編集ポイントはあくまで“ファン目線”
──映像作品としてまとめるうえで膨大な量の映像を確認されたと思いますが、編集時に重きを置いたことは?
実は自分の映像を観るのが本当に苦手で。ミュージックビデオをチェックするのとかも苦手だから、ついつい後回しにしちゃう。本音を言えばスタッフのほうで好みの映像を使って勝手に作ってほしいくらい(笑)。なので、僕が映像を編集するときに重視するのはファン目線ですね。ある程度編集された映像を確認して、「僕のファンならここ観たいだろうな」というシーンを追加したり、あとは演者として「ここがカッコいいから観てほしい」という場面や演出がちゃんと入っているかをチェックしたりしますね。
──具体的なシーンを挙げると?
例えば「LAST SONG」だったら、ステージ一面に紙吹雪が広がる瞬間を全景で捉えておくとか。こだわった演出がいかにちゃんと伝わるかが大事。
──映像を拝見して感じたのが、楽曲の世界観に合わせてカメラワークがかなり激しくなっていることで。バンドメンバーのソロや見せ場、ファンの動きもくまなく追いかけて、客席の空気感も映像にパッケージしていますよね。HYDEさんの動きだけを終始追いかけているわけではない。フックアップという言い方が正しいのかはわかりませんが、ライブを構成する要素を余すところなく入れることを意図しているように感じました。
ステージに一緒に立ってる5人はバンドメンバーであるとともに、僕のライブにおける舞台装置なんですよね。
──舞台装置?
以前アメリカで他バンドのツアーに帯同して回っていたときに、日本のアーティストが前座の小さなステージに出るだけだと、名前すら覚えてもらえないと思って。どんなステージでもインパクトを残せるように、メンバーにマスクを着けるアイデアを考えました。そういう意味での舞台装置ですね。どんな小さなステージでも彼らがいると世界観が成立する。ライブ映像となると、どうしても僕中心になりがちですけど、バンドメンバーの見せ場もちゃんと入っているかチェックしてます。あと、ファンの映像が多いのは、VAMPS時代から変わらないところですね。当時から「カッコいいファンをいっぱい撮って」とカメラマンに言っていたので。その流れをスタッフもみんなわかってるから、毎回自然と押さえてくれているんですよ。映像でまとめるときに「この曲でこういう映像はないの?」とか伝えると、ちゃんと素材があるんです。だから収録が入ってるときは、サークルモッシュの中にカメラマンが最初から飛び込んでたりします。あとカメラマンが客席で撮っていると、お客さんが肩車してくれたりするらしくて。僕が指示したわけじゃないのに(笑)。
──いろんな意味でファンやスタッフに教育が行き届いているんですね。
いいのか悪いのか(笑)。
ライブはサーフィンに似てる
──初回限定盤には未発表曲「THE ABYSS」のライブ映像やギタリスト2人によるギターバトル、40分強のドキュメンタリー映像を収録した特典ディスクも付属します。ドキュメンタリー映像は2024年のHYDEさんの活動を追った内容で、これもまた編集が大変だったんじゃないかと。
こっちもやっぱりファンが喜ぶことを意識して編集していきましたね。各地でカメラを回しているから、撮った映像を平等に使いがちですけど、面白いシーンは長めにするし、ちょっと退屈なところは短くしたり。
──ハレとケではないですが、表が本編のDISC 1だとすれば、裏側やHYDEさんの素を映したのが特典ディスクなのではないかと。いろいろと見どころはありますが、わんこそばを必死で食べられているシーンは思わず凝視してしまいました。
あれはホントに死にかけましたよ。体はすでに細胞レベルで食べることを拒絶してるのに、精神力で口に運んでいるというか。あの世がちょっと見えましたね(笑)。バンジージャンプに似てるかな。食べないとカッコ悪い!みたいな。
──わかる気がします(笑)。もはや競技ですよね。そのほか個人的に印象に残ったのが、フェスやワンマンライブでステージに立たれる直前までお客さんや会場の様子を真剣にチェックされている姿で。
フェスのときはどういう客層なのか特に気になるんです。自分がどんなパフォーマンスができるか、どこまでやって大丈夫かを判断するために確認してますね。
──お客さんの空気感を考慮して、その日のパフォーマンスやMCの内容を変えることも?
あります。どのフェス、どのイベントでも同じスタンスでやるのは違うと思うんです。ライブってサーフィンに似てるんですよね。波の大きさや形を見て、どういう乗り方ができるかを考える感じ。空回りしたり、お客さんに押されちゃうようなライブはしたくないんで。
──そのため毎回入念に調整されてからステージに上がっていると。
はい。
境目が薄れ、自分の好みがひとつになりつつある
──「HYDE [INSIDE] LIVE」は2025年も継続され、6月21日のZepp Haneda(TOKYO)公演を皮切りに世界10都市で行われます。昨年と比べて何かアップデートされるところはあるんでしょうか?
基本的にはアルバム「HYDE [INSIDE]」のプロモーションなので、それほど中身を変えるつもりはないです。ただ、より音楽に集中したい気持ちがあるので、その点で変化はあるかもしれません。エンタテインメント性をちょっと抑えるというか。まあ、実際に始まったらどうなることやらって感じですけど(笑)。
──HYDEさん、ワンマンライブでもフェスでもサービス精神旺盛ですからね。
そこを少し押さえて、歌に集中するのが今年の目標です。
──以前、HYDEさんはいわゆる激しいモードのときはシンガーというよりパフォーマーとしての意識が強いとおっしゃっていた記憶があります。逆に「黑ミサ」やオーケストラ公演では歌に集中しているとお話ししていましたが、それぞれの境目がなくなってきているということでしょうか?
そういうことになると思います。自分の好みがひとつになりつつありますね。1月のラルクの東京ドームでも歌に集中するような曲を選んだし、もういい歳なのでちゃんとした歌を歌わないとなって。もちろん緩急がないとグッとこないので、バランスを取りつつですが。
──過去にも何度かHYDEさんのライブ観について伺いましたが、2025年現在のHYDEさんにとって“いいライブ”“自分が満足するライブ”の基準とは?
自分が設けたコンセプトに対しての完成度が高いかどうか。今年のラルクの東京ドームはすごくよかったと思います。自分としてはソロのライブも同じくらいの完成度にしたいから、しっかりやらないとなという気持ちです。
──では、ご自身の今のライブパフォーマンスに点数を付けるとしたら?
666点かな(笑)。
──いい数字ですね。
実際のところは100%の完成度に到達するまであと20%くらい。
──ちなみに、ステージに立つ人間として今HYDEさんが一番大事にしていることはなんですか?
うーん、僕、お客さんにナメられるのがあまり好きじゃないんですよね。きちんと一線は引いておきたい。というか、その一線がないとライブは成り立たないと思うんです。ライブ空間って感情的な場だから。極端なことを言うと、ライオンの群れがいるような場所。その空間をビシッと締めるからこそ、ライオンたちも楽しめる。だから、お客さんに負けないようにしてますね。
──そういう空気感を含めて、HYDEさんが一番影響を受けたアーティストと言うとどなたでしょうか?
GASTUNKですね。GASTUNKは学生時代に観て本当に衝撃を受けました。ステージに立ってるメンバーは異世界の人だった。
──つまりは非日常的な空間だったと。
そうですね。そもそも僕らの表現している音楽やステージは、非日常を見せるものだと思ってて。お客さんにとっても、ライブの空間が非日常であってほしいんですよね。やっている側の慣れもあるし、気を抜いたら飽きてしまうときもある。でも、僕はステージに上がるとスイッチが入るんです。ライブはもちろんエンタテインメントではありますが、戦いの場でもある。
──なるほど。気付けば来年はL'Arc-en-Cielが結成35周年、ソロデビュー25周年ですね。
ラルクの周年は覚えてたけど、ソロも周年だっけ? 忙しくなるから周年はズラしたほうがいいですよね(笑)。僕からはまだ何も言えないけど、ラルクは何かあるといいですね。ソロとしては、「JEKYLL」っていう“静”のアルバムが来年出るんじゃないかな。
──ついに! その「JEKYLL」の制作の進捗はいかがでしょうか?
難航しております(笑)。
──でも、年間を通してここまでライブをされていたら作品を作る時間もなかなか取れないですよね……。
はい。でも、どの活動も楽しんでます。
公演情報
HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR
- 2025年6月21日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年6月22日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年6月24日(火)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年6月25日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2025年7月6日(日)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年7月12日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年7月13日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年7月16日(水)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年7月17日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年7月23日(水)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年7月24日(木)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年8月9日(土)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2025年8月10日(日)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2025年8月23日(土)宮城県 仙台PIT
- 2025年8月24日(日)宮城県 仙台PIT
- 2025年8月29日(金)メキシコ メキシコシティ Circo Volador
- 2025年9月5日(金)チリ サンティアゴ Caupolican Theatre
- 2025年9月7日(日)アルゼンチン ブエノスアイレス Palermo Groove
- 2025年9月14日(日)ブラジル サンパウロ Carioca Club
- 2025年11月1日(土)インドネシア ジャカルタ Tennis Indoor Senayan
- 2025年11月14日(金)フランス パリ Bataclan
- 2025年11月18日(火)ドイツ ケルン Essigfabrik
- 2025年11月20日(木)オランダ ユトレヒト TivoliVredenburg
- 2025年11月23日(日・祝)スウェーデン ストックホルム Berns
HYDEPARK 2025
- 2025年6月28日(土)東京都 Zepp Haneda (TOKYO)
- 2025年6月29日(日)東京都 Zepp Haneda (TOKYO)
- 2025年7月19日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年7月20日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年7月26日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年7月27日(日)愛知県 Zepp Nagoya
プロフィール
HYDE(ハイド)
L'Arc-en-Ciel、VAMPS、THE LAST ROCKSTARSのボーカリスト。2001年にソロ活動をスタートさせ、日本のみならずワールドワイドに活動している。ツアーの一環でニューヨーク・Madison Square Gardenや東京・国立競技場などで単独ライブを行い成功を収めている。2024年秋に約5年ぶりとなるアルバム「HYDE [INSIDE]」をリリース。同年10月に開催した千葉・幕張メッセ公演を収めたライブ映像作品「HYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA-」を2025年7月にリリース。現在世界10カ国を巡るワールドツアー「HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR」を開催中。