ナタリー PowerPush - 井手綾香

みずみずしさあふれる19歳の思い

先日開催された「FUJI ROCK FESTIVAL '12」へ出演し、そのりんとした澄み渡る歌声で多くのオーディエンスを魅了した井手綾香。8月26日にはMTVの人気企画「MTV Unplugged」へ出演が決定し、秋には学園祭ライブで各地を巡ることになるのだという。

デビューから約1年半。彼女の類まれな才能がより多くの人々の元へと響き始めている状況の中、4月リリースのアルバム「atelier」後、初となるシングル「つばさ」が到着した。

パンテーンのCMソングとなっているタイトル曲を始め、本作に収録される3曲は全てタイアップのために書き下ろされた。それらは、さまざまな場所で求められ、そこに最高の彩りを添えていく井手綾香の幅広い感性と魅力が堪能できる仕上がりになっている。

高校を卒業し19歳になった井手綾香に、それぞれの楽曲に込めた思いを訊いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 平沼久奈

東京にいるとパンチの効いた歌詞が生まれそう

──今年の春に高校を卒業した井手さんですが、新しい生活はいかがですか?

高校卒業って大きな出来事だとは思うんですけど、ただ制服を着なくなっただけみたいな感じもしていて(笑)。高校生の頃から音楽活動をしていたので、宮崎と東京を行ったり来たりする生活はそんなに変わっていないんですよね。友達と会う機会が減ったことは寂しいけど、今はメールでやり取りもできるのでそんなに離れてしまった感じもしないというか。

──でも音楽一本の生活になることはアーティストとして大きなことですよね。

うん。音楽の活動が今まで以上に充実してるので楽しいですね、すごく。

──そういった環境の変化が曲や詞に影響することは?

あ、それはあるかもしれないです。高校生の頃よりも東京にいる時間が長くなったことで、ノートに書きとめている歌詞の世界が変わってきているような気がします。「あれ、なんか今までと違うな」って。

──具体的にはどんな変化なんでしょうね。

宮崎には自然が多いので、生まれる曲や歌詞は壮大なイメージのものが多かったんですよ。どこまでも広がっていく空を見上げている感じとか。でも東京に来て書く歌詞は、キュッと狭いところに視点を持ってきた内容が多くなっているというか。アスファルトを突き破って出てきたタンポポの姿から感じたことだったりとか、古びたサビサビの看板を見てかわいそうだなって思う気持ちだったりとか、自然のものと人が作り上げたものが融合した歌詞が書けるようになった気がするんですよね。

──それは新しい感性を手に入れることができてうれしいという感覚ですか?

そうですね。もちろん今も宮崎で感じていた気持ちがなくなってるわけではないので、そこに新しいものがプラスされた感覚です。表現の方法が増えたのかなって。東京って人間が作ったものだけでできている街というイメージが今まであって、ちょっと異様だなって思ってたんですよ。自分がちっちゃい頃から育ってきた環境とあまりに違いすぎるので。

──井手さんの地元は野生の馬がたくさんいる場所ですもんね。

そうそう。その馬たちが全部人になってもまだ足りないっていうぐらいたくさんの人であふれてる街ですからね、東京って。でも、今は東京ならではの面白さがいっぱいあるんだなって思えるようになったので、この先、今までにはなかったパンチの効いた歌詞が生まれそうな気がしてます(笑)。

もっともっとたくさん歌いたい

──先日は高校卒業後にリリースされたアルバム「atelier」を携えて初めてのライブツアーも行いましたね。その経験はいかがでした?

すっごく楽しかったです! ライブの2カ月くらい前からずっと緊張と不安に襲われてたんですけど、直前にやった通しリハがとにかく楽しかったので、そのまま良い流れで当日を迎えることができました。ライブのために作った「はじまりの歌」という曲を1曲目にやったんですけど、そこでは歌詞に各会場の名前を入れていて。それを聴いてくれたお客さんがみんな笑顔になってくれたので、私も最初から最後までリラックスして歌えた感じでしたね。20曲近い曲数をライブでやることは初めてだったんですけど、「ワンマンってこんなに楽しいんだ!」って感じることができました。

──初めてのツアーでそう感じられたことは大成功でしたね。

そう思います。ライブに対しての意識もちょっと変わった気がしたんですよ。今までって、ステージ上の自分がどう見られてるんだろうなっていうことがすごく気になっていたんですね。どこか評価されているんじゃないかっていう気がしちゃってたというか。でもお客さんはみんなすごくあったかい気持ちで来てくれているんだなっていうことに気付けたので、もうそこを恐れることがなくなったんです。むしろ友達のような感覚で接するようにしたいなってすごく思いました。2時間のライブを楽しく歌いきることができたので、それは自分にとっての大きな自信にもなりましたし。今回は3カ所のツアーだったんですけど、「私、こんなに歌うことが大好きなんです」っていう感じで(笑)、もっともっとたくさん歌いたいって思いましたね。絶対いつかは全国を細かく周りたいな。

ライブ情報
Slow Music Slow LIVE '12 in 池上本門寺

2012年8月26日(日)東京都 池上本門寺 野外特設ステージ
OPEN 14:00 / START 15:00
<出演者>
ORIGINAL LOVE(アコースティックセット)/ Maia Hirasawa / 矢井田瞳(MY LIFE IS MY MESSAGE)/ ハンバート ハンバート / 森恵 / 井手綾香(オープニングアクト)

MTV Unplugged:井手綾香

2012年8月26日(日)東京都 Billboard Live TOKYO
※観覧募集終了。

若草山 MUSIC FESTIVAL 2012

2012年9月16日(日) 奈良県 若草山麓特設ステージ
OPEN 11:00 / START 12:00 / END 18:00(予定)
<出演者>
井出綾香 / かりゆし58 / 高橋優 / 畠山美由紀 / 持田香織 / ココロオークション(オープニングアクト)/ 寺前未来(オープニングアクト)/ 日食なつこ(オープニングアクト)

井手綾香(いであやか)

1993年生まれのシンガーソングライター。アメリカ人でプロダンサーだった母と、福岡でバンド活動をしていた日本人の父とともに、100頭以上もの野生馬が生息する地として有名な宮崎県串間市都井で育つ。4歳からピアノを始め、2009年7月に九州限定インディーズアルバム「TOY」を発表。2011年3月にピアノと歌だけで制作されたミニアルバム「Portrait」でメジャーデビューを果たし、収録曲「雲の向こう」が「ハイチオールCプラス」のCMソングとして話題を集める。高校を卒業した直後の2012年4月に1stフルアルバム「atelier」を発表。同年8月に3枚目となるシングル「つばさ」をリリースした。