「ヒプマイ」新作EP特集|木島隆一&キスマイ宮田俊哉インタビュー、EPの楽曲提供者コメントも (3/4)

宮田俊哉(Kis-My-Ft2)
インタビュー

「ポジティブ my life」作詞
※作曲、編曲は月蝕會議。

宮田俊哉(Kis-My-Ft2)

ヒプマイとキスマイ

──宮田さんが「ヒプマイ」を知ったのはいつ頃ですか?

明確にいつかは覚えていないのですが、「ヒプマイ」というプロジェクトが始動してわりとすぐだったと思います。僕、実はKis-My-Ft2というグループのメンバーなんですが……。

──かなりの人がご存知だと思います、それは(笑)。

あ、よかったです(笑)。僕はアニメやゲームが大好きなので、SNSでそういった情報をチェックしてるんですが、そこで「ヒプマイ」の情報が流れてきたんですね。それで「『ヒプマイ』……キスマイと語感が似てる!」というところから興味を持って。だから、興味を持ったきっかけは「キスマイとヒプマイで韻を踏んでる」という部分ですね(笑)。

──宮田さんならではの入り口ですね(笑)。

それで「ヒプマイ」に関する記事を読んだら「木村昴さんや速水奨さんがラップをするコンテンツが始まるの!?」と驚いて。実際に音源を聴いてみても聴き応えがあって、そこから追いかけてますね。アニメシリーズも基本毎週観てました。楽曲やアニメ、ライブやステージと、いろんなコンテンツを展開しているスタイルも、僕らジャニーズの活動と通じる部分を感じるし、新しいことに常に挑戦してる部分にもシンパシーを感じました。

──最初に興味をもったキャラクターは誰でしたか?

ここでほかのキャラクターの名前を挙げるのは一二三に忍びないんですが……最初はシブヤ・ディビジョンFling Posseの夢野ゆめの幻太郎げんたろう(CV:斉藤壮馬)が魅力的に感じました。ラップと文学的な部分が合わさっているのが面白いなと……いや本当、一二三ごめんって感じです(笑)。

一二三の友達になろう

──宮田さんは今回、伊弉冉 一二三 with HOODsの「ポジティブ my life」の作詞を手がけられています。

ずっと「ヒプマイ」と一緒に何かやりたいなと思ってたんですよね。だからお話をいただいたときはすごくうれしかったし、今回はラップだけじゃなく、ボーカル曲も制作されるということで、純粋に楽しみでした。ただ、仕事が忙しい時期でちょっと大変かも……とは思ったんですけど、それでも「一二三の曲が書きたい」という思いが勝りましたね。ほかの仕事もあったので、2日ぐらい寝られない日が続いてしまいましたが(笑)。

──宮田さんはこれまでに、宮田俊哉 (Kis-My-Ft2) feat. 一ノ瀬トキヤ (ST☆RISH) 名義での「Nemophila」や、ご自身のソロ曲「Champions」などの作詞を手がけられています。宮田さんにとって作詞というのはどういう作業なんでしょうか?

作詞をするときは、書いている時間より、考えている時間のほうが長いタイプですね。周りから見るとぼーっとしてるように見えるかもしれない。メンバーからはよく作詞中に「眠いの?」とか言われます(笑)。僕としては作詞は頭の中で1本の映画を作っているような感覚で、その作業がすごく楽しいんですよね。

──「ポジティブ my life」の作詞はどのように進めていきましたか?

いただいた一二三の設定資料はもちろん目を通して、シンジュクの楽曲やドラマトラックを何度も聴いて、アニメももう1周観ましたね。アニメはリアタイで1周、録画で1周、今回の作詞に当たってもう1周と、最低でも「ヒプマイ」のアニメは3周観てます。それだけ今回の制作は責任重大だと思ったんですよね。そのうえで今回は「一二三の友達になろう」と思いました。

──一二三になるのではなく、一二三の友達になる、ですか。

一二三をこれまで以上に深く知って、友達になって、その友達に歌ってほしい曲を書いたというイメージですね。

──宮田さんから見て、一二三はどんな人物ですか?

ホストという、自分が生きてきた中ではあまり関わったことがないタイプの人なので、そこにまず興味が湧きました。一二三はジャケットを着ているか着ていないかで性格が変わるんですけど、そこに親しみを感じて。僕はKis-My-Ft2のメンバーとしてステージに立ったりテレビに出たりしているときの自分と、休みの日にカードゲームの大会に参加したり友達と秋葉原に行ったりする自分という、二面性のような部分があるんですが、それが一二三と近いのかなと思います。もしかしたらそんな共通点があることを踏まえて、「ヒプマイ」のスタッフさんは僕に声をかけてくださったのかなって。

言葉の1つひとつに感じた責任

──宮田さんの作家としての経歴をたどると、昨年には作詞だけではなく、あんみつ名義でボカロPとしてデビューされていますよね。

今は宮田であることを公表しているんですけど、当初は宮田であることを隠して、「ボカコレ」(ボカロ文化の祭典)にあんみつ名義で「鏡鳴」という曲をアップしていて。初投稿だったけど61位にランクインすることができたし、賞もいただいたので、個人的にすごく手応えを感じました。人前に出るのも好きなんですけど、そうやって何かをクリエイトする作業もすごく好きで。

──作曲や作詞などに興味を持ち始めたきっかけはありますか?

こういう曲を作りたいというイメージはあっても、それを形にするために必要な知識がないなと思うことがけっこうあったんです。キスマイの曲でも「こういう感じにしたい」というイメージを明確な言葉で伝えられなかった。だから、作詞や作曲についてちゃんと学ぼうと思ったんです。職業作家の方と比べたらまだまだ足元にも及ばないですけど、それでも曲を作るのはすごく楽しいので、チャレンジしてみてよかったなと思います。今はクリエイトすることにより興味が湧いてきていますね。

──これまではご自身が歌うか、初音ミクに歌ってもらうという形がメインだったと思いますが、今回のような特定のキャラクターに歌詞を提供する、ということについてはどのように向き合いましたか?

自分で歌うのとはわけが違うし、責任が重すぎて制作中に不安を感じることもありました。「ヒプマイ」のスタッフの方と、一二三の語尾などの細かい部分についてやりとりを重ねながら制作を進めました。

──一二三というキャラクターに対する愛情はもちろん、アニメや二次元の文化にリスペクトがあるからこそ、それだけ細かく考えられたんでしょうね。

例えば「お前」というワード1つでも、使うかどうか最後まで悩みました。「見つけた! お前がラスボス」というリリックを書いたけど、一二三は普段は「お前」とは言わないよなと。だけどこの歌詞での、ラスボスに対して敵意を一瞬だけ見せる、一二三のキッとした目や、その直後の「仲間になろうぜ」という言葉との高低差を考えると、ここはやっぱり「お前」だよなと考えました。

──本当に細かいニュアンスにもこだわられたんですね。

自分で表現するものだったら、自分の歌い方やダンスで印象を変えられる部分もあるんですけど、今回は歌詞の提供だけなので、言葉の1つひとつに責任を感じました。だから、今まで作詞した中で一番時間がかかったと思いますし、今までの作詞とはまったく違うプレッシャーを感じましたね。

──今回はサウンドも歌詞もゲームがテーマになっていますが、これはどのように決まったんでしょうか?

まず先にトラックをいただいたんですよ。

──月蝕會議さんの制作したチップチューン的なサウンドを聴いてインスピレーションを得たと。

そうですね。「ゲームの中の音だ」という印象を受けたので、そこから歌詞もゲームというテーマにしようと。そのうえで、ジャケットを脱いだ状態のオフの一二三だったら、どんなゲームをどんなスタイルでプレイするのかな、とイメージを膨らませていきました。そうしたら、敵を倒すんじゃなくて、仲間にしていくゲームがパッと浮かんできて。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」みたいな、敵を倒して進んでいくRPGゲームというよりは、友達になっていくことで世界を平和にする、誰も傷付けずに“全クリ”できるゲームがもしあったとしたら、そんなゲームを一二三はやるんじゃないかなって。

──今回のEPのテーマはバトルではなくフェスですが、それとも近いような部分がありますね。

ドラマトラックの“ヒプノシスマイク”を失った世界で行われるフェス、というストーリーは新しいなと思いました。「ポジティブ my life」はそのストーリーのイメージにもハマったんじゃないかと思います。でも、最初に詞を書き上げたときは、「いや、これはダメかもしれない……」と思いましたね。

──それはどうしてですか?

ちょっと明るく振り切りすぎちゃったかなと。でも、自分もライブをやる側の人間として、このトラックだったら、ライブを見越した明るい歌詞のほうがいいと思ったんです。だから、とにかくライブで盛り上がるような方向性に振り切ってしまおうと。

──確かに“with HOODs”のコールや合いの手も含めて、かなりライブ映えする、とにかく明るい曲ですね。

冒頭から「チョリリ~ス!俺っちの仲間たちー!」ですからね。それにみんなも「チョリース!」と応えて。その部分は一二三とライブを観に来たお客さんとでコール&レスポンスしてほしいですね。この曲でめっちゃ盛り上がってくれたらうれしいです。

「魅せプ」「姫プ」で一二三の二面性を表現

──木島さんが歌われた完成音源を聴かれた際の感想も教えてください。

イメージ以上のものが返ってきたので「やっぱりすげえな!!」と。今回はバトルじゃないですけど、「木島さんも一二三も優勝だな」と思いました。こういうふうに歌ってもらいたいというデモをスマホで録って送ってはいたんですが、それを300%以上増したものが返ってきたんです。声優さんのすごさを改めて感じてリスペクトの気持ちが湧きました。例えば「HPギリだな!!」という部分は「ホントにHPギリなんだな」と感じるような歌い方だし、少し発音しづらいかなと思ってた「フルパ」も、余裕できれいに歌われていて。

──木島さんは「魅せプ」「姫プ」という言葉が印象的だったとおっしゃられていました。

それはめっちゃうれしいな! 最初に書いた部分がそこなんです。トラックを何度も繰り返し聴く中で、「魅せプ」「姫プ」という言葉が思い浮かんだんです。一二三はホストのときは魅せプだろうし、女性恐怖症が姫プなら、それを守ってあげたいなと。「魅せプ」「姫プ」という歌詞で一二三の二面性を表現したいと思ってたので、木島さんがその言葉に興味を持っていただけたのはうれしいですね。

──タイトルにもある通り「ポジティブ」も曲のテーマの1つになっていますね。

一二三を知れば知るほど、めっちゃポジティブだなと改めて思いました。僕もけっこうポジティブな人間なので、この曲では一二三と一緒にポジティブに生きようと。そこで浮かんだのが「ポジティブ my life」というタイトルで。底抜けにポジティブな人って見ていて気持ちのいい存在だし、一緒にいると元気になりそうですよね。それが一二三だと思うし、リスナーにもこの曲を聴いて元気になってほしい。ポジティブな人が裏で「俺、実はネガティブなんだよね……」と言っていたらそれはそれでドラマを感じるんですけど、ポジティブな人がそのまんま「ポジティブなんで!」と言うのも魅力的だなと。でも、この曲で一二三は主役だけど、主人公ではない。まず「勇者の剣が抜けなかった」時点で、勇者ではないという。

──そこから「心 丸裸 真顔」という歌詞につながっていますね。

この部分はライブでは木島さんに真顔で歌ってほしいですね。急にスンとしてほしい。一二三は勇者じゃないけど、前向きなマインドを持っているからこそ、最高に楽しくなれるんだと思います。……あの、ファンの方の中には「ひふみんは勇者だ!」とおっしゃられる方もいると思うので、それはごめんなさいなんですが、この曲の世界でだけは許してください(笑)。

──先ほどポジティブなタイプだとおっしゃっていましたが、宮田さんがポジティブなマインドでいられる秘訣はありますか?

一時期、忙しくて寝る時間もなかったり、やらなきゃいけないことに追い詰められて、ちょっとメンタル的にしんどいときがあって。“ポジティブmy life”じゃなかった時期が。でも寝る前に「あー! 今日も楽しかった!」と言ってから寝るようにしたら、楽しくなかった日も楽しかったような気がして、ぐっすり寝れました。それからちょっと落ち込みそうなときはそうしています。自分にちゃんと言い聞かせるというか。落ち込みそうなときにぜひ試してみてください。いい日になります。

──ちなみに今回のEPの作家陣をご覧になっていかがでしたか?

こんなにすごいメンツの作家陣がそろったEPに関われるのがうれしいなと。ホントに“フルパ”状態だから、「俺がここに入っていいのか……」みたいな気持ちもありますが、さまざまなジャンルのアーティストを隔たりなく受け入れてくれるコンテンツであることが「ヒプマイ」の魅力なんだろうなと思います。次はキスマイとヒプマイでコラボできたら、もっと楽しいかなと。うちには二階堂(高嗣)や藤ヶ谷(太輔)とか、ラップを聴いて育ってきたメンバーがいるので。

──キスマイと「ヒプマイ」のコラボ、実現したら盛り上がりそうですね。ちなみに宮田さんと親交の深い、Snow Manの佐久間大介さんと「ヒプマイ」について話すことはありますか?

佐久間もめっちゃ「ヒプマイ」好きなんですよ! よくTシャツ着てますもん。今回、僕が「ヒプマイ」の作品に参加することを伝えたら、「マジすか! すげえ!」と興奮してました。佐久間は今はプレイヤー側が楽しい時期で、クリエイトはまだそんなにしてないと思うのですが、いつか佐久間も制作に関わったりしたら絶対に楽しいと思います。僕が作曲して、佐久間が作詞みたいな曲ができたら最高ですね。

──最後に、今回のコラボで「ヒプマイ」に興味を持たれる方も多いと思いますが、そんな初めて「ヒプマイ」に触れる人にこのコンテンツをどうオススメしますか?

興味を持ったときにどこから入るのが正解、というものがないコンテンツだと思っていて。曲からはもちろん、アニメでも、ドラマトラックでも、舞台でも、マンガでも、声優さんからでもどこからでも入れる。改めて本当に多角的なコンテンツだなと。たくさんコンテンツがあるからといって、全部を楽しむのはハードルが高いと身構えることもないと思うんです。やっぱり一番は、その人その人が好きに楽しむのがいいんじゃないでしょうか。だって僕なんて、「ヒプマイ」とキスマイが似てる、というところから入って、さらに「ポジマイ」作ってますからね(笑)。

プロフィール

宮田俊哉(ミヤタトシヤ)

1988年9月14日生まれ、神奈川県出身。ジャニーズ事務所所属のグループ・Kis-My-Ft2のメンバー。KBC九州朝日放送の地域情報ワイド番組「アサデス。」の火曜レギュラーを務めている。またFMヨコハマ「燃(萌)えよ!ラジオ」、テレビ東京「ひるパ!」、ニコニコ生放送「キスマイ宮田のニコ生やったってit’s Alright!」などにもレギュラー出演中。