ナタリー PowerPush - 井手綾香
現役女子高生シンガーが伝える ピアノと歌の可能性
当時は恋愛系の曲に踏み出す勇気がなくて(笑)
──中学2年以降は、作詞・作曲に没頭する感じでしたか?
はい。いろんな種類の曲が書きたかったので、ちょっと盛り上がる系の曲とかバラードとか、いろいろ挑戦してました。曲を書くことがとにかく楽しくて、部活もやってたんですけど、家に帰ったらずっとピアノの前にいましたね。
──そのときに生まれた曲たちは、どんなテーマのものが多かったですか?
やっぱり友達のこととか、応援ソングみたいな曲が多かったです。まだ恋愛系の曲に踏み出す勇気がなくて(笑)。
──年齢的に言えば恋愛に興味がないわけではないですよね。
なくはないんですけど……まず親に聴かせるんで、なんか恥ずかしいなって。「綾香、なに考えてんの!」って言われたら怖いんで(笑)。
──井手さんが通っていた中学校は全校生徒が18人だったそうですね。
そうなんですよ。すごく少ない、ですよね。私のクラスは5人いて、そのうちの3人が“井手”だったんです。井手くん、井手くん、井手さん、みたいな(笑)。
──その状況だと恋愛も難しそうですね。
そうなんですよ! 5人中、女子が3人だったから選択肢が2人しかいないんで、あきらめてました(笑)。だからこそ恋愛の歌詞が書けなかったのかもしれないですよね。ただ、保育園の頃からずっと同じメンバーだったので、つきあいも長いから絆は強かったと思います。
最初のライブは高校の音楽室でやったんです
──高校1年のときにはインディーズからCDをリリースしていますよね。
はい。「おもちゃ」っていう意味と、私の住んでた「都井」をかけて「TOY」っていうタイトルで。ジャケットは都井岬の馬をイメージしたキャラクターを自分で描きました。すごくうれしかったですね。高校の友達がみんな聴いてくれて、メイン曲だった「愛をつなごう」っていう曲を歌ってくれたりとか。CDのリリースに合わせてライブも何回かやりました。最初のライブは高校の音楽室でやったんですよ。全く知らないお客さんの前だったらまだしも、知ってる子たちばかりなのでものすごく緊張しましたね。ただ、それまでは録音の機材に向かって歌うばっかりだったから、聴いてくれる人の顔が想像できなかったけど、ライブだと間近でお客さんの顔が見えるから、それがすごく新鮮で。お客さんに向けて歌詞を伝えたいってすごく思うようにもなったし、曲を作る段階でも「こういうふうに届いてほしいな」って思えるようになったんですよね。
──ちなみに現在通っている高校は……?
全校生徒1500人です。一気に増えましたね。友達も増えたので、それがすごくうれしくって。廊下で会うたびに「あー♥」みたいな(笑)。中学の体育祭では役員を1人でいくつも受け持って、やることがいっぱいだったんですけど、高校では1種目出たら終わりなんでそれもうれしいですね。運動が苦手なので(笑)。
──で、今年の3月にはメジャーデビューを果たしました。これまでの流れを聞いていると、ものすごくトントン拍子のような気がしますけども。
デビューしたときも今も、まだ実感があまり沸いてないんですよね。トントン拍子に進んでると思うけど、もっとうまく弾き語りができるようにならなくちゃいけないし、新しい曲も次々に作らないといけないので、毎日がんばっている感じです。
──デビューミニアルバム「Portrait」に収録されていた「雲の向こう」がCMソングに起用されて大きな話題を呼んだことに関してはどうですか?
CMの力ってすごいなって思いました。学校の友達とかも「CM観たよ」「いい曲だね」ってみんな言ってくれて。すごくうれしいですよね。私自身、大阪や東京に仕事で行ったとき、ホテルのテレビをつけてあのCMが流れるまでずーっと待ってたんですよ。で、流れたら「あ、ほんとなんだなあ」って喜びを感じたりしてました(笑)。
井手綾香(いであやか)
1993年生まれのシンガーソングライター。アメリカ人でプロダンサーだった母と、福岡でバンド活動をしていた日本人の父とともに、100頭以上もの野生馬が生息する地として有名な宮崎県串間市都井で育つ。4歳からピアノを始め、2009年7月に九州限定インディーズアルバム「TOY」を発表。2011年3月にピアノと歌だけで制作されたミニアルバム「Portrait」でメジャーデビューを果たし、収録曲「雲の向こう」が「ハイチオールCプラス」のCMソングとして話題を集める。2011年8月に2ndミニアルバム「Portfolio」をリリース。現在は宮崎市内の高校に在学中。