変態紳士クラブ×木村昴|次のステージに向かう「ZURUMUKE」対談

大阪城ホールのステージに立った先輩

VIGORMAN 本当だったら、その直後に大阪城ホールでのワンマンだったんですよね。ただ延期になってしまって。

木村 伺いました。めちゃくちゃ残念ですね。

VIGORMAN やっぱりライブが一番したいことなんですけど、今無理に行っても、僕らもお客さんも心から楽しむのは難しいやろうなって。それで延期という判断をして。

木村 逆に我慢して我慢して、そこで溜まったものが放出されたときはすごいライブになりそうですね。

GeG 僕らもそう思ってます。

木村 だから無駄じゃない延期だと思うんですよ。僕らも「ヒプマイ」で行う予定だったライブの多くが延期や中止になっていて、Buster Bros!!!は、オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”と丸善インテックアリーナ大阪で行う予定だったんですね。でも配信に切り替えることになって。ただ、ここで焦らした分だけ、いざ生でライブできたときは、本当に楽しいんだろうなって。

WILYWNKA そうですね。だから俺らも長めの前戯だと思ってます(笑)。

──ちなみに「ヒプマイ」は2019年に大阪城ホールでライブを行われていますね(4thライブ「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-4th LIVE@オオサカ《Welcome to our Hood》」)。

木村 この流れでそのお話をするのはかなり心苦しいですけど……お客さんの声援に飲まれて、海の中に潜ってライブするような感じでしたね。決して悪い意味じゃなくて、イヤモニしてるからお客さんの声も聞こえにくいはずなんだけど、それを超えて圧倒されるような熱気と声援を感じて。その状況がとにかく気持ちよかったし、楽しかった。大きな経験になりましたね。音の響きもよかったんですよね。ホールなのにヒップホップライブ向きな感じがしました。

VIGORMAN うわー、ライブしたくなってきたー(笑)。

WILYWNKA 先に城ホールのステージに立たれてる先輩の話を聞いたら、もっとライブやりたくなってきたな(笑)。

木村 あと、ケータリングが「わなか」さんのたこ焼きだったんですよ。

GeG めちゃくちゃいいですね(笑)。

木村 あと「551蓬莱」さんの肉まんもあって。

VIGORMAN 大阪名物ぞろいっすね(笑)。

木村 僕らはもう観光客状態で楽しんでました(笑)。

WILYWNKA 「わなか」はアメリカ村にもあるんですよ。僕が一二三屋でバイトしてたときは、地方から来たお客さんには「わなか食べや」って勧めてて。

木村 大阪城ホールでのライブが再実現したときは、ぜひ僕も拝見したいです。

VIGORMAN ぜひぜひ!

リスナーと距離感が近い

──では改めて、木村さんの考える変態紳士クラブの魅力を教えてください。

木村 いろんな魅力があるんですけど、最初に聴いたときから感じているのは「押し付けがましくないカッコよさ」かな。ラップミュージックって、その人の生き様やライフスタイルを明確にすることが1つのテーマになっていて。それがカッコいい部分でもあるんだけど、それが自分にフィットしないと、ともすれば押し付けがましくなったり、「自分に染み込まない」って感じることもあって。変態紳士クラブは、スタイルは明確にありつつ、それを押し付けない軽やかさがあるんですよね。それぞれの人に、それぞれフィットする場所があればいいし、全部をわからそうと押し付けたりはしないけど、でも近く感じるっていう。ホントの友達ってそういう関係性じゃないですか。その意味でも、すごくリスナーと距離感が近いと感じるし、それがすごく魅力的なんですよね。

VIGORMAN

VIGORMAN 俺らもずっとそうありたいと思っていて。庶民的な存在というか、近所のラーメン屋みたいなユニットでありたい。

GeG いい雰囲気感を出したいというか。

WILYWNKA ちょっとクールダウンした感じがいい。先生の話も聞かれへん、勉強も苦手、アルバイトも上司の命令を聞かれへんから音楽を始めたのに、そこで音楽で注目されたからって、威張ったってしょうがないし、逆に真面目になってもしょうがない。もっとナチュラルな存在でありたいんですよね。それは変態紳士クラブが「友達」だから醸し出せる部分でもあると思ってて。

VIGORMAN 喧嘩をするときももちろんあるけど、寝て起きたらもうおしまい。聴いてる人たちも俺たちが仲よくやってるのを楽しんでくれてると思うし、そういう関係性を作品に反映しないのはもったいないなっていうのはありますね。

木村 一緒にお住まいなんですよね。

GeG 同じマンションの別の部屋に住んでますね。

VIGORMAN すぐ集合できる距離で。東京に来るときは一軒家を借りて全員で泊まってます。

WILYWNKA そういう楽しさをお裾分けしたいんですよね。

VIGORMAN 「グッドバイブス」を蒔けたらなって。

木村 いい表現だなあ。

WILYWNKA 「バッドバイブス」ってめっちゃ配られがちじゃないですか。SNSもそうですけど、今はもう地球上のどこでも。だけど、そういう感情とあえてつながる必要はないよなって。

GeG それは自分たちとしても出さんでいいし。

WILYWNKA それよりも、ハグしたら温かいで、落ち着くで、ってことを伝えたいんですよね。

木村 ……やば。めっちゃ心にぶっ刺さっちゃってます。

VIGORMAN さらに今はコロナもあって、人と人との距離感が物理的も離されてると思うんですよね。それは仕方ないことだけど、それを「普通」にしたらアカンなって。

木村 それこそヒップホップとかレゲエにおいては、握手する、ハグするみたいなボディコンタクトは日常だったはずなのに。

VIGORMAN でもビクッとなりますよね、今は。

木村 もちろん状況的にノーガードでハグしたり握手したりっていうのはよくないと思うんですね。でもそういう気持ちは忘れないほうがいいですよね。

「変態」という言葉の意味

──そして1stアルバムとなる「ZURUMUKE」の感想も伺えればと。

木村 紳士寄りの変態アルバムって感じでした(笑)。

VIGORMAN 最高です(笑)。変態ってめっちゃ褒め言葉じゃないですか。「この曲、変態やなー」とか「超変態なビートやん!」って僕らはよく使うし。だから世間的に使われる変態の意味を変えられたらなって。

木村 そもそも変態紳士クラブっていうユニット名が深いですよね。確かに世間的には変態って言うとちょっとエッチなことをイメージしますけど、ある形態から次の形態に移ることも「変態」っていうんですよね。

──芋虫が蛹になって、蝶に変化することなどを変態といいますね。

木村 だから、変態って「進化」とか「独特さ」っていう意味でもあると思うし、それを変態紳士クラブには感じるんですよね。

VIGORMAN でも、いまだにコンビニではライブの告知を貼ってもらえないですからね。

木村 それは「変態」っていう言葉で?

GeG おそらくそうやと思いますね。

──大阪城ホールレベルだったら、普通はチケット発売の告知は張り出されますからね。

WILYWNKA

WILYWNKA そうなんですよ。だけどコンビニにエロ本は置いてるっていう(笑)。

VIGORMAN 今度はエロ本コーナーに貼ってもらおう(笑)。

WILYWNKA そこはメンバーの宮川ありさに頼まんと。

木村 え、ほかにもメンバーがいるんですか?

WILYWNKA 「従順な妻を演じてきましたけどもう我慢できません。『変態紳士クラブ』に入会した妻」っていうAVがあって……。

GeG その女優さんです(笑)。

木村 ハッハッハ!

VIGORMAN 俺ら、最初は「変態紳士倶楽部」って全部漢字のユニット名だったんですけど、検索したら同名のAVメーカーがあるってわかって、それで「クラブ」にしたんです。それも追い付かれてしまった(笑)。

木村 皆さんって、略称はどうやって呼ばれるんですか。

VIGORMAN 基本「変態」ですね。だから「変態のライブ行ってくる」みたいな。親御さんが聞いたら完全に止めるやつ(笑)。

木村 大阪城で変態のライブ……。

WILYWNKA 「何が行われんねん! しかもズルムケって何や!」って(笑)。

木村 ハッハッハ!最高ですね。でも「ZURUMUKE」は曲の流れを通して1つのストーリーになっていくような部分を感じて、すごくドラマチックだったし、アルバムとして意味のある作品だと感じました。次のステージに変態するために、ズルムケていってるなって。今後も本当に楽しみになりましたね。

WILYWNKA ありがとうございます。

──例えば変態紳士クラブfeat. 木村昴などは考えられますか?

VIGORMAN 面白そうですね! ぜひやりたいです。

木村 うわー。夢ですね。でもやりたいやりたいって言うと恥ずかしい感じも……。

WILYWNKA アハハ。僕らもやりたいですよ!

木村 だから機会があれば……人生懸けてやります!(笑)

ライブ情報

変態紳士舞踏会 in 大阪城ホール(※振替公演)

2021年8月5日(木)大阪府 大阪城ホール

変態紳士クラブと木村昴。