どんどんハードルを高く

──ちなみに、伊礼さんが1人のプロデューサーとタッグを組んで作品を作るのは、初めての経験ですよね？

伊礼　初めてでした。もう刺激をもらいっぱなしというか、世界の広さを教えてもらった感じですね。これまである程度我流で歌を磨いてきた部分があって、これ以上どうしたら伸びるんだろう、もうこれで頭打ちなのかなって思っていた部分があったんですけど、北川さんには僕が思っていたより高いハードルをどんどん用意していただいて（笑）。今一度、僕はもっと歌えるんだ、もっと努力しなきゃいけないんだってことに気付けて、すごく気が引き締まりました。

北川　どんどんハードルを高くしてひたすら飛び越えさせるようなレコーディングだったよね。1曲1曲作っていくごとに成長していくのがわかるんですよね。まずアルバムを作って、それから特典映像のレコーディングとかもしたんですけど、もうその頃には伊礼くんの歌が成長しているんですよ。今後ライブとかもあると思うんですけど、これからさらに歌い込んでいくことでもっとよくなるなっていうのは感じています。ライブで聴くのが楽しみですね。

伊礼　今回はただついていくのに必死でした。がんばればその分自分の作品がよくなるから際限がないし、ただ僕が納得するだけじゃなくて、北川さんとか周りの人から見た作品のよさとかも意識していたので、自分が成長していかないとついて行けなかったと思うんですよね。なんとか必死に食らい付いていったと思います。

北川　ちゃんとハードルは越えられていたよ。大丈夫。

偶然リンクした「水平線」

──アルバムを通して聴いていて、1つ気付いたことがあって。北川さんが作曲した「Song for You：Song for Me」のAメロの歌い出しの歌詞が「水平線の隙間から かすかに覗いた孤独」で、アルバムの最後の曲「borderless」の一節が「朝焼けに染まる 水平線に いま溶けてゆく」なんです。朗読を除いて最初の曲の歌い出しと、最後の曲の終わりの歌詞に「水平線」という言葉が使われているんですよね。

伊礼　実はそうなんです。北川さん、気付いてました？

北川　（資料を確認しながら）あ、ホントだ。でもこれ、書いてる人同士はお互い何も知らないはず……。

伊礼　偶然だと思います。もっと言うと、rairu名義でリリースしたアルバムのリード曲「僕たちの道」っていう曲の歌い出しも「水平線が見える」っていう歌詞なんです。最初に北川さんから「Song for You：Song for Me」が送られてきたときに同じ言葉が使われていることに気付いて。その後、アルバムの曲が全部出そろって「borderless」の歌詞を読みながら聴いてたらまた「水平線」って言葉が出てきて、すごくビックリしたんです。

北川　まったくの偶然だね。僕は全然知らなかったから。

伊礼　アルバムを作る中で不思議なことがたくさんあった気がするんですよね。北川さんが僕の生放送を観てくれたのも偶然ですし、違う作家さんから同じ言葉が出てきたり。もしかしたらまだ気付いていない偶然が隠れているかもしれませんね。

あきらめずにヘコたれず、長く歌を歌いたい

──伊礼さんは今後どういう存在になりたいというか、目標って言うと単純ですけど、メジャーデビューが1歩目だとしたら将来どこまで行きたいですか？

伊礼　もともと僕は目標をちゃんと持って活動をすべきだっていう考え方の人間で、これまでは自分の中で設定してきた目標を地道にクリアしてきたと思うんです。ただ最近は目の前にあることに対してきちんと取り組んでいくのがまず第一で、その結果として大きい会場でライブができるようになったらいいなって思うようになって。だからこれから先、長く歌を歌ってたいですね。毎回フルパワーで取り組んでいって、あきらめずにヘコたれずに、長く楽しく活動したい。

北川　長くやっていくには、がんばりすぎないことが大事だよ。

伊礼　ありがとうございます（笑）。振り返ってみて、今回のアルバムは歌うことに必死で、素のままが出た作品だと思ってるんです。これからライブをやったり、もっと歌い込むことで、もっとアルバムの曲が自分になじんでくるのかなって気がしてますね。「自分のため」っていう思いから生まれたアルバムではあるんですけど、自分のためにやってきたことがライブやCDを通じてお客さんに伝わって、それでみんなが喜んでもらえたらこれ以上ないくらいありがたいことだし、楽しいことだろうなって考えています。だからまずはライブが楽しみですね。皆さんがどんな反応をするのか、直接この目で確かめたいと思います。