音楽ナタリー PowerPush - 日笠陽子

ただひたすらに“カッコいい”ハードロックアルバム

カッコいいロック=心がキュンとなる音

──日笠陽子の名前がただの看板のように見えるとはいえ、“カッコいいロック”を指向したのは日笠さんご自身ですよね。なぜ日笠さんは今作に並んだイキのいいハードロックを「カッコいい」と思えたんでしょう?

抽象的な答えになってしまって申し訳ないんですけど、自分の心に残ったり、キュンとしたりするのがこういう音だったんです。アルバムのために集まってきた曲を選ぶときの基準もそれでしたし、「この人にお願いしよう」ってオファーして作っていただいたデモもキュンとできるかどうかを基準に聴いていましたし。で、もしキュンとこなければ、作り直しをお願いさせていただいたりもしました。

──「Couleur」には複数の作家さんが参加していますよね。「カッコいいロック」という、ある意味どうとでも解釈できる言葉と、「キュンとくる」という文字通り感覚的な言葉。作家陣はなぜ、この2つを手がかりに“日笠陽子の思うカッコいいロック”を作り上げられたんだと思います?

やっぱり時間をかけてみんなと密にやり取りした結果なんでしょうね。さっきもお話した通り、今回は私が作家さんたちと直接やり取りをさせていただいたので。アルバム全体のコンセプトは「カッコいいロック」「バンドサウンド」「私がキュンとするもの」と抽象的ではあるんですけど、1曲1曲については「こうしたい」という明確なビジョンがあって、そのビジョンについて作曲家さんたちと時間をかけてお話させていただいていて。その機会に恵まれたからちゃんとカッコいいロック、バンドサウンドになってるんだと思ってます。

「いい曲が入ったアルバムである」という事実

──「日笠陽子の考えるカッコいいロック」「日笠陽子のキュンとくる音」を言語化するのはやっぱり難しい?

うーん……。難しいですね(笑)。アルバムに入っている曲は全部私がキュンとくる、カッコいいと思えるロックではあるんですけど、細かく見るとサウンドはけっこうバラエティに富んでる気がしますし。

──そうですね。「新世界システム」は嵐「Monster」の作家でもあるCHI-MEYさんならではというか、威勢のいいハードロックではあるんだけど、いい意味でどこかJ-POP的。キャッチーさをたたえた、まさにリードトラックに似合う曲で、「Crazy you」は重たくて後ノリのリズムが印象的な70~80年代ハードロックテイストの楽曲ですし。

でもその全部にキュンときたんですよね(笑)。実はこのアルバムって作り始めた頃は11曲構成にするつもりだったんですけど、結局13曲になっちゃったのは、Myuさんが作った2曲、「Crazy you」と「Pollution」に出会っちゃったからですし。

──どちらもさっきお話した通り、ちょっとオールドスクール。本当に正統派の“カッコいいハードロック”ですよね。

そういうカッコいい2曲に出会ってしまった以上「13曲構成にするしかないでしょ」って話になり(笑)。目の前にいい曲があるなら、その曲は入れるっていうスタンス。「いい曲が入ったアルバムである」という事実だけを大事に作りたかったんです。「新世界システム」についても実は最初聴いたとき、ちょっとよくわからなくて。構成が複雑だし、デモの段階ではもっと音数が少なかったから、うまく曲の全体像を把握できかったというか……。

──確かに目まぐるしく展開しまくる曲ですよね。

それで「あれ? もう1回聴かせてもらえますか」ってなっちゃったんですけど、改めて聴いてみたら、さっきおっしゃていたキャッチーなメロディが、複雑な構成に乗ってるのがすごくカッコよかったし、その1回聴いたくらいじゃすべてを把握させない、一筋縄じゃいかない感じもカッコよくて。結局ほとんどデモに沿う形でアレンジを進めてもらいました。

「“あいつはクズだ”ゴミ箱」の誕生

──“カッコいいロック”の作家陣の1人にはGLAYのHISASHIさんも名前を連ねています。HISASHIさん参加を伝えたナタリーの記事(参照:日笠陽子「Couleur」にGLAY・HISASHI楽曲)もビックリするくらいアクセスを集めたし、実際かなりのトピックだと思うんですけど、どういう経緯でHISASHIさんと?

HISASHIさんが作詞作曲してくださった「憂冥」(ゆめ)のアレンジャーの小森(茂生)さんはもともとGLAYさんのサポートキーボーディストをなさっていた方で、しかも私自身、(アニメ「けいおん!」シリーズの劇中バンド)放課後ティータイムの頃からお世話になってる方なんです。で、ちょうどアルバムを作り始めた頃、GLAYさんが、小森さんがサポートしていた時代の映像をDVD化するためにHISASHIさんと小森さんが連絡を取り合っているっていうお話を聞いて。小森さんを通じてお願いさせていただいたって感じですね。

──その「憂冥」っていかがでした? カッコいいギターリフやストレンジなギターソロ、それからちょっと金属的でパーカッシブなドラムが鳴りまくってて、その上に乗る歌詞には「ハートに火をつけろ light my fire」「Everybody dance boogie Cherry Bomb」とロッククラシックのタイトルがバンバン放り込まれている。個人的には「HISASHIさんと小森さん楽しそうだなあ」「やりたい放題だなあ」って、いい意味で笑いが止まらなかったんですけど(笑)。

ですよね(笑)。この曲は絶対ライブの人気曲になるなって思ってます。その「憂冥」の詞に限らず、今回は特に詞も面白くなったなって思っていて。「新世界システム」の「誰かは言うよ あいつはクズだ」っていうのもすごいワードだと思いますし。あまりに好きすぎて「“あいつはクズだ”ゴミ箱」っていうグッズまで作っちゃいましたし(笑)。

1stアルバム「Couleur」 / 2014年9月3日発売 / ポニーキャニオン
初回限定盤 [CD+Blu-ray] 3780円 / PCCG-01417 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / PCCG-01418 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 2700円 / PCCG-01419 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 新世界システム
    [作詞・作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕]
  2. ENVY DICE
    [作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:渡辺和紀]
  3. Brighter day
    [作詞:KAORU / 作曲・編曲:HearTribe]
  4. Crazy you
    [作詞:YADAKO / 作曲・編曲:Masse]
  5. 美しき残酷な世界
    [作詞:マイクスギヤマ / 作曲:石塚玲依 / 編曲:根岸貴幸]
  6. 憂冥
    [作詞・作曲:HISASHI / 編曲:小森茂生]
  7. 風と散り、空に舞い
    [作詞:こだまさおり / 作曲・編曲:藤井雄大]
  8. 終わらない詩
    [作詞:yamazo、稲葉エミ / 作曲・編曲:yamazo]
  9. EX:FUTURIZE
    [作詞:hataru / 作曲:奥井康介 / 編曲:中山真斗]
  10. Pollution
    [作詞:YADAKO / 作曲・編曲:Masse]
  11. Sleepy Hungry Minds
    [作詞:nadia / 作曲:前澤寛之 / 編曲:中山真斗]
  12. Seek Diamonds
    [作詞:大森祥子 / 作曲・編曲:中山真斗]
  13. FLOWERS
    [作詞・作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕]
初回限定盤 BD / DVD収録内容
  • 「新世界システム」ミュージックビデオ
  • 「美しき残酷な世界」ミュージックビデオメイキングクリップ
  • 「終わらない詩」ミュージックビデオメイキングクリップ
  • 「Seek Diamonds」ミュージックビデオメイキングクリップ
  • 「EX:FUTURIZE」ミュージックビデオメイキングクリップ
  • 「新世界システム」ミュージックビデオメイキングクリップ
日笠陽子(ヒカサヨウコ)

日笠陽子神奈川県出身の女性声優、ボーカリスト。テレビアニメ「けいおん!」の秋山澪役など、数多くの人気作で主役級のキャラクターの声を多数担当。また、メインボーカルを務めた「けいおん!」のエンディング曲「Don' t say "lazy"」がゴールドディスクを獲得し、自ら考案したギャグ「てへぺろ(・ω<)」が流行語となるなど、アニメ業界外でも注目を集める。2013年5月「日笠陽子ソロプロジェクト」を立ち上げ、デビューシングル「美しき残酷な世界」をリリース。6月には2ndシングル「終わらない詩」を、7月には小室哲哉らが参加するコラボレーションアルバム「Glamorous Songs」を発表する。その後もアニメ「ダイヤのA」のエンディングテーマ「Seek Diamonds」や、「Z/X IGNITION」のオープニング曲「EX:FUTURIZE」といった話題作を立て続けにリリースし、2014年9月、初のオリジナルフルアルバム「Couleur」を発表した。