

石崎ひゅーいへのメッセージ

ひゅーいさんとはあまりたくさん会話したことはありませんが、とてもきれいな魂の目で、いつも物腰柔らかく話してくれます。そのおかげで、私もいつも素直になれます。
きっとひゅーいさんは、人の硬くなっている心の紐をゆっくり解いてあげられる人なんだと思います。
そんなひゅーいさんのお人柄が、今回どっぷり歌に乗っている気がしました。
優しくて、時に勇ましい。そんな歌模様。これからもたくさん聴かせてください。
またいつか一緒に歌わせていただける日が来たらうれしいです!

いや、本当にまた一緒に歌いたい! 2023年にイベントでアイナちゃんとデュエットさせてもらったんですよ。楽しかったな。

──「アイコトバ」は石崎さんがアイナさんに提供した曲で、今作唯一のセルフカバーです。自分の書いた曲を歌ってもらって、どのようなことを感じましたか?

アイナちゃんの歌声や表現力はすごいなとずっと思っていたから、曲を書いている最中は「どんなキーでもメロでもきっと大丈夫だな」と思っていたし、「どんなふうに表現してくれるかな?」という楽しみしかなかったです。そのあと実際に歌ってもらって、「これが正解だ」と思いました。「アイナ・ジ・エンド、スゲーな」と。レコーディングもすごかったです。曲に入っていくのがすごく早かった。「ブリキの星と隠れんぼ」のところは最初は歌詞が違ったんですけど、レコーディングのときに「こっちのほうがいいな」と思って直したんですよ。そしたら言葉に合わせて歌い方をガラッと変えてくれて、それがもうドンピシャだった。そんなことを一発でやってくるなんて、天才ですよね。アイナちゃんは「言葉がそうさせてくれるんですよ」と言ってくれるけど、「そんなことないよ、すごすぎるよ」って言いたい。ライブで一緒に歌ったときに、ちょっとした振付をつけてくれたのもたまらなかったです。自分の曲をめっちゃ広げてくれる人というか、大きな愛がある人なんだろうなと思いました。

──改めて自分で歌ってみて、いかがでしたか?

デモを作るときに自分でも歌っているんだけど、語尾のニュアンスとか、不思議とアイナちゃんが歌ってくれたものに引っ張られていくんですよね。引っ張られながらも、「そっか、そういう解釈もあるんだな」という発見があって面白かったです。だからセルフカバーだけど、新しいインプットもあった曲というか。それもアイナちゃんのおかげですね。

森山直太朗

森山直太朗

「愛し君へ」を聴いた感想

「僕のほうが直太朗さんよりうまくあの歌を歌えますから」
ひゅーいくんからそう言われたのは今から10年も前のこと。酔っていたとはいえそのド級の無邪気さに度肝を抜かれたのを今でも覚えています。時を越えそのことをこのアルバムの中で証明してくれました。どちらがどうと比較するというのではなく、彼があの曲の元にある本当の景色や悲しみの意味を知っている稀少な歌い手だということを。

あの……本当に申し訳ないです。確かどこかの居酒屋で、直太朗さんがカウンターにいらっしゃったんですよ。当時はお会いしたことも話したこともない状態だったんですけど、僕は酔っ払ってて、第一声がこれでした。しかも「連絡先教えてください」って図々しく言ったみたいで。そしたら一緒にいた友達……尾崎世界観(クリープハイプ)から、次の日に「ひゅーい、昨日こんなこと言ってたよ」と連絡が来て。「うわー、終わった!」と。世界観からも「ちゃんと謝っておいたほうがいいんじゃない?」と言われて、「そうだよね」と直太朗さんに連絡したら、「すごく楽しかったよ。ありがとう」とお返事をくださって。寛大な方でよかった……。

──初めて会ったときに、なぜ自分からこの言葉が出たんだと思いますか?

そもそも僕は“直太朗さんラバー”で。バイト中、厨房でずっと歌ってたんですよ。15時入りで朝の5時まで働いていたんですけど、その最中ずっと1人で直太朗さんメドレー。「愛し君へ」から始まり「夏の終わり」とかいろいろな曲を歌っていると、あとから来た調理場の先輩が「おお、今日もいいな!」って言ってくれるんです。そうやって直太朗さんの歌で調理場の仲間たちを沸かせてた(笑)。だからあのときは、愛の伝え方を間違えてしまったんですね。

──なるほど。

そこから直太朗さんのアルバムのコメントを書かせていただいたり、YouTubeの番組に呼んでいただいて「愛し君へ」と僕の「花瓶の花」を2人で弾き語りさせてもらったり、交流を深めさせていただいて。そういう歴史があってのカバーです。「愛し君へ」はこのアルバムにも必ず入れたいと思っていました。僕の一番好きなラブソングです。直太朗さんの「愛し君へ」の歌い方も年々変化しているんですよ。例えばビブラートを少なくするようになったり、軽やかに歌うようになったり、今まではなかったコードを使うようになったり。だから自分が歌うときもけっこう悩みましたね。やっぱり直太朗さんから「このカバーいいね」って言ってもらいたいじゃないですか(笑)。デカい口を叩いているわけだから。

──ということは、「この時期の森山さんのような歌い方で」という明確なイメージがあるんでしょうか?

そうですね。結局、最近の直太朗さんの「愛し君へ」が一番いいなと思いました。歌い手としての大先輩が、こうして大名曲をブラッシュアップし続けている。その姿勢に感銘を受けたし、背きたくないなという気持ちがありました。一番ファンに近い考えでレコーディングした曲かもしれないです。