INUWASI「Tranxend」インタビュー|この先の方向性を示す2ndフルアルバム、キーワードは“超越”

INUWASIの2ndフルアルバム「Tranxend」がリリースされた。

結成3周年のタイミングであった2月に東京・LIQUIDROOMで初のバンドセットライブを成功させるなど、次のフェーズへと突入した感のあるINUWASI(参照:INUWASI過去最高を更新!満員のリキッドで“最初で最後のバンドセットワンマン”)。2ndフルアルバム「Tranxend」はバンドサウンドを軸にサイケデリック、トランス、エレクトロロックの要素をこれまで以上に取り入れた、彼女たちのこの先の方向性を提示するような作品になっている。音楽ナタリーではメンバー6人へインタビューし、現在のINUWASIのアティチュードやニューアルバムの聴きどころなどを語ってもらった。

取材・文 / 西澤裕郎(SW)撮影 / 飛鳥井里奈

“最初で最後のバンドセットワンマン”を振り返って

──しばらく白を基調にした衣装を着ていましたが、原点回帰して黒の衣装になりましたね。

すずめ デビューしたときは黒衣装だったんですけど、ファンの方や関係者の方からちょっと怖がられたりと、初めて観る方には暗めのアイドルグループなのかなって受け入れにくい印象があったみたいで。今は活動を通して築き上げてきたイメージや世界観があるから、黒の衣装を着ても、ファンの方にも関係者の方にも前のような印象を持たれてないのかなと感じています。

──前は怖いイメージを持たれていたんですね。

カリヲリ 曲の雰囲気も違ったし、そこに威圧感が加わって怖く見えたみたいです(笑)。

すずめ イヴちゃんは黒衣装をまた着たいってずっと言ってたよね?

イヴ 私は私服も黒を着ることが多いので、「ついに来たか!」とうれしくなりました。

がるむ 個人的に、INUWASIのデビュー時の黒と、今の黒は違う黒だと考えていて。やっぱり、3年間で培ってきたものが確実にあるからファンの方を含め、多くの方がこの衣装を受け入れてくれたんだと思います。

がるむ

がるむ

ライカ デビューから活動初期まではちょっと尖っているグループと思われがちだったけど、3年間活動してきて、6人の個性やキャラクターを受け入れてもらえるようになった気がします。

──2月6日にLIQUIDROOMで開催された“最初で最後のバンドセットワンマン”ライブ「INUWASI Tokyo Oneman Tour〝 N 〟」でも黒い衣装を着ていましたね。このライブ、めちゃめちゃ素晴らしかったです。メンバーの皆さんの手応えはいかがでしたか?

ライカ チケットが完売したものの、本当にみんな来てくれるんだろうか……?という不安がありました。楽屋のモニタでフロアの様子を見れるんですけど、本番が始まるまでお客さんが入っているのかドキドキしていて。それでいざステージに出ていったら、見たことのない景色が広がってました。INUWASIのファンの方だけじゃなく、その友達とか、本当にいろんな人が来てくれたんです。私たちは、前回のライブを更新するという目標をいつも掲げているんですけど、新しい物語が始まった感じがしましたね。

ライカ

ライカ

はのんまゆ 今までやらせてもらったワンマンライブもチケットを完売できていたんですけど、LIQUIDROOMでは本当にフロアの端から端まで人だらけで。パンパンってこういうことを言うんだって、目で見て実感できたライブでした。振りコピをしてくれたり、すごく楽しそうにしているお客さんの顔をステージ上から見ることができました。ステージに出てすぐ、この人(すずめ)泣いていたんですよ。

がるむ え、ウソ? 知らなかった!

はのんまゆ 私もウルウルしちゃって「あ、泣きそう」と思ったんですけど、先に泣いてる人がいた(笑)。

すずめ SEが鳴ってステージに出るときは一番かわいい状態でいたいのに、1人だけブスの状態でした(笑)。でもデビューしてから今までの活動の中で、一番うれしい景色だったんですよ。グループの路線を何度か変更しながら活動してきたこともあり、ステージに出た瞬間に「本当にやってきてよかったな」と感動しちゃいました。これまで見た中で一番素敵な景色でした。

──お客さんの声出しOKということで声援も自然発生的に起こって、会場に熱気が充満していましたね。

カリヲリ この日に命を懸けてますっていうくらい、叫びに近い大きな声を出してくれて。ファンの方が楽しんで盛り上がってくれたからこそ、私たちも充実感を得ることができました。

カリヲリ

カリヲリ

すずめ 楽しくて自然に声が出て沸いている感じが伝わってきてうれしかったです。

はのんまゆ この日は初めてイヤモニをしてライブをしたんですけど、イヤモニを突き抜けて歓声が聞こえてきて超感動しました。みんな本当に楽しんでくれてるんだなって、またウルウルしちゃいました(笑)。

イヴ イヤモニは耳の型取りをして作っていただいたので、大切に使っていきたいです。

──初のバンドセットについてはいかがでしたか?

がるむ 何回かゲネリハがあったんですけど、イヤモニもバンドセットも初めてなことだらけだから不安な点も多くて。でも、MCでも私たちがしゃべってるのに合わせてバンドの皆さんが音を出してくれて味が出たし、バンドメンバーの方と仲よくなれて、本当にいい経験になりました。

ライカ 私はバンドのライブをそんなに観たことがなかったので、バンドセットでライブをすると聞いたとき、どんな感じなんだろうってすごくワクワクしました。がるむさんが今言ったみたいに、「リキッド楽しんでますか?」ってフロアを煽ったら、後ろでジャーンって楽器を鳴らしてくれて。そういうバンドセットならではの演出がすごく楽しかったので、一度きりと言っていたんですけど、またやりたいです。

──どうして“最初で最後のバンドセットワンマン”と銘打ったんですか?

はのんまゆ 私たちはアイドルだから、バンドに頼らずにメンバーだけでパフォーマンスするのが基本っていう考え方なんです。

はのんまゆ

はのんまゆ

──そこの自負があってのことだったんですね。正直、また観たいと思いました。

スタッフ いきなり前言撤回はしないつもりですが、運営としては反省点があるので、もう1回やってリベンジしたいという気持ちはあります。

イヴ 楽しかったので、ぜひまたやりたいです!

INUWASIが進化したきっかけの曲

──話が前後してしまうんですけど、前回のインタビューが2022年10月23日のWWW Xワンマンに向けての意気込みで終わったので、このライブについても振り返っていただければと思います(参照:INUWASI「SiX」インタビュー)。

すずめ 初めて曲と曲の間のつなぎのインストを用意してもらって、それに合わせて踊ったのが新鮮でしたし、ステージ上のLEDも超カッコよかったです。ただ、私的にはすごく悔しい思いをして終わってしまったんです。私は歌のパートをたくさんもらっているんですけど、決めなきゃいけないところでまったく決められず、ライブが終わったあとに号泣してしまって。「この思いをLIQUIDROOMで晴らしてやる。悔しいけどがんばるぞ」と決意しました。

──決められなかった、というのは具体的にどういうことでしょう?

すずめ 自分の思うように歌えなかったんです。曲の最後のパートをよく任されるんですけど、うまくパフォーマンスを締められなくて。自分に絶望して悔しかったです。

すずめ

すずめ

カリヲリ 私も反省点がありました。WWW Xワンマンの前に、それまで以上にメンバー6人で振りを合わせて詰める期間があったんですけど、たくさん練習したことで、自分の中でやった気になってしまって。そこで満足しちゃった部分があってライブ後に後悔しました。そのことをしっかり反省してLIQUIDROOMワンマンにつなげていかなきゃと思いました。

ライカ WWW Xワンマンもチケットはソールドアウトしたんですけど、それってファンの期待というか、どんなライブをしてくれるんだろうという楽しみな気持ちの表れだと思うんです。いつもよりたくさん練習したおかげで納得できるライブはできたとは思うし、曲と曲のつなぎがよかったと言ってくれるファンの方もいましたし、それはうれしかったです。同時に「これで満足していちゃいけない。次のLIQUIDROOMでもっとがんばろう」という気持ちになりました。

がるむ 私はWWW Xワンマンの時期、かなり体調が悪くて、レッスンも参加できない日が続いちゃって。6人そろわなくて申し訳ないというか、メンバーにも迷惑かけて、本当に逃げ出したい気持ちでした。メンバーに迷惑をかけている分、しっかりやらないとっていうプレッシャーも重くのしかかってきてピリピリして……本番は点滴を打ってからステージに上がったんですけど、そんなこと関係ないし、ほかのメンバーも余裕があるわけではないし、とにかく1人でうわーっとなってた時期でしたね。

カリヲリ あの時期は、パフォーマンスをもっといいものにしたいという気持ちがメンバーそれぞれ大きくなっていった時期で。確かにピリピリしていたかもしれないけど、お互いに思っていることを正直に発言できるようになったという意味ではいい機会だったなと思います。

はのんまゆ 確かに、ワンマンライブを重ねていくことで「ああしよう、こうしよう」とお互いに言えるようになってきたと思います。WWW Xワンマンは、メンバーがみんな緊張していたことも大きかったんですよ。1曲目の「Change」から緊張していて、それがお客さんに伝わったらどうしようとドキドキでした。だからこそ、LIQUIDROOMワンマンでは最初から明るい感じでパフォーマンスできたのかなって。グループとして成長できたんだと思います。

──イヴさんは先ほどから5人の話にじっと耳を傾けてますが、WWW Xワンマンを振り返って何か感じることはありますか?

イヴ えーと、みんなと同じです(笑)。

一同 (笑)。

イヴ

イヴ

すずめ イヴちゃんはダンスで覚えなきゃいけないことが多かったんですけど、率先してメンバーに振りを教えてくれたし、すごく活躍してくれました。

イヴ ありがとうございます(笑)。

すずめ それと、WWW Xワンマンでは今回のアルバムの冒頭に収録されている「shyness」と「Over the traces」を初披露したんです。あの曲をきっかけにINUWASIが進化した感じがありました。