ナタリー PowerPush - 郷ひろみ×ヒャダイン

「99(ナインティナイン)は終わらない」発売記念インタビュー 99枚目で交差した2つの才能

年齢がただの数字でしかなくなってくる

──郷さんはこれまでにも若い作家やアーティストとのコラボレーションを展開されていますけど、ヒャダインさんとのタッグはいかがでしたか? ヒャダインさんの歌入れのディレクションって、おそらくほかの現場ではあまりないであろうハイテンションぶりですよね。

ヒャダイン 失礼だな君は!(笑)

 彼は間違いなく僕にないものを持ってらっしゃるから、そういう方にプロデュースしてもらうことで、次はどんなふうに変化していけるのかな?って、ひたすら楽しみでしたね。新しい作家とのコラボレーションは、自分自身の知らなかった顔に何かを気付かせてくれるので。変化を求めるからには、こちらもフレキシブルでいられないといけないんですよね。そうじゃなかったら作詞も作曲もディレクションもと全部お任せにはできないですよね。

ヒャダイン 本当にフレキシブルですよね。どんな要求をしても全部受け止めた上で、こちらが望んだ以上のものを吐き出してくれる。普通ここまでキャリアのある方とお仕事するなら、僕ももっと萎縮しちゃうと思うんですけど、全然そんなふうにはならないんですよ。途中から年齢がただの数字でしかなくなってくるような、すごい磁場が生まれるんです。純粋に1人のミュージシャン同士の会話になってくるという、すごい包容力ですね。貴重な経験をさせていただきました。

郷ひろみ

 年齢とかキャリアってひけらかすものじゃなくて、心の中にゆっくり流れてればいいんです。ひけらかしてしまえば過信になるし、心の中に収めておけば自信になる。それに、要求されたことに「できない」って答えるのがイヤなんでしょうね。とりあえずやってみると。やってみて違うと思ったら「こっちのほうがいいかもしれませんね」って言えばいい。そうじゃないと相手に対しての説得力がないんですよ。

ヒャダイン いいものを作りたいだけ、という郷さんのエンタメ精神がなせる技ですよね。こうありたいと思う理想型の3次元が今横にいらっしゃるんですよ(笑)。歌詞の中に「スーパーマンじゃ ない ない ない」とあるんですけど、郷さんのことをみんなすべての資質を兼ね備えたスーパーマンだと思われてるかもしれないけど、それは時代と並走できるだけのたゆまぬ努力の結晶なんですよ。守りに入らない心のフレキシビリティがあるからこそで。

──「99は終わらない」ではそんな郷さんのスタンスが、あくまでサラッとポップに歌われているのがいいですよね。いい感じに軽いんですよ。

ヒャダイン 郷さんのフィルターを通したら、一気にエンタメソングになるんですよ。

ヒャダインが知りたい郷のひみつ

──ヒャダインさんにとって郷さんは作家とアーティストの関係であると同時に、アーティストとしての大先輩でもあり、人生の先輩でもありますよね。この機会に何か聞いておきたいこと、アドバイスをもらいたいことなどありますか?

ヒャダイン レコーディングで接して個人的に聞いてみたいことはたくさんあったんですど、今日のお話の中でたっくさん答えをもらったので(笑)。答え合わせが全部済んだというか。……逆にすっげーつまんないこと聞いてもいいですか?

 なんですか?

ヒャダイン

ヒャダイン 好きな食べ物ってなんですか?

──あはははははは(笑)。

ヒャダイン すっごい知りたい!

──確かに! オールタイムフェイバリットでもいいですし、ごく最近のマイブームでもいいですし。

 そうですね……僕はどうも、おかずが好きなんですよ。

ヒャダイン おかず!? 主食ではなく?

 そうなんですよ。気が付くとごはんをどけて、おかずだけ食べちゃうんです。自分が大好きなものからまず箸を付けるね。

──あ、好きなものから先に食べるタイプなんですね。

 はい。好きなものはおいしいうちに速攻で食べちゃう。あと、好きな食べ物を挙げると……チーズですね。チーズは深いんですよ。ワインと同じように深いんです。

ヒャダイン ですよね。深い。

 僕、チーズは見てるだけでもうれしくて。犬みたいにジュワーッとよだれが垂れちゃう(笑)。スーパーでは必ず最初にチーズ売り場に行くからね。並んでいるのを眺めながら「これはダメだな」「これは間違いない」って。

ヒャダイン 見るだけでわかるんですか?

 うん、わかる。

ヒャダイン チーズでもやっぱり求道するんですね(笑)。いやーうれしい。生身の郷さんはまだまだミステリアスな部分が多いので。

“第2の郷ひろみ”を育てたい

──では最後に。“アーティスト郷ひろみ”としての目標やその先にあるゴールについてはきっと考えられていると思いますが、アーティストとしての道以外でやっておきたいこと、目指していることはありますか?

 ああ、第2の郷ひろみを育てたいというのはありますね。

ヒャダイン へえー!

 いつかね。可能かどうかわからないし、そんな機会は訪れないかもしれないけど、僕が持っているノウハウをすべて教えられる男の子がいたら面白いかなって。僕は最初ジャニー喜多川さんから徹底的な英才教育を受けて育って、そのあと自分自身で磨き上げてきたノウハウがあるんですよ。それを誰にも伝えずに終わっていくのはもったいないなあって。

──言われてみれば確かに。勝手に郷ひろみという存在は唯一無二だと思い込んでいましたけど、すべてのノウハウを受け継いだ次世代の郷ひろみがバトンをつないでいくという方向性もあるんですね。

左から郷ひろみ、ヒャダイン。

 実際にやってみたとして、どの程度伝えられるのかはわからないですけど。

ヒャダイン 受け手のポテンシャルも重要でしょうしね。

──男の子限定なんですか?

 男の子じゃなきゃダメですね。女の子ではイメージが湧かないなあ。

ヒャダイン ただ大変な茨道だとは思いますけど。郷さんのストイックな姿を見ていると。

 だから自分の子供では無理ですね(笑)。相当な覚悟を持った人間じゃないと。でももしそんな可能性を感じる男の子に出会ったら、すべてを伝えて渡したいです。

郷 ひろみ 『99は終わらない 合いの手入りver.』

99thシングル「99は終わらない」 / 2014年5月21日発売 / ソニーミュージックエンタテインメント
初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット] 1650円 / SRCL-8537~8
通常盤 [CD] 1340円 / SRCL-8539
CD収録曲
  1. 99は終わらない
  2. 愛しい他人~パリの散歩道~ 2014ver.
  3. 99は終わらない ~Instrumental~
  4. 愛しい他人~パリの散歩道~ 2014ver. ~Instrumental~
初回限定盤DVD収録内容
  • 99は終わらない Music Video
  • 99は終わらない Making
郷ひろみ(ゴウヒロミ)

郷ひろみ

1955年10月18日生まれ、福岡県出身の歌手。1971年にジャニーズ事務所に所属し、フォーリーブスの弟分として注目を集める。1972年1月にはNHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優としてデビューし、同年8月にはシングル「男の子女の子」で歌手デビュー。西城秀樹、野口五郎とともに“新御三家”として人気を博した。その後も「よろしく哀愁」「林檎殺人事件」「How many いい顔」「お嫁サンバ」「2億4千万の瞳」などバラエティに富んだ楽曲でヒットを記録。1990年代には「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」「言えないよ」「逢いたくてしかたない」とアダルトなバラードを3作連続でリリースし、ボーカリストとして新たな魅力を発揮した。1997年9月には東京・日本武道館にてデビュー25周年公演を実施。1999年9月発売の「GOLDFINGER '99」は郷のキャラクターと独創的な振り付けが話題を呼び大ヒットした。2002年1月には芸能活動を休止し、レッスンのため2005年までアメリカ・ニューヨークに拠点を置く。55歳の誕生日を迎えた2010年10月には2度目の日本武道館公演「55!伝説」を開催。2013年大晦日には「NHK紅白歌合戦」に通算26回目の出場を果たした。2014年5月には通算99枚目となるニューシングル「99(ナインティナイン)は終わらない」をリリース。

ヒャダイン / 前山田健一
(ヒャダイン / マエヤマダケンイチ)

ヒャダイン / 前山田健一

1980年7月4日生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身につける。京都大学を卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一として、倖田來未×misono「It's all Love!」、東方神起「Share The World」などのヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。その後もヒット曲を量産し、2011年4月にシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」でヒャダインとしてメジャーデビューを果たした。2012年11月には初のソロアルバム「20112012」を、2013年1月には6枚目となるソロシングル「23時40分 feat. Base Ball Bear」を発表。2014年2月にテレビアニメ「ガンダムビルドファイターズ」のエンディングテーマ「半パン魂」をシングルとしてリリースした。同年5月発売の郷ひろみの99thシングル「99(ナインティナイン)は終わらない」では作詞・作曲およびサウンドプロデュースを担当。