HYDE「HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021」インタビュー|“静”を極めた2021年にHYDEは何を手にしたのか? (2/2)

これまでの縁が作り上げた集大成的な平安神宮公演

──HYDEさんは今までいろんなシチュエーションでライブをされてきたと思いますが、平安神宮での2日間はどんな意味合いを持つものになりましたか?

いろんな意味での集大成だったかもしれませんね。ソロ20周年という節目に、神社でコンサートをするという新しい挑戦ではあったんですけど、当日のセットリストは20年前に作った「ROENTGEN」の楽曲やL'Arc-en-Cielの曲を織り交ぜたものだったし、狩衣や浄衣といった衣装もある意味で仮装だったじゃないですか。

──確かに。

これまでのハロウィンライブで培ったものも反映されているんです(笑)。その衣装も京都にいる友達との関係がなかったら作ることができなかったし、茂山さんの出演も、雅楽との共演もこれまでの交友関係があったからこそ実現できた。いろんな縁がつながってますね。

「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」の模様。(撮影:岡田貴之)

「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」の模様。(撮影:岡田貴之)

──映像化にあたっていろんな角度からご自身のパフォーマンスを観られたと思いますが、特に印象深い曲を挙げるとすると?

本編ではないんですけど、ドキュメンタリーのほうに収録されている初日の「THE ABYSS」かな。雨の中で披露したことで、楽曲の説得力が増したと思います。雅楽との共演が実現した「ZIPANG」や「MY FIRST LAST」も、この公演ならではの特別な感じがありますね。特に「MY FIRST LAST」は宇宙との精神的な意味でのつながり、神様とのつながりを感じながら歌うことができました。

──「MY FIRST LAST」はプロジェクションマッピングを使った荘厳な演出もさることながら、「MY SOUL NOW RETURNS TO THE UNIVERSE」というワンフレーズが神聖な雰囲気を際立たせていました。平安神宮はなかなか定期的にコンサートができる場所ではないと思いますが、またあのステージで歌ってみたいという願望は?

終わったばかりのときは「次も……」といったことは考えていなかったんですけど、節目のときとかにまたやれたらいいですね。

歌に魂が乗るように

──そもそもオーケストラで歌うときのHYDEさんと、「RUMBLE FISH」のような激しいロックモードのときのHYDEさんの中で、意識はどう違うんでしょうか?

オーケストラに限らず歌を聴かせるタイプのコンサートのときは、パフォーマンスにおいての動きは関係ないと思っていて、いかにお客様の心に僕の歌を届けられるかに集中する。オーケストラのメンバーは超一流で小さい頃から鍛練してきたような人たちなので、演奏はお任せして、僕はメンバーが奏でる音の波に乗る感じなんです。一方でロックのライブは、体全体を使ってのパフォーマンスを意識してます。

──歌以外のことにも気を払う必要があると。2021年は年間を通してオーケストラとのコンサートをされていましたが、それを経て発見したことはありましたか?

オーケストラコンサートとしては、2019年の「黑ミサ」(参照:HYDE和歌山バースデーコンサートをKenがサプライズで祝福「僕の人生に悔いはない」)以来だったんですけど、その後は激しいロックのライブをたくさんしていて、そこでも自分は経験を積んでいたんですよね。ロックのライブとオーケストラをバックに歌うのは歌い方が違うと思われるかもしれないですけど、実は歌というのは全部つながっている。そのことを実感しましたね。ロックのライブでの経験が知識となって、オーケストラで美しい声を出すことにつながっている。だから2019年の「黑ミサ」と今回のオーケストラツアーを比べていただくと、今回のほうがよく歌えていると思います。

HYDE

──その“よく歌えている”というのは具体的には?

もっと歌に魂が乗っているというか。今にして思うと、以前は「僕、上手でしょ」みたいな感じで歌っていたんです。今はもっと魂を込められる。精神論だけではなくて音のニュアンスも含めてね。例えば、泣きながら歌っているからといって悲しい感情を伝えられるわけじゃないでしょ? 歌のうまさというのは、声色をいかに言葉やメロディに乗せられるかというテクニックだと思うんです。そういう意味では、この数年で歌を届けるテクニックが向上したと思います。

──去年インタビューしたときに、「自分はまだまだと思うところがある」とおっしゃっていましたが(参照:HYDEソロ20周年記念インタビュー)、1年を経てアップデートできた手応えはありますか?

目標値はまだまだ高いですけど、順調に成長しているとは思います。前回の「黑ミサ」から2021年のオーケストラ公演までが“1”だとしたら、これから先もう“1”くらいはいけるかなという感じですね。

プロデューサーHYDEの自己評価は?

──「ROENTGEN」ツアーの映像についてもお伺いしたいのですが、ご自身的に特にグッときたポイントはどこでしたか?

自分のパフォーマンスではないんですけど、冒頭でオープニング映像が流れるんですね。鳥籠が組み立てられていく様子を描いたCGなんですけど、最初スタッフからそれを提案されたとき、単にCGで完成された鳥籠が写し出されるだけだと思っていたんです。でも実際の映像は、1つひとつの部品から鳥籠が作られていく内容になっていて、それを観たときに籠を構成しているパーツが骨に見えたんです。

──へえ!

レントゲンって骨が写るじゃないですか。どんな人でもレントゲンで撮影されたら骨でしかない。そういった意味を踏まえて静かな音楽だけどロックな精神があるってことで「ROENTGEN」っていうタイトルをつけたんだけど、偶然にも鳥籠を構成する鉄パイプが骨に見えてコンサートが始まる。と思ったらゾクっとして。このリンクの仕方はすごいし、観た瞬間に想像以上に深くなってよかったと思いましたね。あと、ラストの「SECRET LETTERS」はグッとくるものがありました。コンサートが終わってしまう儚さと、「ROENTGEN」というアルバムの世界が表現されているというか。

──「SECRET LETTERS」はアンネ・フランクが記した「アンネの日記」をモチーフに作られた曲ですよね。抑圧された状況の中でも、心だけは自由だと切実で密やかな願いを歌っていて、静謐な余韻を残す1曲です。そしてその歌詞からは、囚われた状況を示すものとしての鳥籠の存在を嗅ぎ取ることができる。それを考えると、いろいろなことがつながる気がします。

アルバムの曲順通りに歌っていっただけなんですけど、歌詞の内容もあるのかな……自分的には泣けるポイントでしたね。

──ところでHYDEさんは普段からご自身のライブ映像や音源を観たり聴いたりしますか?

完成した直後はよくしますね。豪華BOX盤に付く「黑ミサ」のライブ音源もすごくいいなと思いました。でも、ひと通り聴いたらもう飽きちゃうんです(笑)。仕事や勉強としては音楽も聴くし、ライブ映像も観るんですけど。

──今後オーケストラコンサートを開催される予定は?

具体的には決まってませんが、またいつかはと思ってます。ライブハウス公演だと普段は頭上に人が転がったりするし(笑)、僕のファンの中には体力的に参加が難しい方もいらっしゃると思うので。そういう方たちは「HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021」を楽しんでいただきたいなと。

──今回映像化される2公演を踏まえて、2021年という1年を総括するとしたらどんな評価になりますか?

我ながら頭いいなと思いましたね(笑)。コロナ禍で今まで通りのライブができず制限された状況の中、オーケストラ編成によるホール公演に振り切ったことで、ほぼキャパシティいっぱいまでお客さんを入れられたので興行的にも成功したし、安全にエンタテインメントを発信できることも証明できた。この状況下においては完璧な1年だったと思います。

──過去にもお聞きしたことではあるんですが……今のHYDEさんにとってライブというのはどういうものですか?

もちろん自分にとって意味があるものですね。ファンを楽しませられる場であり、喜びの1つですけど、今の僕にとっては“アーティストHYDE”としてどこまでジャンプできるかを確かめるためのもの。今、HYDEとしてどこが一番ピークなのかを探っている状態で。例えば自分が高跳びの選手だったら、一番高く跳べたという証を作りたいだけなんです。今は一番高いところに自分が印を付けられるように、ラストスパートをかけている感じ。どこまでいけるか自分でもわからないけど、まだ伸びしろを感じています。

──では2022年下半期以降はどんな活動を展開されるんでしょうか?

コロナ禍で一度止まってしまったアメリカへの挑戦を再開させる予定です。

──そんな活動を、例えばHYDEさんがプロデューサー目線で見た場合、どう評価されますか?

ほかのアーティストとは違う手法でカウンターを狙っているので、ロックフェスでも異色だと思うし、その一方でオーケストラコンサートもできるし、L'Arc-en-Cielのメンバーとしての側面もあるし。多面性というか、いろんな顔があって面白いキャラクターだと思いますね。

HYDE

ライブ情報

HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH

  • 2022年8月6日(土)北海道 Zepp Sapporo
    <出演者>
    HYDE / CVLTE
  • 2022年8月7日(日)北海道 Zepp Sapporo
    <出演者>
    HYDE / NOISEMAKER

VAMPROSE ARCHIVES presents HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH

  • 2022年9月4日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
    <出演者>
    HYDE / ASH DA HERO
  • 2022年9月5日(月)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
    <出演者>
    HYDE / ASH DA HERO

※「HYDEIST」「Circle A」会員限定公演


HYDE LIVE 2022

  • 2022年9月7日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2022年9月8日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2022年9月10日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)

※「HYDEIST」「HYDERoom」会員限定公演


HYDE LIVE 2022 BEAUTY&THE BEAST supported by EdgeTechプロジェクト

2022年9月11日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)

プロフィール

HYDE(ハイド)

L'Arc-en-Ciel、VAMPSのボーカリスト。2001年からソロ活動をスタートし、日本のみならずワールドワイドに活動している。ツアーの一環でアメリカ・Madison Square Gardenや東京・国立競技場などで単独ライブを行い成功を収めている。2022年6月より対バン形式のライブハウスツアー「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」を開催。ソロ活動20周年を迎えた2021年に開催した「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」の模様を収めた映像作品を7月27日にリリースした。