ナタリー PowerPush - 平野綾

音楽活動第2章の幕開け!「FRAGMENTS」全曲解説

06. BRIGHT SCORE[作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:石垣美隆]

──この曲は重厚なストリングスが印象的です。

この曲も意外とやったことのなかったジャンルで、歌うのが難しかった曲ですね。今までロックをやるうえで、わざとがさつな歌声を出す練習をしてたんですよ。少し前はそればっかりになってたので「うわ、きれいな音が出ない」と思って(笑)、すごく練習しました。

──自分なりに「ロック」を演じる声の表現というか。

はい。あと、お芝居の中でも最近ツッコミ役がすごく多かったんですけど、きれいな音でツッコミしても面白くないんですよ。ひっくり返った声やザラッとした音が混じってるのがツッコミとしてはベストで。「らき☆すた」で泉こなたの役をやるときも、わざと声つぶしたんですよ。そうやって声優の仕事でも徐々に声をつぶしてたので「うわあ私きれいな声が出なくなってる」って(笑)。きれいな声を出そうとすると、一歩間違うとオペラ的になっちゃうんですよ。どちらかというとそういう声のほうが得意で、舞台よりの発声になるんですよね。そこのバランスが難しかった。この曲と「無防備なリフレイン」は歌い方で大きく世界観が変わってくる気がして、どちらも3パターンぐらい用意していきましたね。

──ライブではまた表現に違いが出てきたりもして大変そうですね。

だいぶ大変ですね(笑)。今ツアーのセットリストを作ってるんですけど、その置き位置も難しくて苦労してます。

07. Sunday[作詞・作曲・編曲:ヒゲドライバー]

──この曲もある意味、これまでのスタイルを継承するロック路線ですね。

今まではプラスの要素が多い、明るいロックが多かったんですけど、これは「ちょっとカッコいい目のやつを作ってみようよ」って。“切な系ロック”ぐらいのキーワードしか出してなかったのに、こういう感じで仕上げてくれたんです。「切ないってより暗いよ」って話もあったんですけど(笑)。ヒゲドライバーさんは普段無口な方なので「こんなこと考えてるんだなー」と。彼は「この曲が選ばれなかったら田舎に帰ろう」ってたぐらい思いを込めて作ってくださったみたいで(笑)。

──あはははは(笑)。

人ひとりの人生を救った気持ちでいます(笑)。でもホントにカッコいい曲で、最初にみなさんからデモをもらったとき、個人的に一番気に入ったのがこれだったんですよ。アンバランスな感じなんだけど、微妙なバランスで成り立っているというか。歌詞はめちゃくちゃ暗いけどなぜか前向きに聴こえるみたいな。すごく魅力的だったんですよね。

──今回のアルバムには「作家が考える平野綾像」が詰まっているとすると、この暗さもヒゲドライバーさんが見た「平野綾」の姿ということですよね。

そうですね。でもこれはヒゲさんの個人的な思いもいっぱい入ってると思いますよ(笑)。

08. スターゲイズ・ラブ[作詞・作曲:クボタマサヒコ、ノボイスキ / 編曲:Miss Modular]

──この曲は今回のプロジェクトにおいて最初の一歩でもあり、アルバムに先行して配信される、ある意味"予告編"的な1曲でもありますね。サウンドとしては、今までの平野さんにはなかったエレクトロ路線で。

裏話をしてしまうと、元々はこの曲、クボタマサヒコさんとノボイスキさんが「Miss Modular」として初めてタッグを組むということで、私を交えたコラボシングルにしようという案があったんですよ。なので、平野綾らしくというよりはまず「コラボ感を出そうよ」って話から作り始めたんですけど、結局「平野綾名義で行きます」ってことになって(笑)。「じゃあ、ここからより平野綾らしさを増やしていこう」ってさらに作り込んで完成したのがこれなんです。

──なるほど。そういう経緯があったからこそ、より新鮮なイメージに写るのかもしれないですね。

経緯を知るとすごく納得してもらえる曲調だと思うんですけど、結果としてこの曲が最初にあったことが、アルバム全体に大きな影響を与えてると思います。スタッフさんがみんな口を揃えて言うのは「この曲が一番思い入れがある」(笑)。私にとっても一番かかわりの長い曲だし、テレビ番組に出るときもこの曲を歌わせてもらってるから、ひときわ愛着がありますね。曲調でも歌い方でもいっぱい冒険したし、PVも初めてのフルアニメーションなんですよ。それもすごい完成度で。アニメの大変さはよくわかってるつもりなので、完成した作品を観たときはホントに頭が下がりました(笑)。

09. 君を守るために僕は夢を見る(初回限定盤ボーナストラック)
[作詞:白倉由美 / 作曲:後藤次利 / 編曲:石垣美隆]

──これは平野さんが「ロリータ℃」名義で2001年に発表された曲のセルフカバーという、非常にレアな曲ですが、なぜ今この曲を歌おうと?

私、今まで自分が歌ってきたものは全部パソコンに入っていて、聴きたいときに聴くし、歌詞も大体の曲は覚えてるんですよ。中でも一番印象に残っているのが、最初に出したロリータ℃のアルバム(「ロリータの温度」)で。私の歌のスタート地点はここだし、今回新たなスタートを切る上でこの曲を入れるのがふさわしいかなと思って。

──ロリータ℃はあまりにも過去の話だから、平野さんの中ではなかったことになってたりするのかなと思ってたんですが、それほどに思い入れの強い存在だったんですね。

私の中でなかったものにしてることって、ないんですよ。なんかよく「黒歴史じゃん」って言われたりしますけど(笑)、この曲が使われたドラマ「多重人格サイコ」がなかったら今の私はなかったし、私の中ではすごく大事な歴史なのに勝手に黒にするなよ! って思ってるんですよ(笑)。

──自分の過去作品をまったく振り返らない、アーティストで言えば作り上げたアルバムは全く聴かないというタイプの方もいますけど、平野さんはそちらのタイプではないんですね。

すぐ振り返るタイプです(笑)。あの頃何やってたかなーとか。お芝居にしてもそうですけど、そのときにしかできないことってあるんですよ。「君を守るために僕は夢を見る」を聴き返しても、やっぱりあの当時にしか歌えない歌声で、今どんなにマネしようとしても絶対できないんです。そういうのをたくさん聴き返して、ふとしたときにパッとできるようにしたくて。

──声優という本業があるからこそ、それは大事な作業かもしれないですね。

はい。そうやって「思い出す」作業はなるべくふやしていこうと思ってます。

CD収録曲
  1. DIFFUSION(To the Other Side)
  2. 無防備なリフレイン
  3. FRAGMENTS
  4. PizzzzzzzA!!!!!!!
  5. LOOP
  6. BRIGHT SCORE
  7. Sunday
  8. スターゲイズ・ラブ
初回限定盤ボーナストラック
  1. 君を守るために僕は夢を見る
AYA HIRANO FRAGMENTS LIVE TOUR 2012
2012年6月16日(土)
静岡県 静岡Sunash
OPEN 17:30 / START 18:00
2012年6月17日(日)
愛知県 名古屋E.L.L.
OPEN 16:30 / START 17:00
2012年6月22日(金)
東京都 赤坂BLITZ
OPEN 18:00 / START 19:00
2012年6月23日(土)
宮城県 仙台darwin
OPEN 17:30 / START 18:00
2012年7月7日(土)
福岡県 福岡DRUM Be-1
OPEN 17:30 / START 18:00
2012年7月8日(日)
大阪府 umeda AKASO
OPEN 16:30 / START 17:00

料金:前売 5000円(ドリンク代別)/ 赤坂BLITZ公演のみ 6000円(ドリンク代別)
※整理番号付 / 中学生未満入場不可

平野綾(ひらのあや)

1987年生まれ愛知出身の声優/歌手。1998年に児童劇団に入団し、ドラマやCMに出演。2006年に話題アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の主役・涼宮ハルヒを演じ、大ブレイクを果たす。その後も「DEATH NOTE」「らき☆すた」「NANA」といった話題作に出演し、アニメ界を代表する存在に。幼い子供から艶っぽい大人の女性の声まで、さらに少年の演技も可能とその声は変幻自在。近年はソロシンガーとしてのCDリリースなど、声を生かしさまざまなシーンで活動を展開しており、今後もさらなる飛躍が期待される気鋭のアーティストの1人である。