細野晴臣「HOCHONO HOUSE」 PR

細野晴臣「HOCHONO HOUSE」特集|小山田圭吾&安部勇磨(never young beach)インタビュー 遺伝子を継ぐ2人のミュージシャンが語る細野晴臣とは?

安部勇磨(never young beach)が語る細野晴臣と「HOCHONO HOUSE」

never young beach

「え? 何これ? ヤバくない?」

細野さんが「HOSONO HOUSE」をリメイクしてると聞いたときは、「ホントにやってくれてるんだ!」と思って。音楽ナタリーのインタビューで「HOSONO HOUSE」をリメイクしてほしいと伝えたときに「安部くんが言ってくれるんだったら作ろうかな」とはおっしゃっていたんですけど、実際に作ってると聞いたときは驚きましたね。スタッフさん経由で「ホントに作ってるらしいよ。しかも『恋は桃色』が打ち込みになってるらしい」って聞いたときには、「え!? なにそれ!? 聴きたいー!!!」とアルバムの完成がさらに楽しみになりました。

「HOCHONO HOUSE」の音源を初めて聴いたときは言葉が出ませんでした。レコーディングの帰りに車で聴かせていただいたんですが、1曲目の「相合傘」が始まった瞬間にメンバー全員黙っちゃって。「え? 何これ?」「細野晴臣ヤバくない?」みたいな空気になった。とにかくめちゃくちゃ“今の音”なんですよね。そのうえ、海外の最新の音楽ともリンクしているところを感じて。細野さんはおそらくそのことを意識してなくて、すごく内向きに「HOCHONO HOUSE」を作っていったと思うんですけど、それが巡り巡って時代の最先端の音になってる。71歳の音楽家が過去の作品のセルフリメイクでこんなすごい音を鳴らすのか……と驚きました。しかも、カントリーからテクノまで、音の振り幅も広くて、細野さんの今までの歴史を凝縮したような作品になっていて。僕らのほうが年齢的には若いはずなのに、僕らが作る音楽よりも新しいし、自分たちはいったい何をやってるんだ!? もっとやらなくちゃ、と刺激をもらいました。約45年ぶりにリメイクしたアルバムに対して、ちょっとふざけてみましたみたいなユーモアのあるタイトルを付けちゃうセンスのすさまじさも1000点ですよね。単純にこれは若い音楽ファンも全員聴かなきゃいけない、音楽の教科書のような作品だと思います。

僕の中で今年のベストアルバムは「HOCHONO HOUSE」に決まりですね。これを超える作品は、もう出てこないと思います。そもそも50年にわたって日本の音楽シーンに偉大な功績を残してきた方が今さら新しい作品を作らなくてもいいと思うんです。でも、宮崎駿さんもそうですけど、歳を重ねても世の中に向けて作品を発表して、それが人々を刺激して何かを作るきっかけを与えてくれる。もう文化遺産みたいな存在ですよね。ただご本人は飄々としていて、「すごいですね!」とか感想を伝えても「ホント?」とか「そうなの?」とかおっしゃるんです。そういうところも細野さんの大好きなところなんです。

何回聴いても発見がある「HOSONO HOUSE」

「HOSONO HOUSE」を初めて聴いたのは21か22歳の頃。当時は10代の頃に聴いていたThe LibertinesとかThe Strokesの影響で、とがったロックをやりたいなと思っていたんです。でも、突然「あっ、俺この音楽向いてねえな」って気付いて(笑)。知り合いに勧められてはっぴいえんどや細野さんの音楽を聴いたときに、「日本語の歌詞で、こういう伝え方ができるんだ。こんな表現の仕方があるんだ」と感じたんです。「HOSONO HOUSE」のオリジナル盤のレコードを聴いたときは、本当に感動しました。音のよしあしやキレイか汚いかといった概念が覆されるというか。音楽の生々しさを感じた。僕はそこに可能性を感じたし、これは後世に残していかなきゃいけない音楽なんだと思って。そんな影響を僕なりのやり方で追及しようと思って始めたのが、never young beachというバンドだったんです。

細野さんはいつも「『HOSONO HOUSE』の何がいいのかわからない」とおっしゃるんですけど、やっぱりすごいんです。当時はオープンリールで録っていたでしょうし、パンチインが何回もできるような環境ではなかったと思うんです。どこに楽器を置けばどういう音が跳ね返ってきて……とかわかる時代ではなかったでしょうし、そもそも一軒家でレコーディングすること自体、前代未聞だったと思うから。「HOSONO HOUSE」には右往左往しながらご本人たちが悩みながら録っていった空気感がある。そのときの演奏者の気分だったり、細野さんとの関係性とか、セッションのように作っていった空気感が奇跡的に収められている。音楽が“生きている”というか。「HOSONO HOUSE」という作品には、人とどうやって交わっていくか、自分はどういう指針を持って生きていくかといったメッセージも込められている気がします。だから何回聴いても新しい発見があるんです。

細野さんの作ってきた音楽を
下の世代につなげていきたい

4年ぐらい前にマック・デマルコが来日したときに話を聞いたんですが、今、細野さんや山下達郎さん、浅川マキさんが70年代や80年代に作った音楽が海外で評価されているらしくて。でも、その方たちは当時、海外の音楽を取り入れて自分たちなりの感性で作品を作っていたんですよね。そういう音楽が時を経て、日本ならではの音楽として評価されている。細野さんの音楽で言えばルーツは洋楽でも、日本独特の季節感や湿り気のようなものが出てるんでしょうね。そういう音楽が評価されているのを見ると、日本人も自信を持って自分たちのよさを出していけば海外の人にもっと受け入れられるんじゃないかと思うんです。

僕は日本の音楽を変えたいとか思っているわけではないんですけど、人間の営みが続いていく以上、細野さんの作ってきた音楽を下の世代につなげていきたいんです。僕がいるのは細野さんのおかげだし、こんなにも素敵な音楽があるということをいろんな人に知ってほしい。僕を介して細野さんを知った下の世代が面白い音楽を作って、日本の音楽をもっともっと面白くしてくれたらうれしいです。

意外とツッコミ待ち

細野さんって、意外とツッコミ待ちだと思うんですよね(笑)。大御所の方だからみんな遠慮しちゃうのかもしれないんですけど、冗談をおっしゃったときにツッコミを入れたら、ちゃんと笑ってくれるんです。それにすごく人間味あふれる方で。初めてイベントでご一緒になったとき、僕らが緊張して挨拶に行けずにいたら、わざわざ席に来てくれて「君たちが来ないから来ちゃった。ネバヤンでしょ?」と言ってくださって。僕らが勝手に壁を作っていただけで、実はすごく気さくで面白い方なんだなって。シャイな方なのかなと思うので、音楽の話になると、かわされてしまったりすることもあるんですけど、何気ない話題については、けっこうフランクにお話してくれるんです。

これからの細野さんに望むこと……これホントに図々しいんですけど、いつか僕らの曲をプロデュースしてほしいです。細野さんにプロデュースしてほしいと伝えたら、「自分の曲を作るより、ほかの人の作品をプロデュースしたりするほうが好きだから、いつでも声をかけてね」とおっしゃってくださって。僕の大好きな音楽を作った人が、いったいどういう過程で作品を録っていくのかを知りたいんです。例えばマイクの立て方だとか、レコーディングの方法も含めて、後世に残していきたいんですよね。それと可能であれば、いつか共演もしてみたいです。この2つが叶ったら、もう音楽を1回お休みして1年くらい旅行します。それが最近の僕の目標です。

never young beach(ネバーヤングビーチ)
安部勇磨(Vo, G)、阿南智史(G)、巽啓伍(B)、鈴木健人(Dr)によるバンド。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演する。2016年には2ndアルバム「fam fam」をリリースし、さまざまなフェスやライブイベントに参加。2017年7月にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。2018年10月に10inchアナログシングル「うつらない / 歩いてみたら」を、2019年5月8日にニューアルバム「STORY」をリリースする。
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