「ホットギミック ガールミーツボーイ」特集 花譜|“3つの初恋”を儚い歌声で彩るバーチャルシンガー

販売部数累計450万部を超える相原実貴の人気マンガ「ホットギミック」を実写化した映画「ホットギミック ガールミーツボーイ」が6月28日に劇場公開された。

監督を務めたのは「溺れるナイフ」などの映画作品や、さまざまなアーティストのミュージックビデオを手がけたことで知られる山戸結希。堀未央奈(乃木坂46)が主人公である平凡な女子高生・成田初を演じ、初と同じマンションに住む幼なじみ・橘亮輝に清水尋也、同じく幼なじみで人気モデルとして活躍する小田切梓に板垣瑞生、初の兄・凌(しのぐ)に間宮祥太朗が扮する。

そして、3人の男性との恋に揺れ動く初の思いをエモーショナルに伝えるのが、主題歌の「夜が降り止む前に」だ。この曲を歌う花譜は2018年10月からYouTubeやInstagramを中心に活動を展開している、現在15歳のバーチャルシンガー。音楽ナタリーでは彼女にメールインタビューを行い、この映画の魅力や主題歌制作の裏側などについて聞いた。

取材・文 / 橋本尚平

私だったら橘くんと幸せになりたい

──映画を観た感想を教えてください。

第一印象として、本当にすごくきれいだなと思いました。映像はもちろん、言葉も音楽も。あと演者の皆様も美しいですし、とにかくどこを切り取ってもどこを見てもきれいで感動しました。写真でシーンが変わっていく演出がすごく好きでした。

「ホットギミック ガールミーツボーイ」より、堀未央奈演じる成田初。

──特に印象に残った場面はどこですか?

初が嫌がりながらも背伸びをして橘くんにキスをするところですね。ああ……と頭を抱えてしまいました。

──主人公・成田初のような人物をどう思いますか?

ちょっと抜けているけれど、その抜けているところに最強のかわいさと色気が詰まっているというか。あれは誰だろうと恋に落ちてしまうなと思いました。それを無自覚でやっているのがまた魔性の魅力ですね。

──男性陣3人の中では、あえて選ぶとしたら花譜さんは誰が好きですか?

すごく難しいのですが、選ぶとしたら橘くんです。最初は「なんだこいつ!」と思ってしまったけれど、気付いたらあまのじゃくだけどまっすぐな橘くんに心を持っていかれていました。

「ホットギミック ガールミーツボーイ」より、清水尋也演じる橘亮輝(左)、堀未央奈演じる成田初(右)。

──もしも花譜さんが成田初と同じ状況になってしまったとしたら、どんなストーリーが展開されると思いますか?

3人とも選ぶのがもったいないくらい素敵ですが、私はたぶん、最近までお兄ちゃんだった人には恋はできないと思うし、梓みたいな派手なタイプの人とはあまり仲良くなれないと思います。そして何よりも、橘くんの言動や話し方に惹かれて好きになってしまったので、私だったら橘くんと幸せになりたいと思いました。

曲や映像のよさを
私が殺すようなことをしてはいけないと思って

──映画を観たうえで、主題歌「夜が降り止む前に」をどのように歌おうと考えましたか?

この曲は、作詞作曲を手がけてくれたカンザキイオリさんが、作品についてたくさん考えて作ってくれたんだと思います。そして山戸監督の作る映像がすごくきれいなことは前々からミュージックビデオや映画を観てとても感じていました。だからその曲や映像のよさを私が殺すようなことをしてはいけないと思って、歌うのはとても緊張しました。

──実際、とても映像にマッチした歌になったと思いますが、曲や映像のよさを殺さないために、花譜さんは具体的にどんなふうに歌ったんですか?

映像や歌詞の美しさをきちんと伝えられるように、情景とか感覚とかを想像しながら、歌の強弱や息の吐き方などを工夫して、がんばって歌いました。

──カンザキイオリさんからは制作やレコーディングの際に、歌い方についてのディレクションや、曲のイメージの共有などは何かありましたか?

「ホットギミック ガールミーツボーイ」のワンシーン。

「儚げなイメージを全面に出して、最後のサビでパーンと弾け出す感じに」というリクエストをいただきました。

──ちなみに、過去の山戸さんの監督作品で印象に残っているものは何かありますか?

一番印象に残っているのは、RADWIMPSの「光」のMVです。最初に観た山戸監督の作品で、はじめは出演している玉城ティナちゃんのかわいさに目を奪われていたのですが、気付いたらどんどん映像に惹かれていました。特に印象的なのが、女の子が1人で白線の上に寝転がっているシーンで。泣きそうになりながらこっちを見ているところとか、足をじたばたさせるところとか、あと「君の方はどうかな」という歌詞の部分でぼーっと空を見ているところとか、むちゃくちゃ好きです。

──山戸監督から「夜が降り止む前に」についての感想を何か聞きましたか?

直接は聞いていないのですが、「花譜さんとカンザキさんの芽吹くような才気に、心打たれました。エンドロールの暗闇に、歌声と物語と聴く人の心が、交わる主題歌でした」とコメントしていただき、とてもうれしかったです。

“恋愛映画”というカテゴリーには
収まりきらない魅力がたくさん

──「夜が降り止む前に」の一番気に入っている部分、こだわりのポイントなどはありますか?

「ホットギミック ガールミーツボーイ」より、間宮祥太朗演じる成田凌(右)。

特に好きなのは「月が輝く塔に」「遠く鳴る海が奪い去る」と歌うところです。夜の海で静かに鳴る波の音や、空がきらきら光っている神秘的な風景が目に浮かぶようで、とてもきれいで好きです。今さらですが、こんなきれいな曲を作れるカンザキさんはすばらしいなと思いました。

──映画のエンディングで自分の歌声が流れた感想は?

「うわっ、ホントに流れてる!」という気持ちでした。主題歌は当然ながら映画を観た人たちが聴いてくれるわけなので、映画館で上映が終わったあとに同年代くらいの子が「この曲よくない!?」と言ってくれてるところを想像して、少しニヨニヨしてしまいました。エンドロールが流れ始めると帰ってしまう人も多いけど、全員帰らずにこの曲を聴いてくれたらうれしいです。

──花譜さんの主題歌に限らず、劇中で流れる音楽が印象的な映画だったと思います。それらの音楽についての感想は何かありますか?

「ホットギミック ガールミーツボーイ」より、板垣瑞生演じる小田切梓。

本当に素晴らしい音楽たちでした。私の薄っぺらい語彙力が憎いですが(笑)。「エリーゼのために」が、映画内のキラキラでふわふわした空間や、梓と初の間の空気感にとてもピッタリで素敵でした。

──これから映画を観に行く読者に向けて、何かメッセージはありますか?

「ホットギミック ガールミーツボーイ」は、とても素敵な映画です。“恋愛映画”というカテゴリーには収まりきらない魅力がたくさん詰まっています。ぜひご覧ください。

──花譜さんは8月1日に東京・LIQUIDROOMで初のワンマンライブ「不可解」を開催しますが、このライブに向けての意気込みを教えてください。

1stワンマンライブ「不可解」は、クラウドファンディングなどでつながった、たくさんの人々の協力により完成するライブです。私はステージで好きな歌を歌います。皆さんに「来てよかった」「応援しててよかった」と思ってもらえるような、楽しい、熱い、美しいライブになるように、私もがんばりますので、どうか楽しみにしていてください。

公演情報

花譜1st ONE MAN LIVE「不可解」
  • 2019年8月1日(木)東京都 LIQUIDROOM
映画ナタリー 「ホットギミック ガールミーツボーイ」を語り尽くす 映画ライター座談会 掲載中!